原子力委員会専門部会の審議状況
原子力委員会には別項記載のように今回原子力関係科学者、技術者養成訓練専門部会ならびに再処理専門部会の二つの専門部会新設にともなって合計13の専門部会がおかれることとなった。これらの専門部会の審議状況についてはさきに本誌第3巻第12号8〜17ぺ−ジに紹介したが、これ以後の分をとりまとめて以下に掲載した。 原子炉安全審査専門部会 第7回(昭和33年12月9日(火)13.30〜17.00) 配布資料 議 事 1.東海大学原子炉設置について 東海大学原子炉設置について衆議院議員松前重義氏から政府に質問書が提出されたので、これとこれに対する政府の答弁書について事務局から説明が行われた。これに対して委員からの質問はなかった。なお、これについて石川原子力委員から本日は報告をしただけであって場合によっては、今後これについて部会に質問または検討を願うことが起るかも知れないとの説明があった。 2.関西研究用原子炉について 関西研究用原子炉について、配布資料にもとづいて事務局から要旨次のとおり説明があった。 関西研究用原子炉についてはさきの部会において第4小委員会の最終報告書が了承されたが、小委員会の報告を部会の結論として残しておいたほうがよいと思われるので本日の配布資料のような形式にして提出した。なお、本資料はその後の諸方面の意見により、さきの部会の小委員会の報告書を若干修正したものである。 これに対する検討要旨および経緯は以下のとおりである。 (1)第4小委員会の最終報告書に対して行った修正については了承された。 (2)資料2ページの「記の3」について、(イ)地すべり等のことについても言及したほうがよい。(ロ)地域という表現ではあまり広すぎる。(ハ)気象的災害として洪水だけを考えればよいのか。(ニ)洪水の定義(平常水位より高いときは洪水といい、必ずしもはんらんを意味しない)からも洪水は適当でない。以上のように意見が提出され、種々検討の結果本項2行目以下を次のように訂正した。地盤に対する安全性を期し得ない土地、浸水の恐れのある場所は (3)1頁11行目の「及び製作注文」は削除することとした。 (4)なお、これについては原子力委員会に正式に答申することに決定した。 3.JRR−2の概要とその安全対策について 日本原子力研究所JRR−2建設室長神原豊三氏から配布資料にもとづいて説明が行われた。この際行われたおもな質疑で確認されたことは次のとおりである。 (1)安全対策中における各種の事故は通常は起らないと思われるが、起った場合を仮定して解析したものである。 (2)連続モニターはダスト10−12μc/cc、ガスで10−6μc/cc、水で10−6μcの単位で測れる。なお水の場合に試料によれば10−8μc/ccの単位まで測れる。 (3)大気拡散による濃度は1週間平均で行った。 (4)Naはアルミニウムから出るので、止めた後でもresinで清浄にするようにしている。 なお、次のような意見があった。 大気拡散に使用されるSuttonの算式は、最近の文献によればこの式の妥当性は非常に怪しいのではないか、またこの式はまれに合うことがあるので使用されている程度ではないか、この式の使用には多くのデータを用意しておくことが必要である。 4.放射線の許容量について 配布資料について事務局から次のような説明が行われ、了承された。 この資料は原子炉安全基準部会において答申の段階まできたので、参考資料とLて配布したものである。これは今後放射線審議会にかけなければならないし、またその後法規の改正手続きも行われなくてはならないので、法令化による規則についてはかなりの日時を要するので、その間は当部会の審査に際しての基準として運用したらと思っている。 ついでこの内容につき江藤委員(原子炉安全基準部会委員でこれに関する小委員会委員)から説明があり種々の質疑応答があった。その際、3−2−4では事業所の日間廃棄量を限定しているが、河川についての日間廃棄量も必要ではないかとの意見があった。 なお、これについて今後疑問の点が出れば基準部会に連絡することとした。 重水専門部会 第3回(昭和33年12月19日(金)13.30〜16.00) 議 題 議事内容 最初に神田委員の欧米における重水製造研究の現況について報告があり、引き続き議事に入った。重水の製造方法としては海外の現状よりしても水素液化精留法と二重温度交換法(水素−水系)が最適であること。