原子力平和利用研究の紹介

 原子力平和利用研究のうち①原子炉用ステンレス鋼鋼材の製造に関する研究(住友金属工業)②UO2-Al系分散型プレート原子炉燃料の粉末冶金法による製造に関する研究(住友電気工業)③原子炉用ステンレス鋼の溶接等に関する研究(日本金属工業)の3件を以下に紹介する。

原子炉用ステンレス鋼鋼材の製造に関する研究

住友金属工業(株)

 各種の型の原子炉に燃料被覆用、燃料漏洩検出用、熱交換器用その他各種の配管用、構造用として18-8系ステンレス鋼が広く採用されている。これはこの材質が耐食性にすぐれていることによるものであるが、寸法的には細径薄肉で従来多く生産されてきた化学工業用、ボイラ用のステンレス鋼管に比して特殊の寸法のものが多く、肉厚外径の寸法公差に対する要求も厳密である。またこれら原子炉構造材の漏洩、破裂などは重大な事故の原因となるので、信頼性に対しても従来の工業的水準より一段と高いものであることが必要で、このためにも製管性の良好な非金属介在物、砂疵の少ない鋼材が用いられねばならない。
 さらにステンレス鋼の耐食性は一般的に優秀であるが、種々の腐食環境に対応して適当な材質が選定され、適当な処理が施されていなければならない。強度的な面についてもわずかな変形が問題とされるような条件にあっては慎重な考慮が払われねばならない。この研究においてはこれらの条件を満足するステンレス鋼鋼管製造の基礎を確立し、また使用条件に対応する機械的強度、耐食性に関する問題を解明することを目的として、実験室的基礎研究と現場的規模による試作とが総合的に行われた。以下6項目にわけて報告をまとめてあるが、(1)ステンレス鋼の製鋼法の研究、(2)ステンレス鋼の熱間加工性に関する研究は、(5)、(6)項の現場的試作試験の指針となるべき製造上の問題に関する実験室的基礎研究であり、(3)ステンレス鋼の機械的性質に関する研究、(4)ステンレス鋼の高温水による腐食の研究は原子炉用鋼管としての使用条件に対応する機械的強度と耐食性についての解明を目的とした研究であり、(5)ステンレス鋼鋼材の試作に関する研究、(6)ステンレス鋼鋼管の試作と加工法の研究は、現場的規模で行われた鋼材、鋼管の試作とその曲げ加工、拡管加工についての研究成果をまとめたものである。

(1)ステンレス鋼の製鋼法に関する研究
 ステンレス鋼の非金属介在物の生因を究明するには、その生因となる C、N2、O2の含有量を任意に調節できる溶解炉が必要であるので、容量 5kgの外熱式真空溶解鋳造装置を設置し、試料溶解に必要な技術を習得し、この溶解炉を用いて各種18-8系ステンレス鋼の非金属介在物か生因の究明を行った。
 18-8Nbステンレス鋼については、O2、N2を低くし、C含有量を変化せしめた試料を溶製して炭化物の生成につき、O2、Cを低くし、N2含有量を変化せしめた試料を溶製して窒化物の生成について試験した。非金属介在物の大部分を占める白色粒状の介在物はC0.02%以下では全く認められず、Cの増加とともに増加する傾向があり、これが NbC(ニオブカーバイド)であることを確かめた。N2 はこれが増加すれば介在物も増加する傾向はあるが、普通の窒素含有量の範囲では窒化物の生成はほとんど起らないことがわかった。一般の18-8Nbステンレス鋼にみられる介在物は大部分が炭化物であり、C、Nb含有量を低くすることにより減少せしめうるが、炭化物の存在はこの鋼種の特性として認識されなければならない。
 18-8Tiステンレス鋼についても同様にN2、Cのいずれか一成分を変化させた試料を溶製して非金属介在物の性状を調べた。Cが増加すれば介在物も増すが18-8Nbの場合ほど著しくない。N2の増加は介在物の著しい増加をもたらす。これは TiNの化合形態のものであり、Ti添加の際反応生物としてできたものと考えられ、これは局部的に密集し砂疵となる傾向がある。この鋼種の清浄度を向上させるには特にN2の含有量の減少に積極的対策を講じなければならない。その他18-8ステンレス鋼について各種の脱酸材の効果についてもこれを明らかにした。

