第2回放射線化学懇談会


〔日時〕昭和34年12月4日(金) 14.00~17.00

〔配布資料〕
(1)放射線化学の開発促進に関する調査
(2)線量測定分科会調査報告
(3)化学用原子炉分科会報告
(4) The United States lndustrial Radiation Program
(5) Radiation Energy for Process Industries.
(6) High Voltage Research Program.

〔議事概要〕
1.日本原子力産業会議放射線化学部会調査結果報告

(1)放射線化学の開発促進に関する調査結果概要が次のごとく説明された。

 「日本原子力産業会議放射線化学部会開発促進分科会では、昨年末から各大学、研究機関および民間会社にアンケートを出し、研究の現状、研究体制および政府に対する要望等を調査し、また放射線化学の研究に対する補助金交付実績の推移および関係技術者の養成に関する調査を行ない、放射線化学の研究または工業化のための問題を、放射線化学の開発促進のための希望事項としてまとめると次のごとくである。

(イ) 大学院における放射線化学単独講座の増設および講座に対する十分な研究設備、研究費、研究員の裏付け、(ロ)研究機関の研究設備の充実、研究費の増額および研究者の増員、(ハ)研究補助金等政府助成の強化, (ニ)パイロットプラントの設置,(ホ)関西ないし地方における原子炉および開放照射センターの設置、 (ヘ)放射線化学用線源研究の強化および線源コストの低下対策、 (ト)専門技術者の計画的教育養成、健康管理対策および放射線障害補償制度の確立。」

 以上の説明に対して、大学における関係講座の増設計画、外国特許攻勢対策等について討議された。

(2)線量測定分科会調査報告が、概要次のごとく報告された。

 「各種の測定方法につきそれぞれ分担して比較検討した。線量測定の問題は研究分野としては地味ではあるが、放射線利用工業の発達のためには不可欠である。今のところ測定のためにははん雑な方法がとられているが、大線量の迅速簡便なオートメーション化の方向が必要である。現在の研究は単一線種のものが主であるが、今後の核分裂生成物、化学用原子炉での照射を考えると、各種の放射線の混合を対象とする必要がある。放射線作用の初期過程の分析とかG値の測定のためにはさらに測定の精度をあげる必要がある。」

 以上の説明に対して、106レントゲン以上の大線量放射線の測定方法の必要性等について討議された。

(3)次いで化学用原子炉分科会調査報告が次のごとくなされた。

 「化学用原子炉分科会においては昭和34年1月以来、第2回ジュネーブ会議の報告を中心として海外における化学用原子炉研究の実情を調査して、第1次の考え方をまとめた。化学用原子炉の考え方としてその利用の仕方としては、放射線利用と熱利用とにわけられる。放射線利用炉の開発研究にあたって考慮すべき点は(イ)安価かつ大容量の線源としての価値、(ロ)中性子源としての価値(ハ)核分裂片の運動エネルギーの直接利用等である。現在の段階においては特定のプロセスについて経済性をうんぬんすべきではなく、国家的中心機関において研究の方向、手法を討議し、設置すべき炉の具備すべき設備を検討し、系統的な基礎研究に着手すべきである。

2.日本原子力産業会議からの放射線化学の振興開発に関する要望書の説明が、正井委員からなされた。

 要望事項は①全国的な中心機構として放射線化学研究機関を設置し、あわせて各地区に実情に即した放射線化学に関する機関ないしは設備をもうけること、②早期に専門技術者の養成の措置を講ずること③原子力委員会に放射線化学の振興開発に関する立案審議を行なう機関を設けることの3点である。

3.次いでアメリカ合衆国原子力委員会アイソトープ開発部長の報告によるAECの放射線化学に関する長期研究計画の概略説明の後、小委員会を線源に関するものと、研究促進に関するものとの二つ設置することを決めて散会した。