第2回原子炉主任技術者筆記試験問題

原子炉理論

第1−1.次の事項について簡単に説明せよ。
(a)即発中性子寿命 (prompt neutron lifetime)
(b)減速密度    (slowing down density)
(c)輸送平均自由行程(transport mean free path)
(d)実効共鳴積分  (effective resonance integral)
(e)年齢理論    (age theory)

第1−2.リチウム−7(Li7)と弗素(F)とについて、次のデータが知られている。

(a)衝突当りの中性子エネルギーの対数の減少
(average logarithmic energy decrement)ξは、近似的に2/(A+1)で与えられるものとして、Li7F(弗化リチウム)の平均のξを求めよ。
(b)水素のξは1.00であり、中性子が2MeVから熱中性子に減速されるのに平均18.2回の衝突が必要であるという。同じエネルギー範囲を減速するのに減速材としてLi7F を用いると、平均何回の衝突が必要であるか。
(e)Li7Fの減速比の近似値を求めよ。

第1−3.十分厚い反射体で両側を取りかこまれた無限の長さを持つ平板状均質原子炉の一群理論による臨界方程式を導け。

第1−4.(a)熱出力1wattの原子炉の炉心の中では、毎秒約3.1×1010個の核分裂が起っていることを示せ。ただし、電子の電荷は、1.6×10-19クーロンとする。
(b)巨視的分裂断面横Σfが0.06cm-1である炉心部の出力密度が30kW/lであれば、その原子炉炉心部内の平均熱中性子束の値はどれだけか。
第1−5.(a) 中心部に半径αの完全黒体の吸収体の球を有する半径Rの裸の球形原子炉の幾何学的バックリングは、であることを示し、炉内中性子束分布の概要を図示せよ。
(b) また、中心部に吸収体のない場合との反応度の差を示せ。
 ただし、計算は一群理論によるものとし、R≫αとしてよい。また、α及びRの球の表面における外挿距離も無視してよい。

原子炉の設計

第2−1.原子炉の冷却材としてそれぞれ軽水、重 水、ナトリウム及び気体を使う場合の利害得失について簡単に述べよ。

第2−2.図は、加圧水型原子炉の1つの冷却管に収められた長さlの燃料棒のモデルである。平均入口温度θ0 の冷却水が燃料棒下端(z=0)から入り、上端(z=l)から平均出口温度 θl となって出る。次の条件の下で、冷却水温度θ(断面平均)をz(図示)の函数として求めよ。
 ただし、
(1)燃料棒の熱中性子束は、Sin(πz/l)に比例する。
(2)熱は、燃料棒内ではz方向に移動しない。
(3)冷却管壁を通して熱は出入しない。

第2−3.原子炉を設計する場合、コールドクリーン(cold clean)の状態で反応度に余裕をとっておくが、この超過反応度(exess reactivity)は、高中性子束の研究炉を設計する場合には、どのような事柄に対応させて配分されるか、簡単に述べよ。

第2−4.ある型の原子炉の開発において、次の項目の果す役割を簡単に述べよ。
 a)exponential experiment
 b)critical assembly
 c)zero power reactor
 d)engineering mock up cxperiment
 e)demonstration power reactor
 f)prototype power reactor

第2−5.原子炉の反応度の温度係数を負にする原因と正にする原因とを箇条書にして列挙せよ。
 また、各箇条について、それぞれ1つずつ原子炉の例をあげて簡単にその理由を説明せよ。

原子炉の運転制御

第3−1.次の事項について説明せよ。
 a)logarithmic amplifier
 b)inhour
 c)set back(reverse)
 d)xenon spatial oscillation

第3−2.原子炉の冷却水の出口温度が45℃のとき、制御棒の位置の読みが66cmで臨界になった。次に出力を上げて冷却水の出口温度が50℃になったとき、制御棒の位置の読みが85cmで臨界になった。冷却水の入口温度を一定としてこの原子炉の温度係数を求めよ。
ただし、制御棒のきき方は、3.1×10-5δk/cmとし、反応度は、原子炉の平均温度できまるものとする。

