参与会

第7回

〔日 時〕 昭和34年7月23日(木) 14.00〜17.00

〔場 所〕 東京都千代田区丸の内 東京会館

〔出席者〕稲生、大屋、倉田(代 柴田)、駒形、瀬藤、高橋、田中、中泉、伏見、細田、三島、安川、山県各参与
中曽根委員長、石川、菊池各委員
政務次官、事務次官、局長、法貴次長、島村次長、井上(亮)、太田、井上(啓)、藤波、中島、鈴木、亘理各課長

〔議 題〕
1.新原子力委員長との懇談
2.その他

〔配布資料〕
1.原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とカナダ政府との間の協定
2.学校法人立教学院の原子炉の設置について(答申)
3.原子力委員会参与および専門委員の変更について
4.原子力災害補償専門部会専門委員の追加
5.原子力委員会専門部会の審議状況
6.コールダーホール改良型原子力発電所の審査について


1.新原子力委員長との懇談

 中曽根委員長、横山政務次官から就任の挨拶があった。

 石川委員:産業会議から派遣する原子力船の調査団に対する海運界からの参加の状況はどうか。

 大屋参与:海運会社は金を持っていない。むしろ、造船業界では将来海外からの原子力船を受注しようと熱心である。海運会社からも人を出すように船主協会等に交渉している。

 山県参与:1名の参加が内定している。もう1名をさらに考えている。

 中泉参与:私はABCCに勤めている。広島、長崎での被爆者の研究は将来の平和利用に際して重要である。国としてもっとカを入れてほしい。
 現状についていえば、広島と長崎のABCCはほとんど米国の予算で米国の学術会議が運営しており、政治的意図のない純粋な学問を行っている。年間予算は約7億円、日本政府は厚生省予防衛生研究所の支所をおき公務員が働いているが、支所費として年800万円を出しているだけで事業費は全部米国からでている。
 仕事は被爆者の調査で治療の研究はやらない。被爆者の寿命の縮み方を研究しており、被爆者が死ぬまで数10年間続けようということである。

 委員長:データは日本に渡すか。

 中泉参与:もちろん渡す。世界中でも他では得られないデータが得られる研究であるら、力を入れてほしい。

 委員長:人数は。

 中泉参与: 850人、うち米人が50人、日本人が800人である。

 佐々木局長:厚生省から来年の原子力予算に入れてきた。これは中泉参与に相談のあったものか。

 中泉参与:昨年から厚生省に話している。細かい打合せはしていない。

 瀬藤参与:調べられるほうの苦情として、調べるばかりで何も治療してくれないというが。

 中泉参与:日本政府は被爆者医療法によって年に1億7千万円使って治療している。 ABCCは米国の施設であって、被爆者医療法による日本政府の治療や地元の民間医の治療を横どりしないという趣旨で積極的に治療をしていない。

 委員長:患者に金を払っているか。

 中泉参与:金を出すのがいいかどうか問題である。現在は出していない。送り迎えは自動車を出す。必要があれば入院させ入院費はとらない。調べられるのをいやがる人もあるし喜んで来る人もある。なお、被爆者医療法によって使える予算1億7千万円は33年度では使い切れなかった。