(2)ステンレス鋼の熱間加工性に関する研究
 熱間加工性の実験室的研究用として新しい構想、設計のもとに高温ねじり試験機を製作し、設置した。この試験機と高温衝撃引張試験機により、製管性について問題のあった18-8Nbステンレス鋼について熱間加工性と種々の因子との関連を試験した。(1)C、Nが高い場合は熱間加工性が悪くなる傾向があるので、加工性改善の消極的な方法の一つとして許しうる範囲でC、Nbを低下することが必要である。(2)Nb投入前の各種脱酸剤の添加は加工性にあまり影響はない。ただし希土類元素の添加は効果的である。(3)18-8、18-8Moステンレス鋼に比べて18-8Nbステンレス鋼は高温でα相が出やすい傾向があるので、高温でのオーステナイトの安定性について考慮する必要があり、Niの高めの材料が適当であることなどが明らかにされた。

(3)ステンレス鋼の機械的性質に関する研究
 新設した5基のクリープ破断試験機により、18-8、18-8Ti、18-8Nb、18-8Moの各ステンレス鋼について従来データの乏しかった0~400℃での高温引張試験を行い、その特性を明らかにした。4鋼種ともステンレス鋼特有の次のような性状を示した。引張強さは0℃の65kg/mm2前後から200℃の約45kg/mm2へと急激に低下し、200℃から500℃の間はあまり変化しない。降伏強さは荷重速度により相当大きく変化し、20kg/mm2まで30min で負荷した場合の降伏強さは18kg/mm2で通常の方法で求めた値より数kg/mm2低い。これらの試験過程でこれらの温度範囲でもクリープが起ることが明らかとなったので18-8ステンレス鋼についてクリープ試験を行った。
 常温でも降伏強さに近い応力では顕著なクリープを生じ長時間にわたって進行する。
 20kg/mm2の場合、負荷直後の伸びは0.24%であるが100hrで0.7%、9,000hrで1.2%となり10,000hrでもなおクリープが進行している。試験結果から長時間後に一定のひずみを与える応力を求めることができるが、たとえば1,000hrで0.2%の伸びを与える応力は16.1kg/mm2 で通常の降伏強さの約70%である。これらの試験結果は従来注目されていなかった機械的強度、特にクリープの性状について明確にしたもので、原子炉用ステンレス鋼銅管の強度の検討に対して有益なデータとなるものと考えられる。

(4)ステンレス鋼の高温水による腐食の研究
 粒間腐食、全面腐食、応力腐食の各型式の腐食に対する各種ステンレス鋼の材質的な因子の影響について試験した。
 粒間腐食;高周波炉でC、Ti、Nb、Moを変化せしめた試料をつくり粒間腐食の検知能力の強い酸で試験した。Cは低炭素の領域でも大きくきいてくる。0.021%以下のものは粒間腐食が認められないが、0.03%のものでは短時間の再加熱で粒間腐食が起った。合金元素の粒間腐食防止力はNbがきわめて強く、Tiは弱く、Moはほとんど認められない。電気炉で溶解した各種ステンレス鋼についてもほぼ同様な結果が得られた。
 全面腐食;新設した高温高圧水溶液浸漬試験装置により、試験条件としては実際の水冷型原子炉では放射線照射による硝酸の生成が考えられるので、稀薄硝酸溶液による各種のステンレス鋼の腐食を試験した。
 雰囲気としてO2の吹込圧が増すと腐食は増す傾向がある。1,100℃水冷状態では成分の影響はほとんどない。ただBの添加は耐食性を害することがわかった。650℃再加熱状態では全般に腐食量は増し、Nb、Moの添加は若干の効果をもたらすことがわかった。純水による同様の試験を行ったが、重量変化は秤量誤差の範囲に入り鋼種による差も認められなかった。
 応力腐食;新設の応力腐食試験装置による基礎的研究と細径薄肉管曲げ加工部についての実地試験とを待った。応力腐食試験装置はHoar型の線状試験片にクリープ試験機と同様な機構により定荷重を与え、試験片の一部を腐食液にさらすようにしたものである。外径1mmの線に定荷重を与え42%MgCl2溶液140~145℃の条件で各種のステンレス鋼について試験した結果、Niが高く Cr の低いものが耐食性がよい傾向がうかがわれた。雰囲気は大きな影響をもち、標準の窒素吹込を酸素にかえると破断時間は著しく短縮した。
 外径12.5mm、肉厚1.25mmの細径薄肉管を曲げ加工した実際の管について42%MgCl2溶液による試験では屈曲のままの状態のものは短時間に応力腐食によるきれつの発生が認められた。加工部分はできるだけ残留応力を低くするのが有効であり、また長期にわたって塩素イオンの蓄積することがないようにすることが使用上のぞまれる。これらの腐食に対する試験は、試料間の差異を明確にするよう一般に苛酷な腐食条件で比較した。実際に原子炉における条件ははるかに緩和されたものであり、このような条件に対しても今後試験を進める予定であるが、今回の試験成果は化学成分や銅種の選定にあたり有益な基礎的データとなるものと考えられる。