第3−3.起動時制御棒引抜事故の簡単な目安を得るための次式を導け。ただし、遅発中性子の影響は無視するものとする。
(Newsonの式)
 ただし、T:スクラム時の瞬間的炉周期
      l:中性子平均寿命
     γ:最大反応度増加率
     φ2:スクラム暗中性子束
     φ1:初期中性子束(定常値)
 また、熱出力10MWの原子炉の起動時に、誤って制御棒を最大引抜速度で引き抜き、高出力スクラムが110%で働いたときの原子炉の周期は何ほどかを計算せよ。
   ただし、起動時の出力1.1×10-5watt
       中性子平均寿命3×10-4sec
      最大引抜速度の反応度増加率0.1%/sec
        loge10=2.303

第3−4.原子炉の制御棒の反応度を測定するため、炉を臨界にして、このときの中性子束密度Nを測定し、次に制御棒を挿入した後、中性子束密度の減衰曲線(decay curve)をとった。この曲線を t=0(制御棒挿入時)に延長したときの中性子束塔度をN0とすれば、この場合制御棒の反応度は、
となることを示せ。
 ただし、β:遅発中性子の割合

第3−5.次のうち、何れかを選んで解答せよ。
(1)PWR型原子力プラントの対照的な制御方式である「冷却材平均温度一定方式」と「蒸気圧カ一定方式」とについて、それぞれ簡単に説明し、得失を比較せよ。
(2)BWR型原子力プラントにおいて、制御上単一サイクルと二重サイクルとの相違を述べよ。

原子炉燃料及び原子炉材料

第4−1.酸化ウラン系燃料体の特徴と性能をあげ、かつ、その性能を更に改善するためには、如何なる方法が考えられるかを説明せよ。

第4−2.燃料要素の製造工程及び完成品に対し検査を行う場合、どのような方式及び設備を必要とするか、燃料要素の一例をあげて説明せよ。

第4−3.熱中性子原子炉構造材料としての18−8ステンレス銅とジルコニウム合金とを比較し、その長短を論ぜよ。ただし、純ジルコニウム、各種ジルコニウム合金などの差を問題にするほど、細かい議論である必要はない。

第4−4.非分裂性金属材料の中性子照射による放射線損傷は、中性子のエネルギーによってどのように異なるか。また、鉄鋼材料の放射線損傷は、中性子照射量(積分中性子束密度)によってどう変るかを述べよ。

第4−5.硫酸ウラニル水溶液を燃料とする均質原子炉を研究しようとする場合、化学の分野での問題点を列挙せよ。

第4−6.使用済ウラン燃料の再処理方式を3種類あげて、その各々の特性を比較検討せよ。

放射線測定及び放射線障害の防止

第5−1.現場における原子炉運転管理責任者が何らかの原因により、次の異常を知ったとき、放射線障害防止上とらねばならぬ措置について述べよ。
(1)炉室の排気ダクト中の汚染されたじんあいの濃度が異常に増大したとき。
(2)炉室を含む放射線管理区域の出入口に設けた手足汚染検出器(handfoot monitor)により高度に汚染された者が発見されたとき。

第5−2.金箔の放射化によって原子炉内の熱中性子束が測定できる。その方法について述べよ。

第5−3.原子炉制御および放射線障害防止の目的で用いられる諸種の中性子束測定器について、それぞれの特徴をあげて説明せよ。

第5−4.外部放射線に対して問題となる臓器(critical organ)といわれるものについて、それらが放射線の被ばくによってどういう障害をもたらすかも例をあげて簡単に説明せよ。

第5−5.次の事項につき解説せよ。
(1)レム(rem)
(2)放射線による遅発性障害(delayed effect)
(3)空気中および水中の放射性核種の最大許容濃度
(4)遺伝有意線量(genetically significant dose)

原子炉に関する法令

 「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」及びその関係法令につき解答せよ。

第6−1.原子炉設置者A株式会社は、原子炉施設の工事に着手した後その工事完了前に、原子炉設置者でないB株式会社との間に「その原子炉施設の構造及び設備の一部変更を加えるとともにその変更を加えた原子炉施設を工事完了後直ちにB株式会社に譲渡すること。」を内容とする契約を締結した。この場合において、B株式会社が譲りけた原子炉の運転、を開始するまでに、A株式会社及びB株式会社は、それぞれ如何なる手続をとらなければならないか箇条書にして列挙せよ。

