昭和34年度第1回

原子力委員会参与会

〔日 時〕1月22日(木)14.00〜17.00

〔場 所〕東京都千代田区丸の内 東京会館

〔出席者〕稲生、井上、大屋、岡野、駒形、瀬藤、中泉、伏見、三島、宮崎、安川、山県、脇村各参与
 石川、有沢、兼重各原子力委員
 篠原事務次官、佐々木原子力局長、法貴次長、島村、井上、亘理各調査官、井上政策、大田原子力調査、藤波管理、中島助成、鈴木アイソトープ各課長、ほか担当官

〔議 題〕
 1.昭和34年度原子力関係予算について
 2.昭和34年業務計画について
 3.補助金の第2次要望課題について
 4.その他

〔配布資料〕
 1.昭和34年度原子力予算総表
 2.昭和34年業務計画
 3.第2次要望課題:教育訓練用小型原子炉について
 4.原子力船開発のための研究題目とその方法に関する報告書
 5.放射線の許容線量及び放射性物質の許容濃度についての原子炉安全基準専門部会の答申

1.昭和34年度原子力関係予算について

 資料1にもとづいて佐々木局長、藤波管理課長および中島助成課長から説明した。

 佐々木局長:昭和34年度の原子力関係予算は現金74.2億円、債務負担行為35.7億円、合計109.9億円である。33年度に比べると現金は3.7億円の減少、債務負担行為は1.8億円の増加で、合計では1.9億円減少した。これは、34年度では、今までのような設備の建設という使途が一段落したので内容の充実を考えることとなり、人員の増加に重点を置いたからである。人員は大幅に増えたが予算上にはさして影響していない。予算としては充実したものと思う。

 大屋参与:核融合の研究に使われる予算は一括して電気試験所に出されているのか。

 佐々木局長:核融合の研究を対象とする予算の額は昭和33年度に約7,500万円、34年度に約1億4,500万円となっている。内訳は、電気試験所に33年度2,000万円、34年度5,100万円だされるほか、委託費から33年度に三菱、東芝等に対し3,300万円だされ、34年度では6,000万円に増額された。さらに今年度は新しく原研に300万円の予算がついている。これは核融合専門部会で作った案により、核融合の研究は一ヵ所に集中し大きな設備も活用できるようにすることを考えており、その世話をとりあえず原研でやることになったわけである。以上のほか、文部省から核融合の研究のために各大学にだされる予算があり、昭和33年度には2,000万円でているが、34年度では3,000万円ぐらいになるようである。

 伏見参与:文部省の関係としては大学から要求が相当けずられたのは残念である。

 大屋参与:核融合だけは相当集中して研究を行わないと好奇心だけの研究に終ってしまうおそれがある。

 岡野参与:核融合の問題は早く原子力委員会の意見をきめて、研究を分散しないでやるほうがよい。

 佐々木局長:核融合専門部会で考えていただいているが、委員会もそのような考え方を持っているので、御趣旨に沿えるような方針がそのうちに委員会として打ち出せると思う。

2.昭和34年業務計画について

 資料2にもとづいて佐々木局長から説明した。

 佐々木局長:人員養成計画は専門部会をつくり、文部省とも連絡してつくりたい。試験研究計画というのは、それぞれの研究分野で行っている研究に重複した部分や相互連絡の不十分な点がでてくるので、日本の各分野の研究を俯瞰した計画をつくろうとするものである。アイソトープ利用開発計画というのは、アイソトープの生産も可能となるので、今後の需給の問題、設備の整備の問題等を国としてどういう形で考えていくかということである。

 駒形参与:業務計画の一つとして試験研究計画があり、そのほか核燃料再処理、核融合、ウラン濃縮と計画がならべてある。試験研究計画としては、それらの計画が固まっていくにつれてふりかえって考えていってほしい。

 島村調査官:たえず反省、修正していくつもりである。

 岡野参与:原子力災害補償の問題はどの程度進捗しているか。

 佐々木局長:まず、民間に保険プールを作り既存の法律の範囲内で保険を引き受ける体制をとり、同時に炉の設置者には保険をかける義務を課する。これには規制法の改正を要する。次に、従来の保険の考え方では割り切れない問題がある。無過失補償主義の問題と保険の最高限をきめる問題である。これについては、保険法、国家補償法の制定を考える。このような段階になっている。

 岡野参与:飛行機の事故は補償がメーカーにまで及んでくる。原子力事故の場合もどこまでを保険でカバーし、どのくらいから上の金額を国家がみるかということをきめておく必要がある。

 有沢委員:製造業者と設置者との間で話しあって保険料の一部を製造業者が負担するということを考えればよい。

 岡野参与:国家補償を考えないと保険料が非常に高くなって炉の設置をしようとする気運を阻害することになろう。

 有沢委員:必ずしも、保険料が非常に高くなるわけではない。

 中泉参与:災害補償の問題は事故のきめ手を技術的に相当固める必要がある。たとえば血液障害が起ったときに、それが放射線によって起ったものかどうかのきめ手は非常にむずかしい。