(5)ステンレス鋼鋼材の試作に関する研究
 前記の製鋼法、熱間加工性に関する成果を考慮に入れて、各種ステンレス鋼についてそれぞれ製鋼法を改善してアーク炉による溶解を行い、圧延された丸鋼により鋼質を試験した。
 18-8ステンレス鋼については熱間加工性と酸化介在物の減少のため酸素含有量の低下を目標とした精錬を行い、非金属介在物、砂疵品位、耐食性ともにすぐれた成績のものが得られた。
 18-8Ti ステンレス鋼については製鋼時鋼溶中に生成される Ti の窒化物が非金属介在物となり砂疵品位を低下させ、また造塊時には鋼浴中のTiが造塊用耐火物を還元腐食して砂疵の発生をもたらすことが考えられたので、窒化物の生成防止と造塊用耐火物の侵食防止を主眼とする対策をとり溶解を行った。窒化物が検出しがたい他のステンレス鋼に比較すれば清浄度品位はかなり劣るが一般の18-8Tiにみられるような連鎖状の介在物は少なく、またよく分散し砂疵も少なく耐食性も良好であった。
 18-8Nb ステンレス鋼についてはCの低めを目標とし熱間加工性を考慮してCr、Niの成分調整に留意して溶解を行った。非金属介在物はNbCが大部分でこれは本質的にさけられないが砂疵成績はおおむね良好であり、耐食性も良好であった。
 18-8Mo ステンレス鋼については18-8ステンレス鋼に準じた精錬法により溶解を行い、非金属介在物、砂疵品位ともすぐれた成績のものが得られた。
 極低炭素18-8ステンレス鋼、18-8Moステンレス鋼については、脱炭の促進と還元期以降の復炭の防止について対策をとり、いずれもC0.02%のものが溶製された。非金属介在物、砂疵品位は18-8ステンレス鋼とほぼ同程度の成績であり、65%硝酸による粒間腐食試験では極低炭素18-8ステンレス鋼は18-8Tiステンレス鋼より良好な成績が得られた。

(6)ステンレス鋼鋼管の試作と加工法の研究
 前項にしるした6種の18-8系ステンレス鋼について、マンネスマン製管機あるいはジンガー押出製管機により熱間製管を行い、さらに冷間引抜きを行って国産1号炉用として予定されている外径12.5mm、肉厚1.25mmのものをはじめ種々の寸法の冷間仕上げ鋼管の試作を行った。試作した管の確性試験結果はいずれも所期の成績を示し、材質的には各鋼種とも上記の寸法まで支障なく冷間引抜きを行いうることが確かめられた。ただし寸法精度などをさらに向上するめには、引抜き方法、熱処理、酸洗方法など製造工程上の改善が必要であることがわかった。また燃料被覆用として18-8ステンレス鋼により、マンドレル引きと水素焼鈍を用いて外径8mm、肉厚0.275mmおよび0.38mm、長さ3mの鋼管の試作を行い成功した。なお量産化のための製造方式および検査技術の開発が必要であると考えられた。
 さらに細径薄肉管の加工上の問題の基礎資料とするため、上記の国産1号炉用鋼管を用いて曲げ加工、拡管加工に関する試験を行った。曲げ加工については曲げ加工機を製作し種々の半径で曲げ加工を行い、変形と材質的な性質の変化について調べた。曲げ半径75mm以上の場合は空曲げでも実用上支障はないが、半径35mm以下では心金曲げを行う必要があると考えられる。また35mm以下の場合は加工後熱処理を行うことが望ましい。以上の試験により各種寸法の原子炉用ステンレス鋼鋼管の量産化の基礎が確立されるとともに、それらの曲げ、拡管など加工上必要とされる資料も整備された。
 以上のように製鋼法、熱間加工性の研究により方向づけられた精錬法を現場での溶解に適用することにより非金属介在物が少なく、熱間加工性の良好な各種ステンレス鋼の製鋼方法が確立され、さらに試作製管により各鋼種とも材質的には原子炉用の各種寸法の冷間仕上げ鋼管が量産化しうるものであることが明らかにされた。また耐食性、機械的性質の解明により使用状態に応じた化学成分、鋼種の選定構造検討に対する基礎的な資料が得られ、さらに小径薄肉管の曲げ加工、拡管加工についての技術的資料も整備された。
 これらの成果により従来のものより一段と高度の信頼性と精度、性能の要求される原子炉用各種ステンレス鋼鋼管の国産化の基礎が確立された次第である。
 すでにこれらの成果は各原子炉製造者から受注している試験用の国産1号炉用ステンレス鋼鋼管の生産に適用されており、また加工法、耐食性、機械的強度に関する資料もこれらの試験や各種の原子炉の一般的検討に有効に利用されつつある。
 なお小径薄肉管の量産化については検査技術の確立と製造工程の改善が必要であるがその方向も明らかにされているので、その技術の開発を具体化することを推進したいと考えている。