第6−2.原子炉設置者が保安規定に定めるべき事項を10以上列挙せよ。

第6−3.次の文章中、正しいものは○印を、誤っているものには×印をつけ、誤っている場合には、その誤っている理由を簡単に説明せよ。

(1)原子炉設置者は、総理府令で定めるところにより、原子炉施設の工事について内閣総理大臣の検査を受けなければならない。ただし、工事に着手する前に原子炉施設に関する設計及び工事の方法について内閣総理大臣の認可を受けたときは、この限りでない。
(2)内閣総理大臣は、原子炉設置者が熱出力1,000キロワットの原子炉について設置の許可を受けた後、正当な理由がないのに5年以内に運転を開始しなかったときは、その原子炉の設置許可を取り消すことができる。
(3)内閣総理大臣は、原子炉施設の保全若しくは原子炉の運転又は核燃料物質によって汚染された物の運搬、貯蔵若しくは廃棄に関する措置が総理府令に違反していると認めるときは、当該原子炉に関る設置の許可を取り消すことができる。
(4)原子炉設置の許可申請諸事項の1つである「損害賠償措置」とは、原子炉施設の事故に基く災害によって、従業者又は第三者に損害を与えた場合におけるその損害を賠償するための措置である。
(5)原子炉設置者は、その所持する濃縮ウランを許可に係る原子炉と同一型式の臨界実験装置に併用しようとする場合には、その濃縮ウランの使用について、あらためて内閣総理大臣の許可を受けなければならない。

第6−4.次の文章中の___のうちに入る適当な語句を番号とともに記せ。
(1)「原子炉とは、核燃料物質を燃料として使用する装置であって、原子核分裂の連鎖反応を  1  しながら  2  させる装置をいう。
(2)原子炉の性能検査は、原子炉が  3  に達するとき、熱出力が  4  に達するときその他内閣総理大臣が適当と認めるときに行う。
(3)原子炉設置者は、毎  5  1回以上、従業者に原子炉施設について巡視させ、(イ)  6  (ロ)  7  (ハ)電源、給排水及び排気施設について点検を行わせなければならない。
(4)原子炉設置者は、その所持する核燃料物質について盗取、所在不明その他の事故が生じたときは、遅滞なく、その旨を  8  又は  9  に届け出なければならない。
(5)原子炉設置者は、炉室、制御室等原子炉の保全のために特に  10  を必要とする場所並びに使用済燃料の貯蔵施設等、放射線量率、放射性物質濃度又は  11  が著しく高い場所及びその周辺の場所を  12  とし、  13  を設ける等の方法によって明らかに他の場所と区別し、必要に応じて  14  の制限、  15  の制限、かぎの管理等の措置を講じなければならない。
(6) 固体状の放射性廃棄物を海洋に投棄する場合には、その廃棄物を封入した容器の比重は、  16  以上であり、投棄する箇所の海洋の深さは  17  メートル以上であることを要する。

第6−5.次の文章中、正しいものを選びその番号を記せ。
(1)トリウム及びその化合物にあっては、トリウムの量が〔(i)100(ii)300(iii)900〕グラム以下であるときは、内閣総理大臣の許可を受けないでこれを使用することができる。
(2)原子炉設置者は、放射性廃棄物の排水口並びに監視域における放射性物質濃度を〔(i)毎週運転中1回(ii)毎日運転中1回(iii)運転中1時間ごとに〕記録し、これを10年間保存しておかなければならない。
(3)原子炉設置者は、保安規定を定め、原子炉の〔(ii)設置の許可を受けた日から1年以内(ii)運転開始後30日以内 (iii)運転開始前〕に内閣総理大臣〔(iv)の許可を受け(v)の認可を受け(vi)に届出〕なければならない。
(4)原子炉設置者は、原子炉施設においては、常時立ち入る者は1週間の被ばく放射線量が〔(i)100(ii)200(iii)300〕ミリレム(手、前ばく、足又は関節部のみについては〔(iv)1,000(v)1,500(vi)2,000〕ミリレム)をこえないようにしなければならない。