 有沢委員:むずかしい問題なのでお医者さんに決めてもらわねばならないと考えている。

 瀬藤参与:原子炉の安全審査には担当人員をさかねばならないと思うが。

 佐々木局長:原子力局の定員が34年度には29名増えた。これを許認可事務および設備の検査にむける。定員が実際にとれる7月以降までの間は各省からも来て手伝っていただくつもりである。

 稲生参与:技術提携の問題を考えてほしい。長期的な契約のものは一切認めないという考えでは時期的におそいと思う。

 島村調査官:これまでは生産に直結した技術提携は抑えていき、技術情報に関したものはcase by caseで考えていくという方針をもっていた。コールダーホール改良型動力炉の導入という問題が迫っており、今後は全般的に工業化に進んでいくと思われるので、従来の方針も再検討の要がある。しかしながら、相互に関連のある技術の発展段階を考えてcase by caseにきめていくほかには、技術の内容別に前もってきめておける性格のものではないような気がする。

 佐々木局長:最終時には外貨審議会で決めるが、その前の下相談が長くかかる。case by caseといってもなにか方針がほしいと思う。

 大屋参与:方針をきめるのはむずかしいと思う。


 島村調査官:「核燃料の開発に対する考え方」や「発電用原子炉開発のための長期計画」にも漠然としたいい方ではあるがふれておいた。またウラン製錬技術の技術導入に関しては工業生産に直結するものは早すぎるから押えるが技術情報に関するものはcase bycaseに考えていくという方針を委員会が打ち出している。

 稲生参与:コールダーホール改良型原子炉、原子力船等に関しては技術導入の問題が起ってくる。産業に関連した技術導入の問題を考えてほしい。

 島村調査官:具体的な需要との関連において逐次case by caseにとりあげて導入を考えねばならないと思う。

 石川委員:case by caseの性質のものであるから、もし技術導入契約の御希望があれば要求をだしてみていただきたい。

 伏見参与:国際原子力機関にてこ入れするべきであるという御意見を有沢先生の帰朝報告として聞いたが、その問題はどう考えられているか。

 島村調査官:予算面では正当の分担金のほかに自発的な分担金として応分の拠出をする。国際原子力機関の専門的なパネルとして今年開かれるものに災害補償、廃棄物処理関係のパネルがあるので日本からも参加者を派遣する。原子力船関係のパネルも予定されている。以上のように予算面、事業面で協力するほか、東南アジアからの留学生を日本の費用で呼ぶということも予算化している。

3.補助金の第2次要望課題について

 資料3によって中島助成課長から説明した。

 中島助成課長:33年度の補助金のうち1,800万円が残っている。これの使い方として教育訓練用小型原子炉を試作することとした。大型のものは規制法の関係で面倒であり、あまり小型のものでは金額の点から意味がないので常時出力10〜30kw程度のものを考えている。

 伏見参与:具体的にいってブリーダーのようなものでなくスイミングプールを考えているのか。

 担当官:変ったものでもよい。ブリーダーのようなものでもよい。

 島村調査官:なかみについても御意見によって委員会の改正として変更することができる。

 大屋参与:出力が10〜30kwといえば相当大型のもので、手をつける人がいないかも知れない。教育用としては大きすぎないか。

 兼重委員:小さいものならば注文主があればできるので補助金を出してまで試作する必要はない。3分の1を補助金、3分の2を自費でという目安から建家なしで5〜6千万円でできる程度のものを考えている。

4.人事異動の報告

 人事異動について次のように報告した。

 高埼通産大臣が昨年12月31日に科学技術庁長官および原子力委員長の事務代理になり、1月12日に科学技術庁長官および原子力委員長に任命された。石川、兼重両委員は1月1日付で再任となった。運輸省官房長の交替で、朝田参与にかわり細田参与が1月10日任命された。原子力局政策課長として1月10日付で井上氏が発令された。

5.各専門部会の活動状況について

 法貴次長から各専門部会の活動状況について報告を

行った。

6.各参与からの質問

 岡野参与:化繊の製造法をアイソトープを利用して改良する方法が研究されているが、この研究を原研にまかしておいて進歩が停滞しては産業界に大きな損害が予想されるということで、民間企業では2億7千万円を集めて独力で研究したいといっているそうだが。

 駒形参与:東海村と理研で研究しているところに関しては話はそこまでいっていない。各社がそれぞれ自分の特許に影響してくるのでばらばらにやっている感がある。

 大屋参与:化繊の各社の間の秘密は想像以上のものがあるのでとても共同ではできまい。共同の施設は使うかも知れないが各社別々に研究をやるだろう。

 伏見参与:最近アイソトープの事故が起っているというが、こういう事故について局としてはどういう態度をとるか。

 島村調査官:原子力局が放射線障害に関する取締りの責任を負い、同時に原子力平和利用促進の責任をももっている。

 手心をしているというのではなく、現在の間はどちらかというと法律、障害の知識の普及、啓蒙に力を注ぐべき時期だと考えている。しかし、知っていながら悪意で事故を起すというおそれのある場合には厳格にやるということを漠然とした方針として考えている。

 伏見参与:法律も厳重でありながら現実にあてはまらないものがあるので、この種事故にてらしてもし必要があるならば、法律を逐次改正してほしい。

 伏見参与:関西原子炉設置の問題だが、地元選出の代議士が反対を公約している。その点お考え願いたい。