UO2-AI系分散型プレート原子炉燃料の粉末冶金法による製造に関する研究

住友電気工業(株)

1.UO2製造の研究

(1)ウラニル塩の焙焼、還元
 各種ウラニル塩からUO2粉末を製造する際の熱分解過程およびUの酸化物の還元特性を検討するために、石英スプリング式熱天秤を用いて種々な条件のもとで加熱特性を調査した。硝酸ウラニル、酢酸ウラニル、重ウラン酸アンモンは、大気中、水素中、アルゴン中および真空中でいずれも常温付近から重量減少を呈するが、その状況はウラニル塩および雰囲気によって相違がある。酢酸ウラニルは350~400℃で一応安定するが、硝酸ウラニルは500~600℃においてようやく安定する。重ウラン酸アンモンでは500~600℃で大半の重量減少は終了するが、なお1,000℃付近まで徐々に減少を続ける。生成物は、大気中加熱のものはU3O8、水素中、アルゴン中および真空中加熱のものはいずれもUO2であることが確認された。ただ硝酸ウラニルのみは大気中550℃付近で加熱してUO3が得られた。
 次にこれらU3O8またはUO3の水素中における還元特性を調べたが還元開始温度はいずれもだいたい300℃ぐらいであるが、高温焙焼で得た酸化物では還元温度が高い。だいたい700~800℃以上において還元は終了しUO2になることが認められた。

(2)UO2の粒度調整
 UO2粉末の粒子形態を光学顕微鏡、電子顕微鏡等で観察、測定した結果、高温度で焙焼、還元を行うと粒子が粗大化することが判明した。焙焼、還元を1,400℃ぐらいの高温で行い焼結すると相当粗い粉末が得られるが、また重ウラン酸アンモンを適当量の水とともにオートクレーブ中で230~240℃で約3時間処理後上記と同様の焙焼、還元、焼結、粉砕、粒度調節を行って著しく粗大な粒子が得られることが確められた。
 さらに粗大UO2粉末を得る別の方法としてはまず微細なUO2粉末を用いて高密度のUO2焼結体を製造し、これを粉砕篩分することによってきわめて優秀なUO2粉末が得られた。
 すなわち重ウラン酸アンモンを原料として、これを900℃の低温で酸化焙焼して得たU3O8をさらに900℃の低温で水素還元を行って微粒のUO2粉末を得た。このUO2粉末を用いてこれをバインダーとともに加圧成型し1,800℃の高温において真空焼結を行い、UO2焼結体として理論密度の95%以上のものを得、これを粉砕篩分して粒度の調整を行い、きわめて優秀なUO2粉末を製造し得た。この技術はUO2ペレット製造技術と同じであって、このようにして造ったUO2粉末は分散型燃料用のUO2として最も好適な粗さと強度を有するものとされている。本研究においてもこの方法によるUO2粉末を使用することにした。

(3)ウラニル塩UO2分析法、試験法

(イ)分析法
 ウラニル塩、UO2中の水分、揮発分、Al,B,Cd,Co,Cr,Cu,Fe,K,Mg,Mn,Mo,Na,Ni,Siの定量分析法を検討した。またUO2については酸素量、4価および6価Uの分離分析法を検討した。分析法としては通常の化学的方法のほか炎光法、比色法、発光分光法、X線蛍光法、ポーラログラフ法等を併用した。99%以上の純度の試料についてこれら分析法により所期の精度の分析値が得られた。