 伏見参与:原研のストについて委員長の御意見を伺いたい。

 委員長:建設をspeed upしてきたが、研究者が建設に煩わされたり事務系統の不備などがあり、 3年経ってみると検討が必要となってきた。

 伏見参与:事業は金を出せばある程度進行するが、研究は地道な努力の積重ねが必要である。

 委員長:原研も早く建設を終り、炉ばかりでなく総合的な研究を完成させたい。

 大屋参与:一応建設を打ち切って研究する行き方もあるし、 ハーウェルのようにどんどん研究施設を造っていく行き方もある。

 瀬藤参与:原研の予算には予備費がとってあるが融通がきかない。日進月歩の研究をするのだから研究の進展に応じて金が出せるようにしてほしい。

 駒形参与:使えるはずだが実際には簡単にいかない。もっと融通性をもたせたい。

 安川参与:今日の原研としては設備費はあまりふやさず運営に必要な経費に予算の重点を置くべきであろう。

 駒形参与:継続の建設工事はやらねばならないが35年度予算としては人をふやすことが一番必要と思う。

 佐々木局長:人をふやすにも新卒ばかりで中堅がとれないおそれがある。対大蔵省の説明として人をふやすことがどれだけプラスになるかが一番むずかしい。中堅層は需要が多く、給料をあげれば集められるとは限らない。

 石川委員:原研への出資は政府と民間から出されているが、これがいっしょに支出されてきた。民間に特に役だつ施設に民間の出資金を使うようにすると、民間としても出しやすいが、これについて各参与の希望を聞きたい。

 島村次長:以前から問題になっていることだが、昨年も解決できないうちに予算の時期になった。 CP−5のような施設では金額が不足するし、食堂などでも困る。給与にプラスするというなら永続性のあることが条件になるし、主要な施設でなくてよいという同意が得られるならそれでもよい。

 瀬藤参与:予算としてついた金が原研に自由に使えるなら問題はない。

 大屋参与:原研を特殊法人にしたのだから、楽な経営のできる方法はないものだろうか。考えてほしい。

 委員長:原研の運営の融通性をもっと拡大するには大蔵省との関係で法規の改正が必要か。

 佐々木局長:給与や旅費支給の基準は、承認を要することとなっているが予算がきまると自主的にやれる範囲は大きい。

 大屋参与:国鉄、電電公社は収入がある点で原研とは同列に考えられないとしても、ずっと楽な運営を行っている。原研の運営ももっと考える余地があろう。

 島村次長:佐々木局長の発言を訂正すると、旅費については以前と違いあまりうるさくはなっていない。補助金が出ていたころはうるさかったが、現在では補助金をやめ出資金にしたので楽になった。ただし出資金なのでそのマイナスは赤字になる。実害はないので当分このままでやっていくつもりである。給与と交際費はやかましいが旅費には現在問題はない。

 細田参与:国鉄、電電公社でも給与の総額と交際費はやかましい。旅費は問題ない。

 佐々木局長:原研の労組は民間の給与べースを前提としているが大蔵省や原子力局は公務員のベースから何割かupという考えをしている。この考え方の相違があるかぎり給与については永久に問題が残る。日本の研究機関として原研の給与は相応なものと思う。

 大屋参与:労組もそういうことは知っている。給与だけの問題でなく、白由に研究をやらせてほしいという主張が表面にでていると思う。どこが悪いか検討してほしい。

 稲生参与:アメリカの研究機関の給与は産業界と違いはない。

 菊池委員:米国のような先進国では、産業界の技術的な進歩は自国の基礎科学に頼るよりほかにない。産業界と基礎科学とが密接につながっている。日本の場合には進んだ技術が外国にあるので、原研と産業界のつながりは外国におけるのとまるで違ってくる。ここから困難が生じ、その解決には長い時間と努力が必要である。給与面や組織でなく日本の後進性が根本的な問題である。

 駒形参与:給与ばかりの問題ではないと思うが、給与体系はすでに問題となっており、給与体系をはっきりさせることは必要と思う。

 佐々木局長:稲生参与に米国の視察談をお伺いしたい。

 稲生参与:米国の原子炉メーカーはいずれも自分の原子炉が一番よいと主張している。原子力産業会議やFederal Power Commission等で意見を聞いてみると現在実用できるのはPWR、 BWR、 OMRで、他のものは将来よくなる可能性があるといっている。現在実用になるものは、 20〜30万kWで8ミル/kWhの発電原価で、これは米国では高すぎるが外国では商業採算にのるという。 Goodmanの説では、戦争になると濃縮ウランが入手できなくなるので天然ウランを使う炉を考えるべきだといっている。

