昭和34年度原子力関係科学者、技術者養成計画の決定

原子炉研修所を設立、留学生は85名


 原子力が非常に多くの分野に関連する新しい科学であることから、多数のまた優秀な人材を必要とすることは早くから痛感され、関係科学者、技術者の養成に関していろいろの手段がとられてきた。まず先進諸国に対するたちおくれを早急にとりもどすための留学生の海外派遣は、昭和29年度アルゴンヌ原子炉学校へ2名を派遣して以来毎年その数をまし、大きな成果をあげてきた。国内においてもアイソトープ研修所等により養成訓練が行われ、海外留学生の受入れも実施されている。一方大学においても講座、学科等の新設、増設が行われている。

 原子力委員会においては、原子力開発利用長期基本計画の一環として目下原子力関係科学者、技術者養成長期計画を立案中であるが、とりあえず昭和34年度における養成計画を1月28日開催の第4回定例会議において次のように決定した。

昭和34年度原子力関係科学者、技術者養成計画

34.1.28
原子力委員会

 原子力開発利用の進展にともなう原子力関係科学者、技術者の需要の増加に応ずるため、原子力関係科学者、技術者の養成訓練については従来よりこれを重視し、昭和29年度以後33年末まで約200名を海外に派遣して海外の技術を習得せしめるとともに、国内においてもアイソトープ研修所等により養成訓練の実をあげてきたが、さらに長期的な視野にもとづいて計画的に人材を養成するために、当委員会は、現在原子力関係科学者、技術者養成長期計画を立案中である。さしあたり昭和34年度においては33年度に引き続き海外への留学生の派遣、アイソトープ研修所における研修、海外からの留学生の受入れ等の措置を行うほか、新たに国際原子力機関フェローシップによる留学生の派遣、原子炉研修所の設立等の措置を講ずるものとする。なお、大学関係においては33年度に引き続き講座、学科等の新設、増設が行われる予定である。

1.海外への留学生の派遣

 33年度においては約80名を原子力関係科学、技術習得のため海外の研究機関に留学せしめたが、34年度においても一般留学生70名のほか、国際原子力機関等のフェローシップにより約15名合計85名を派遣するものとする。このため海外の諸機関との間に緊密な連絡をはかり諸外国の協力を求めるものとするが、特に34年度においては国内の養成訓練機関の充実とあいまってやや高度の知識を有する科学者、技術者の派遣ならびに長期留学生の派遣も考慮するものとする。

(1)派遣人員     85名
  (A) 機関別内訳
    (イ)各省庁国家公務員(大学関係を除く)ならびに日本原子力研究所、原子燃料公社の職員34名
    (ロ)(イ)以外の機関の職員     51名
  (B) 専門分野別内訳
    (イ)原子炉工学関係(原子力船、核融合を含む)   43名
    (ロ)核燃料、再処理、廃棄物処理関係  16名
    (ハ)原子炉材料関係        7名
    (ニ)放射線利用関係       13名
    (ホ)放射線障害防止関係      6名

(注)必要により(A)および(B)の内訳は変更することがある。

(2)募集および選考

 国際原子力機関フェローシップによる留学生の募集および選考は34年2月15日までに終え、ただちに所要の手続きをとるものとする。一般留学生については33年2月中に募集し、3月中に選考試験を行い、4月上旬に決定するものとする。(募集要領は別に発表する。)(本誌6ぺ−ジ参照)

2.国内における養成訓練

 34年度より日本原子力研究所内に原子炉研修所を設立し、高級課程(博士課程修了程度1年間コース)約10名、一般課程(修士課程修了程度6ヵ月コース)約10名の養成を行うものとする。同じく日本原子力研究所においてはJRR−1、Co60照射室等の諸施設を一般に開放して、また外部より技術者を受け入れて各種の研究に協力を求める等の措置を通じて原子力技術者の養成を期する。

 アイソトープ利用に関する技術者の養成については、33年度に引き続き、アイソトープ研修所において1回32名年7回の一般研修(1ヵ月)および1〜2回の短期特別研修を実施する(国家公務員で研修を希望する者の募集については別に発表する。)。放射線障害防止に関しては、放射線医学総合研究所において保健物理部門を主とする研修(約20名、9月より4ヵ月間)を行う予定である。また、民間団体等の主催する各種の講習会に対しては積極的に協力し、原子力科学、技術の普及に努めるものとする。

3.海外からの留学生の受け入れ

33年夏ユネスコ主催のアイソトープ講習会により26名の外国人留学生の研修を行い多大の成果をあげ、引き続き国際原子力機関およびコロンボ計画等による外国人研修生の研修を行っているが、34年度においても国際原子力機関トレーニングフェローとして約20名の受入れを行うほかコロンボ計画等による若干名の研修生も受け入れ、アイソトープ研修所ならびに国立研究機関において約6ヵ月間の研修を行うものとする。

〔参考資料〕

1.昭和33年度原子力関係海外留学生派遣実績 (34. 1. 20.現在)


2.昭和34年度国立大学原子力関係大学院、学科、講座の新設および増設

1.大学院


2.学部、学科
 京都大学工学部原子核工学科
           学生定員 20名

 完成6講座、32年度2講座、34年度2講座(3に再掲)

3.講座部門


  講座、部門数

  既設 30、  34年度新設 19、 計 49