(ロ)試験法
 ウラニル塩およびUO2の電子顕微鏡による形、粒度の観察を行った。またUO2については、Sub Sieve Sizerによる粒度測定が簡便なことを認めた。
 UO2に混在するU3O8のX線的検出、UO2粉末の格予定数の精密測定および密度測定を行い、結合酸素量との相関を調査した。この関係は複雑であるので結果については省略する。


2.UO2-Al系分散型プレート製造の研究

(1)UO2-Al焼結体の製造
 Al粉末としては純度は市販2Sと同程度のもので、-325メッシュの鱗片状の微細粉末および噴霧法による粒状-150メッシュ粉末を使った。Alのみの成型、焼結試験を行った結果、前者では3t/cm2,400℃で熱間加圧または4~5t/cm2、成型後600℃×1hrの水素中焼結が適当であり、後者では潤滑剤は不必要で3t/cm2の成型で密度2.6g/ccに達し、650℃以上ではほとんど収縮はなかった。UO2-Al混合体としては-100+325メッシュUO2を使用し54%配合した。鱗片状Alの場合、成型圧力5t/cm2、640℃×1hr水素中焼結または3t/cm2、500℃熱間加圧焼結で95%以上の密度が得られた。燃料板用のUO2-Alコアーではこのような高密度の焼結体は必ずしも必要でない。試作コアーの気孔度は次のようであった。鱗片状Alを用い粉砕後再成型した標準寸法(2.25"×2"×0.25")焼結体で11~13%、Alを用い400℃×1.4t/cm2熱間加圧、2.25"×1"×0.25"焼結体、で13~17%、噴霧法Al標準寸法成型体で5~9%である。

(2)圧延
 厚さ1/4"、幅37/8"、長さ5 5/8"の2SAl板を額縁に成型し、このなかにUO2-Alコアーを挿入して、両側から同質のAl板をかさね3枚のAl板のサンドウィッチをつくり、圧延方向の一端を溶接する。これを590℃x1hr加熱後高温圧延でTotal Reduction 84%、6パスにて厚さ0.07"にする。これを610℃x1hr焼鈍し3~4パスの冷間圧延により厚さ0.06"のものに仕上げる。
 コアーとして鱗片状および噴霧Alを使った焼結体および成型のままの4種の組合せについて試験圧延を行ったが噴霧Al粉末を使い成型のままのコアーの場合が最も良好という結果を得た。そしてAlの粒度はたいした影響は認められなかった。

(3)プレートの試験

(イ)超音波探傷法
 基礎調査により水浸透過法がすぐれており、使用周波数は3~5MCがよく3MCで1.5mmφ、5MCで1.0mmφの傷まで探傷可能であることが判明した。

(ロ)X線透過試験
 燃料板中のUO2の分散状態をラジオグラフィーにより調査した。使用電圧200kVで行った。

(ハ)加熱試験
 圧延成型された燃料板を 40℃/1min の加熱速度で550℃まで加熱試験を行った結果、燃料板内部に大きな気孔の存在するところでは約100℃付近で内部ガスの膨張によって局部的に被覆Al板がふくれるが、ごく微細な気孔は約500℃付近まで加熱されないとふくれない。このため加熱試験として550℃付近で行い変形を調査せねばならない。

(ニ)放射線試験
 燃料板の被覆Al板厚さ測定はウラン中β線2.3MeVおよび全β線量の透過による減衰量の測定および数μcのSr90による0~6MeVのβ線の変化により行った。またコアーの厚み測定はウラン中のγ線により行った。その結果ウラン中からの透過全β線量およびγ線量から、コアーおよび被覆Alの厚さを測定し、燃料板切断による実測寸法と比較検討した結果±1/100mmの精度で測定された。
 X線透過法の結果では、噴霧法Al粉末を使用し焼結を行わなかったコアーを使用した燃料板は比較的よく分散していた。良好品は550~590℃で1時間の加熱試験によってもふくれなかった。加熱試験によって検出される欠陥は、すべて超音波探傷により検出される。良好な圧延プレートは1枚の燃料板で圧延方向に±2/100mm、上下板で±1/100mmの差が放射線試験で認められた。

3.燃料要素組立加工の研究

(1)溶剤および鑞付用鑞の研究
 文献調査および種々実験の結果、下記の配合の溶剤が最適であることが判明した。
 塩化リチウム  15%
 塩化カリウム  45%
 塩化ナトリウム 30%
 フッ化カリウム  7%
 硫酸カリウム   3%

 上記配合のものを混合、熔融し、粉砕してアルコールに溶かし溶剤とした。これの熔融温度は560~590℃が得られた。
 また鑞付用鑞としてはAl-Si系のものを使用した。