今後今までの研究成果を基としてこれらの方法のプロセスの決定や装置のデザインをぜひ実施する必要があり、そのためには基礎研究が絶対に必要である。したがって今後、精留棚段、充填物、触媒等に関する基礎研究を実施すべきである等の結論を得た。 核融合専門部会 第5回(昭和33年12月16日(火)13.30〜17.00) 議 題 議事内容 宮本専門委員からジュネーブ会議および欧米諸国における核融合反応の研究状況の報告があった後、第4回の部会に引き続き今後の研究の進め方につき審議検討した。その結果、(1)諸外国においてある程度成功の可能性が明らかにされた型式の実験装置(ステラレーター、ゼータ、ミラーマシン等)をすみやかに建設する。(2)以上の型式と異なった装置の研究開発も(1)と並行して行うべきである、との結論が得られ、事務局において答申案を作成することとなった。 原子炉安全基準専門部会 第5回(昭和33年11月27日(木)9.30〜12.30) 配布資料 議 事 1.第1小委員会報告について 第1小委員会主査青木専門委員から配布資料にもとづいて報告ならびに説明が行われ、了承された。 2.放射線の許容線量及び放射性物質の許容濃度についての答申案について 第1小委員会において作成した放射線の許容線量及び放射性物質の許容濃度についての答申案にもとづいて第1小委員会主査青木専門委員から、(1)第2次中間報告書との相違点、(2)ICRPとの相違点等について説明が行われた。なお、小委員会において「3−2−4の規定による日間廃棄量の制限は現在のところ支障はないが、今後早晩この規定は再検討することが必要となるのではないか」という問題点があった旨の補足説明があった。 これの検討にあたり、討論された要旨は次のとおりである。 (1)3−2−3において、廃棄物を海岸に近いところにすてるのと海岸から遠く離れた海中にすてるのとは規定が多少変ると思われるが、答申案では後者は考慮しなかった。また廃棄物を固体状にして海中にすてる場合のことは現在規制法に規定されており、これでは考えなかった。 (2)4−1における計画被ばく5レムはICRP(12.5レム)と違っているが、現在この数値の妥当性は明確でないので一応安全にとったのであって、この数値については、放射線審議会の決定に従う。 (3)4−2における18才未満の者に対する規定はICRPと違っているが、わが国の労働法では18才未満の者の就労が禁止されているためである。 (4)1−4−1の3行目「皮膚及び」を削除 以上のような検討の後答申案は了承され字句の訂正等は部会長に一任された。 3.第2小委員会中間報告について 第2小委員会主査福田専門委員から、最初に通産省に設置されている立地専門委員会の経過ならびに立地合同委員会(第2小委員会)の経過について説明が行われた。その要旨は次のとおりである。 「通産省に設置されている立地専門委員会においては、本年8月から実際の審議を始めた。現在までの審議条項は配布資料のように取りまとめた。なお第2小委員会としては11月7日および11月25日にそれぞれ開催した。これについては配布資料「立地合同委員会(第2小委員会)概要」に取りまとめてある。 なお、今後部会に対しては立地合同委員会で一応決定したものを報告することにしたい。 引き続いて配布資料「立地専門委員会第1次案および要検討事項等」にもとづき報告ならびに説明が行われ、これに対し各委員から次のような意見があった。 (1)事故時の場合の解析および線量については今後通産側と第1小委員会とが連絡をとって行うことが望ましい。 (2)立地専門委員会は発電炉を対象としているが立地合同委員会では実験用研究炉についても考慮してほしい。 以上のような討論がなされた結果、報告は部会において了承された。 4.検査基準について 検査基準について事務局から配布資料について説明が行われた。 これの審査は第3小委員会を設けて行うこととなり、小委員の選任は部会長に一任された。なお、閉会後小委員として次の各氏が部会長により指名された。 神原、向坊、大山(彰)、脇坂、佐藤 核燃料専門部会 第4回(昭和33年12月15日(月)13.30から) 議 題 配布資料 議事概要 小川部会長所用のため、三島委員が部会長を代行して議事が進められた。 1.