参与会

第10回

〔日 時〕昭和34年10月29日(木) 14.00〜16.00

〔場 所〕東京都千代田区丸の内 東京会館

〔出席者〕稲生、井上、大来、岡野、倉田(代駒井)、久留島、瀬藤、高橋,松根、三島、山県、脇村各参与
石川、有沢各委員
横山政務次官、篠原事務次官、佐々木局長、法貴次長、島村次長、亘理課長、武安監理官ほか担当官

〔配布資料〕

1.原子力損害陪償保障法案
2.学校法人五島育英会の原子炉の設置について(答申)
3.放射線化学懇談会の設置について
4-1.核燃料物質の加工請負に関する特別措置に関する法律案(仮称)
4-2.核燃料物質の加工請負に関する特別措置に関する法律案(仮称)提案理由の要旨
5.原子力委員会各専門部会の審議状況(34.9.18〜34.10.29)


1.原子力災害補償制度について

島村次長が資料1を説明。この案によって原子力災害補償専門部会で審議を行なっているが、 11月末までに原子力委員会への答申をもらい法案をまとめて通常国会に提出する見込みであると述べた。

 岡野参与:水害等の場合には被害金額の全額でなく一部が補償されるのみである。原子力の場合には被額の全額が一応補償の対象となるのか。

 有沢委員:補償金額の大きさは500億円で打ち切るか、際限を設けるかという点はきまっていない。しかし、その点を別にすれば、原子力損害賠償処理委員会が査定した全額が補償の対象となる。査定が不服なら裁判所に問題が持ち込まれることになろう。

 松根参与:研究炉の賠償責任範囲はどうか。

 島村次長:第6条に政令で定める事業については5億円としているのは研究炉を意味している。第48条に示すようにこの法案は政府の研究炉にも適用することを考えている。現在原研の炉は保険をつけていないが、この法律ができれば保険をつけさせることとなる。この法律が実施されない前は規制法の改正の段階で考えるわけで、それによれば付保しなくてもよいことになる。事実上は予算をつけているので保険をつけるつもりである。

 松根参与:原子力船はどう取り扱うか。

 島村次長:この法案はともかくとして、原子力船を含むかどうかは今後慎重に検討していきたい。

 山県参与:原子力船を別にするのならばそのことをはっきり書いてほしい。

 船は国内と国外に影響があるのでIAEAの方針と食い違わないように考える必要がある。

 松根参与:政府が補償することとなった場合には、事業者は政府に対して補償料を納付しなければならないと書いてある。補償料はノミナルな額だというが、これはどういう考え方によるのか。

 島村次長:事故が起こったあとで政府の負担した金額について補償料をとる。これは負担した額のうちどのくらいを何年間でとるかはそれぞれの場合に考えることとしている。事故を起こした事業者からばかりでなく多くの事業者を対象として手数料のような意味でとることを考えている。

 松板参与: 500億円という限度内で政府が補償することになった場合、事業者の支払うべき金額が500億円の限度内で実際にいくらであるかは賠償処理委員会がきめるのか。

 島村次長:賠償処理委員会では全体の賠償額だけをきめる。賠償額が50億円という限度以上になったときは、事業者は50億円を支払い、それ以上を政府が支払うことになる。

 瀬藤参与:賠償処理委員会は事故のあったときだけに設けるのか。

 島村次長:平常から置くかどうか議論のあるところである。当面仕事のないうちに置くと国費を余計に使うことになるので、事故時にのみ置こうと考えている。

 山県参与:国家賠償法との関係はどうか。

 島村次長:国家賠償法にかわるものという考えである。この原子力損害賠償保障法をまず適用し、これでカバーできないもの、たとえば内乱のようなものについては国家賠償法を適用する。

 瀬藤参与:あまり大きくない地震の場合にはこちらを適用するのか。

 島村次長:今までになかったような大きな地震であれば国家賠償法で考える。関東大震災程度の地震で被害があったときはこの原子力損害賠償保障法を適用する。

 高橋参与:事業に雇われている者のこうむった災害はどうか。

 島村次長:従業員は労災法でカバーし、これには入らない。

 有沢委員:原子力関係の事業に携わる労働者に適用する労災法を労働省で考えている。

 松根参与:健康保険は関係ないか。

 有沢委員:放射線でだんだんやられたことがはっきりすれば、それに対し補償することになっている。

2.日本原子力研究所の人事について

 原研の副理事長として森田乕男氏を発令、茅、岡野、菅の3氏を顧問に任命した。また、岡野監事と菅沼浬事の後任は未定である旨を佐々木局長から報告した。

3.五島育英会原子炉の設置について

 五島育英会の原子炉について原子力委員会で審議した結果、設置許可の基準に適合しているという答申を総理大臣に提出した旨、資料2により法貴次長から説明した。

4.放射線化学懇談会の設置について

 資料3により法貴次長から説明した。

5.核燃料物質の加工請負に関する特別措置に関する法律案について

 資料4-1および4-2に基づいて、この法律案の内容、法律案の提出理由および特に原研のC P-5型原子炉の燃料加工に関連してこの法律案の提出が急がれる理由を島村次長から説明した。

 佐々木局長:この問題に関連し井上政策課長を米国に派遣した。 CP-5の燃料を加工するM&Cは目下海軍からの注文でフル操業をしており、またM&Cから下請けに出したアルミ材が不合格になったので、 CP-5の燃料は来年2月にならねば渡せないといっている。原子炉のほうは今年中には完成するので燃料のほうが間に合わない形勢である。来年1月中には引き渡してくれるようになお交渉を重ねている。

 瀬藤参与: CP-5の組立にも問題があったと新聞に出て心配していたが。

 稲生参与:原研のCP-5の組立はわれわれがAMFの下請けとしてやっているが、その組立が全然うまくいっていないということが突然一部の新聞のみに出たので急行して調査した。

 同原子炉の組立は完了し、目下functional testをやっている。これは通水試験やポンプの試験である。その結果わかった最大の問題は水の冷却装置の能力が少したりないことである。これはAMFの設計どおりに造ったが改善が必要となり改善にとりかかっている。軽水やガスを通して試験したところ漏れがあったので溶接やすり合わせが必要となった。AMFからきた重水ポンプも packingのもれや過熱が生じたので分解して修理した。これらの故障を直して11月末にはfunctional test を終る予定である。

 新聞にあるようにAMFの設計が悪くこのままではCP-5が使いものにならないという事実はない。また三菱系各社の連携がうまくいかず責任のなすりあいをしたからうまくできなかったというのも事実ではない。組立を完了してもfunctional testで故障箇所が発見されるのは当然考えられるところである。

 倉田参与(代理駒井):「原因のいかんを問わないすべての責任を免がれさせ」と法律案にあるが、製作上の欠陥とわかっても免責するのか。

 島村次官:原子炉に入れたあとはだめである。CP-5燃料の加工については、検査後でも炉に入れる前に欠陥があればとりかえるという商業上の契約が結ばれている。

6.原子力委員会各専門部会の審議状況について

  資料5について法貴次長が説明した。