(2)組立接着試験
(イ)サンドウィッチ法
 両面にAl板を使用し、中にAl-Si板を入れて高温圧延により3枚を接着させ、これに溝を切って側板として組み立て、上記配合の溶剤を塗布乾燥後、電気管状炉の中に入れ600℃×15~20分加熱して接着する方法である。

(ロ) 挿入法
 所定の厚さのAl側板に溝を切って組み立て、Al-Si板を薄板に圧延したものをテープ状に切断して溝部に挿入し、溶剤を塗布して乾燥後、電気管状炉の中に入れ600℃×15~20分加熱して接着する方法である。

(ハ)張り合せ方法
 Al板とAl-Si板を高温圧延により接着したものにAl-Si板側から溝を切って組み立て、溶剤を塗布し、乾燥して電気管状炉の中に入れ600℃×15~20分加熱して接着する方法である。
 上記三者ともに大気中で溶剤によってのみの酸化防止では有効に作用せず接着は不可能であった。アルゴン雰囲気中で行うことによりかなりの好結果が得られ、ほぼ目標に近いものを得られるようになった。この三者のうちで挿入法および張り合せ法が好結果を得られるが、両者とも一長一短がある。挿入法は組立作業が困難であるが、でき上りおよび温度の調節が簡単である。張り合せ法は組立作業は簡単であるが、でき上りの外観および加熱温度の調節が困難である。
 挿入法によって実物大の燃料要素を組み立て、試験を行い目標のものが得られた。

原子炉用ステンレス鋼の溶接等に関する研究

日本金属工業(株)

〔1〕緒言

 本研究はステンレス鋼を原子炉に使用するうえに最も重要と考えられる溶接に関する問題ならびに高温高圧水および溶融ナトリウムによる腐食を対象とした。
 溶接の研究においてはオーステナイト銅のうち、溶接に関して重要な数鋼種を選び、これらについて溶接きれつ感受性、溶着鋼の常温ならびに高温強度、高温度における材質変化などを検討した。これにより成分元素の影響を明らかにして実用上適切な成分決定の指針を得ようとしたものである。
 耐食性の研究においては溶接部のみならず、各種状態のステンレス鋼につき高温高圧水および溶融ナトリウムの腐食試験を行い、その耐食性ならびに腐食状態を明らかにすることを目的とした。両者ともに試験方法は静的試験とし、鋼種間あるいは加工材と溶着鋼の間で耐食性にいかなる程度の差があるかなどを調べた。

〔2〕溶接に関する実験

 本実験はオーステナイトステンレス鋼の溶融溶接において溶着金属の成分とその性質の間の関係を明らかにすることを目的とし、溶接きれつ感受性に重点をおいた。
 溶接方法はタングステン電極アルゴン溶接および被覆金属アーク溶接(チタニア系被覆使用)により、主として前者によった。
 対象鋼種は308、309、310、316、347型等であるが成分の影響を調べる目的上試料の成分は必ずしも規格範囲にはよらなかった。

1.本研究に適用した溶接きれつ試験方法
(1)引張応力を加えた帯板によるきれつ試験
  本方法はJohns Boudreau;“A Weld Cracking Susceptibility Test for Sheet Materials”Welding J., 35,No.4(1956)に準拠したものである。試験対象になる成分を持つ帯板を試験片とする。試験片のながて方向に引張応力を加え、引張方向に直角にタングステン電極アルゴン溶接トーチで溶融を行い、所定の速度および電流下で割れを生じない限界荷重できれつ感受性を容量的に表わす。本研究に用いた試験片を第1図の示す

〔試験条件〕
極性:直流正極性
電極:1.6φトリウムタングステン
電極間隔:1.5mm
電流:溶け込み量が試片裏面で2.0~3.0mmになるようにする。材質により多少異なる。


第1図 帯状試片(単位mm)

(2)切欠溝を有するブロックによるきれつ試験
 第2図に示すような切欠溝を有するブロックを母材とし、切欠溝上に溶加棒を横たえてアルゴン自動溶接を行う。ビードの幅を一定とし電流および速度を変えると電流値が高く速度の大きいほうが割れを生じやすくなる。同一の溶接条件下ではビード全長に対する割れの長さの比によりきれつ感度が比較できる。溶接条件は次のようである。

  極 性 直流正極性
  電 極 2.6φトリウムタングステン
  電流、速度 ビード幅が8mmになるように加減する。
  


第2図 切欠溝きれつ試片(単位mm)