 一般に米国民は放射能をあまり恐れていないようである。

 米国政府は相当の金を原子力の開発に使っている。AECは多額の金を発電炉の建設に支出しており、建設会社はこの金額に自己の負担をプラスして建設し、発電会社は引き合わない値段で電力を販売している。このように政府、建設会社、電力会社の3者が犠牲となって開発に力を尽している。

 研究面では、産業界と学校等の研究機関がよく協力して行っている。

 山県参与:原子力船の開発のためには遮蔽の問題をどうしても解決せねばならない。組み立てた遮蔽の実験をするにはスイミングプール炉が必要。必ずしも原研にとはいわないが、この炉の設置を考えてほしい。

 委員長:最初に造る原子力船は何が適当か。

 山県参与: 2万馬力、4万トンのタンカーと経費を少なくする意味で小型船とを考えているが、そのうちから政府の考えできめてもらえばよい。将来2万馬力の原子力船が使われることが考えられるので、小型船にも限度があり、 8,000馬力、 4,100トンのものを一応考えている。

 大屋参与: 2万トン程度の規模の原子力船を造ると成功しなかったときに積荷がないことが考えられる。発電所と違って全然役にたたなくなるから、最初は小型の船を考えるほうがよい。

 田中参与:放射性同位元素の利用に政府はもっと力を入れてほしい。

 石川委員:研究は相当行われているようである。年数がまだ少ないので、成果が現われないものと思う。

 中泉参与:アメリカの国民に比較すると日本の国民は放射線の危害を気にするのは当然だが、少し気にしすぎると思う。今のうちにもとに戻しておかないとおもしろくない結果になると思われる。

 委員長:原子力委員会としては民間の団体の発言等と相まって匡正していきたい。

 伏見参与‥原子力局の障害防止法では300ミリレム/過というしばり方で、労働省の電離放射線障害防止規則では6ミリレム/時というしばり方をしている。この両者では大きな違いがありうるので、この間の連絡をよくつけてほしい。

 島村次長:放射線審議会にかけて専門家が規則の斉一化を図り、くいちがいのないものと認めたときに各省が規則を交付しうることとなっている。もしくい違いがあるなら、審議会の審議が不十分だったことになる。

2. 日加原子力協定について

 太田調査課長から資料1によって説明した。

 大屋参与:返送したPuを日本が査察できるのは結構だが実際にはカナダは沢山のPuを持っているのだからどの程度平和利用を追及できるか。

 太田課長:実際に査察した例は海外にもない。

 大屋参与:実際には形式的な権利になると思う。 IAEAから買った3トンの天然ウランについては日加協定によるか。

 太田課長:IAEAと日本との協定による。

3.立教大学原子炉について

 藤波規制課長から資料2によって説明した。

 藤波課長:立教大学が武山に建設するトリガ型の原子炉については、安全審査専門部会の審議の結果安全であるという結果が出た。原子力委員会では安全問題以外の問題をも考慮し、肯定的な結論を出し内閣総理大臣に答申したのが資料2になっている。これによって間もなく正式に許可されると思う。

 大屋参与:関西の大学研究用原子炉の設置見込みはどうか。

 伏見参与:最初阿武山の見込みがあったが、水源に関連してむずかしくなった。水泳プールのタンク型として安全審査専門部会の意見を昨年末にもらった。これこれの条件を備えた場所なら設置してもよいというものである。大阪府のあっせんで茨木市に交渉したが反対された。今年の1〜3月に大槻に交渉したが新聞に洩れるにつれ反対された。大阪府はこれまではおつきあい程度で協力してくれたにすぎないが、今日では大阪府の面目にかけても造るという意気ごみでやっているようである。

 大屋参与:損害補償の方法がはっきりしないのも一因ではないか。

 伏見参与:地元出身の政治家の反対がある。

4. 資料 3、 4、 5、 6について、佐々木局長から説明した。