英国型天然ウラン動力炉用燃料要素の検査 原研、公社および原電から資料(1)、(2)、(3)についてそれぞれ説明があり、おのおのについて検討が行われた。 〇加工歩どまりはわからない(武谷)、ただし鋳造および切削歩どまりは推定できる(中村) 結論として燃料要素の検査については、小委員会を設け、資料(1)、(2)、(3)をまとめあげ、必要があるものについてはさらに詳細な検討を加えて、原案を作成することとし、小委員会委員に次の専門委員が指名された。 高木、宗宮、小川、河田、川崎、今井(原電) 以上のほか、橋口委員から核燃料の検査について、原研において計画されている研究に含まれていない部分を民間企業に助成金を交付して、研究を進める等の措置をとるよう希望があり、本問題は原子力局において検討することとなった。 2.そ の 他 (1)金属ウラン分析法の確立 第3回核燃料専門部会において金属ウラン分析方式確立のための方策が今井委員から提供され、部会の了承を得たが、今回、資料(4)により、現在までの作業の進捗状況について公社から説明があった。 (2)国産1号炉燃料要素製造に関する原子力委員会の決定 33年11月24日の原子力委員会において決定された国産1号炉燃料要素の製造方針について資料(5)につき原子力局から説明があった。 (3)原研、公社、日立等の視察について 原研、日立における燃料加工の試験研究の進捗状況、公社の精錬工場等を2月中旬以降視察することとし、日程については、予算を勘案して原子力局において作成することとした。 核燃料経済専門部会 第5回(昭和33年12月18日(木)13.30〜17.00) 議 題 配布資料 議事内容 1.ウラン濃縮について 大山専門委員から資料1の説明を聞いた。 2.再処理コストおよび再処理工場の建設費について 資料3について山本専門委員および原研青池氏から説明を聞いた。 3.再処理工場に関するデータについて 資料4にもとづき、燃料公社中村氏から説明を聞いた。 4.核燃料所要量の計算結果について 資料2により、荒川専門委員、電力中研小川氏から説明を聞いた。 今回提出された計算結果は天然ウラン型原子炉に関するonce throughの場合のもので、今後他の場合についても計算を続けていくこととした。 5.燃料サイクルのコスト関係のデータについて 資料5および6により、これまで提出された資料中の燃料費の比較表を事務局から説明した。 6.核燃料サイクルに関する試算の結果について PWR型を対象としPuと低濃縮ウランとを混合した燃料を使用した場合の期待燃焼度の計算結果につき資料7により山田専門委員、電気試験所新井氏から説明を聞いた。 なお、PuとU235の等価性に関し、意見の交換があった。 7.今後の運営について この程度の段階でしめくくりをつけ、中間報告の提出を考えることとした。 原子力船専門部会 第7回(昭和33年12月12日(金)) 議 題 議事概要 第8回(昭和34年1月13日(火)14.00から) 議 題 議事概要 原子力災害補償専門部会 第1回(昭和33年11月25日(火)10.00〜12.30) 議 題 議事内容 原子力災害補償専門部会の設置理由ならびに審議事項について事務局から説明があり、現行の原子炉等規制法による原子炉等設置許可の手続および許可基準と事故時における災害補償との関係ならびに10月29日原子力委員会決定の原子力災害補償についての基本方針について質疑がおこなわれ、審議事項の内容が明らかにされた。なお原子力災害補償問題海外調査員派遣要領、IAEAの補償問題専門家会議の開催等につき報告があった。 第2回(昭和33年12月16日(火)10.00〜12.40) 議 題 1.今後の運営方針 2.原子炉等規制法一部改正について 議事内容 今後の運営方針決定の参考とするため、従来調査研究をおこなってきた日本原子力産業会議原子力補償問題特別委員会、保険約款等の立案審議をおこなってきた原子力保険プール結成準備委員会および文部省科学研究費を受けて研究を進めている東京大学法学部の原子力に関する法律問題についてそれぞれ担当者から活動状況、今後の進め方等について説明があり、また事務局から原子炉設置者に災害補償のための措置を講ぜしめることを目標とする原子炉等規制法一部改正案について報告があった。
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