(3)多層盛きれつ試験
 多層溶接ではきれつ発生の状況が単層の場合とは相違があるので第3図のように多層盛を行い、割れの発生を試験した。タングステン電極アルゴンアーク溶接と被覆金属アーク溶接の両者について行った。割れ発生の判定は次によった。

イ、曲げ試片を王水で腐食して肉眼検査

ロ、曲げ試片のX線探傷

ハ、検鏡試片の顕微鏡検査

ニ、曲げ試片の裏曲げ試験(180度U型、曲げ内径15mm、きれつ感度は割れの長さの合計mmで表わす。)

(4)円形溝きれつ試験

 R.D.Thomas;Metal Progress,70,No.1(1956)に発表されている方法で、広く行われている。第4図のような母材を用い、150mm/minの速度でS点からF点までさらにF点からS点まで溶接する。
 きれつ速度は segment 接合部のビードにビード方向に直角に生じた割れの長さのビード幅に対する比で表す。数値は4ヶ所の平均  


第3図 多層盛きれつ試片(単位mm)


第4図 円形溝きれつ試片(単位mm)


第5図 帯板きれつ試験におけるフェライト量と引張荷重の関係


第6図 多層溶接(D.C.S.P.200A)試験におけるミクロ・クラックとフェライト量の関係をとる。

2.溶接きれつ発生についての試験結果

 第5図は1-(1)帯板試験による試験結果で316および347ともフェライト量が6%以下ではきれつ感度が高くなり、6%を越えてもそれ以上には改善されないことを示している。第6図は1-(3)の多層ビードの曲げ試験法による結果を示したものであり、次項の試験結果とよく一致している。なお本研究ではフェライト量の数値はSchaeffler Diagram によった。

(1)母材からの稀釈の影響

  第7図は1-(2)の方法による試験結果で、母材の成分の影響が大きい。第8図は1-(2)の方法による347の試験結果で、母材中の炭素含有量が大きく影響し、また灰素は溶接割れを軽減する効果を持つことが示されている。

(2)合金元素の影響

  フェライトを含まない完全オーステナイト溶着金属について各種合金元素の影響を調べた。フェライトが存在すればフェライトによる効果と合金元素自身の効果が複合されて区別が困難となるからである。


第7図-1 316型T.I.G.溶接における溶加棒と母材の組成ときれつの関係


第7図-2 347型T.I.G.溶接における溶加棒および母材の組成ときれつの関係


第9図 帯板きれつ試験による完全オーステナイト溶着金属に及ぼす
諸元素の影響(溶加棒使用せず)


第8図 347型完全オーステナイト溶着金属のきれつ感度に及ぼす母材C量の影響

 第9図は1-(1)の方法による347および310の試験結果である。C、Mn、N、Mo、Co が溶接割れ防止に有効なことが示されている。

3.溶着鋼の引張性質とフェライト量
 フェライトが少ないために伸びが小さくなっているものは絞りも小さい。このようなものは破面から判断すれば熱間きれつを生じていたことが推定される。第10図は347および316についての試験結果である。

4.溶着鋼のフェライト量と加熱による衝撃値の変化
 フェライト相の存在はオーステナイトステンレス鋼の溶接割れの感受性を低めるがその他面シグマ相を比較的析出しやすいので使用上、熱処理上これに対する考慮を必要とする。シグマ相はだいたい550~900℃の温度範囲で析出するが第11図は308と316について加熱と常温衝撃値の関係を示したものである。熱処理時間は1100℃では1時間、他の温度では24時間である。クロム炭化物析出の影響も複合されてはいるが、308と316の比較によっても脆化は主としてシグマ相析出によるものであることが判断される(モリブデンはシグマ化を促進する)。



第10図 引張性質とフェライト量の関係


第11図 熱処理と衝撃値の関係


〔3〕 クリープ破断試験

 オーステナイトステンレス鋼の溶接部の高温強度を調べるために前項と同様の鋼種を選び650℃、1,000hrのクリープ破断試験を行い、溶接法、フェライト含有量、熱処理および特殊添加元素の影響等について検討した。
 試験結果から10hr、100hrおよび1,000hrのクリープ破断強さを示せば第1表のとおりである。本実験の結果は次のように要約される。

第1表 クリープ破断試験結果

 溶着金属のほうが同一成分の鋼材よりも一、二の例外を除いてはクリトプ破断強さが大きいが破断伸びは小さい。
 クリープ破断性質に及ぼす溶接方法の影響は鋼種によって異なり、308L型においては被覆金属アーク溶着金属のほうがアルゴンアークによるものよりもすぐれているが、347型においては反対にアルゴンアーク終着金属のほうが著しく強い。
 またフェライト析出の影響も鋼種によって異なり、308L型においてはフェライト量の多くなるほどクリープ破断性質が改善されるが、316L型および347型においてはフェライトがシグマ相に変態するため長時間後のクリープ破断性質が劣化する。
 347溶着金属に4%Mnまたは6%Coを添加することにより著しくクリープ破断性質が改善されるが、Nの添加は長時間後の性質を低下させる。

〔4〕高温高圧水による腐食試験

 高温高圧水に対する腐食試験方法の一つとしてオートクレーブを使用する静的腐食試験がある。この他試験ループを用いる動的試験があり、このほうがより実用状態に近い。しかしオートクレーブ試験は簡単であり、材料選択のための有力な方法として今までにも多数のデータが報告されている。
 本実験ではこの方法により AISI-304、304L、308、309、310、316、316Lおよび347の各鋼種にわたり試 験を行い、鋼種間あるいは加工材と溶着金属間の差異、熱処理の影響、腐食の時間的進行状態、腐食生成物の組成等を調べようとした。試験温度は320℃にしたが、これは加圧水型原子炉の温度に近いことならびにすでに発表されているデータに600°F(316℃)を採っているものが多く比較に便であることの二つの理由によるものである。

1.実験方法
 オートクレーブは18-8-Mo鋼製の内容積約5lのものを用い、試料多数を同時に収容して試験した。
 試験に用いた水はイオン交換樹脂により精製し、試験開始にあたり脱ガスを行った。重量変化率の算定のためには試験後に腐食皮膜付帯のままの状態と10%クエン酸アンモンにより電解し脱スケールした状態の両者につき重量を測定した。

2.試料表面の変化
 試験後の試料表面は鋼種および試験時間の長短により異なるが、いずれもなめらかで薄茶色、褐色、青色あるいは紫色を呈している。点食、割れ等は見られない。表面には生成した皮膜の構造を電子回折により調べた結果Fe3O4型およびα-Fe2O3型の回折像が得られた。おのおのFeCr2O4およびα-(Fe・Cr)2O3 と推定される。

3.重量変化率
 320℃、500hrの試験結果を第2表に示す。脱スケールをした場合のほうが安定した数値を示している。鋼種あるいは熱処理の相違による明らかな差は認められない。溶着金属も圧延された材料と同程度の数値を示している。
 A.H.Roebuck et al.;“Corrosion or Structural Materials in High Purity Water”,Corrosion,13,No.1 Jan.1957によれば30mg/dm2/month以内では耐食性優秀とされているが、本実験の数値はいずれもこの範囲に属する。

4.腐食の時間的進行
 24時間から1,500時間までの重量変化を調べた結果いずれの試料についても初期の腐食速度が大きく時間の経過とともに腐食の進行がゆるやかになる。(データ省略)

5.応力腐食割れ
 304、304L、309、310および347の各種につきU型試料による応力腐食割れ試験を2,000時間まで行ったが、いずれも試料に異状を認めなかった。

〔5〕ナトリウムによる腐食試験

 ナトリウムによる腐食では質量移行が大きな意義を有し、実際の原子炉における腐食量を予測するためにはダイナミックループによる試験が必要であるが、本実験では鋼種間あるいは加工材と溶接部の間の腐食量の相違、熱処理の影響、脆化の有無等を調べることを目的として静的腐食試験を行った。
 試験温度は500℃、時間は720hrとした。

1.実験方法
 ナトリウム中の酸素その他の不純物を除くために蒸留によりナトリウムを精製した。装置は18-8鋼製の蒸留筒と凝縮管を連結したもので凝縮筒にはあらかじめ供試材料を入れて置き、蒸留後そのまま試験を行った。保護ガスにはアルゴンを使用した。

2.実験結果
 500℃、720hr試験後の重量変化の測定結果は第3表のとおりである。この程度の数値は鋼種間の差あるいは炭化物、シグマ相析出の影響を明示するものではないと考えられ、いずれの試料間にも本質的な差は認められない。
 試験後の試料には粒界侵食は認められず、また曲げ試験によっても割れは発生しなかった。

第2表 高温高圧水腐食試験による重量変化

第3表 ナトリウム腐食試験による重量変化