原子力委員会参与会


第7回

〔日時〕昭和33年7月17日(木)14.00〜17.00

〔場所〕東京都千代田区永田町2の1総理官邸

〔出席者〕

    稲生、井上、大屋、岡野、脇村、茅、高橋、田中、
    中泉、山県、安川、松根、駒形、三島、瀬藤各参与
    石川、有沢、兼重、菊池各委員
    石井政務次官、篠原事務次官、佐々木局長、法貴局次長、
    島村政策課長、荒木原子力調査課長、藤波管理課長、堀助成課長 ほか担当官

〔議題〕

1.昭和34年度原子力関係予算案作成上の問題点について
2.その他

〔配布資料〕

1.昭和34年度原子力関係予算案作成上の問題点
2.ロンドン大野大使発藤山大臣宛書簡「原子炉建設計画に関し国防省発表に関する件」

昭和34年度原子力関係予算案作成上の問題点

 予算案作成上の問題点として、(1)日本原子力研究所における研究の重点、(2)原子燃料公社の事業の重点、(3)原子力船開発に対する考え方、(4)助成制度のあり方の4点をあげ、(1)については駒形参与(日本原子力研究所理事長)、(2)については高橋参与(原子燃料公社理事長)、(3)については運輸省亀山企画課長、(4)については島村政策課長および堀助成課長からそれぞれ説明を行い、質疑応答を交した。

(1)日本原子力研究所における研究の重点

 駒形参与:日本原子力研究所の34年度予算要求は内部で検討を行っている段階であるが、考え方としてつぎの3点がある。

(イ)新規の研究は原則としてとりあげないこととし、今までに着手してきた設備や研究を整備、完成させることに力をいれる。

(ロ)原研の規模も大きくなり人員が不足している。施設を十分に動かすためにも34年度は思いきって人員を増加したい。

(ハ)研究の対象を幾つかにしぼり、研究所全体の仕事の骨格となるような研究計画をつくる。研究計画の内容としては、

イ)燃料要素に関する問題
ロ)燃料の再処理、廃葉物処理等放射能の強いものを取り扱う技術に関する問題
ハ)増殖炉に関する問題
ニ)実用炉に関連するもので原研がひきうけるべき問題
ホ)保健物理に関する問題

が考えられる。原研全体の物理、化学、工学等の基礎ないし応用研究をこれらの問題に集約していきたい。
 以上の三つが重点である。人員のわくは32年度末の約800名を1,300名ぐらいにしたい。同時に、環境の整備・給与体系の改善を行って必要な人を外部から高給で入れられるようにしようと考えている。
 以上のような考えで予算をはじいた結果、まだはっきりしない点も残ってはいるが、だいたい117億円程度におさまると思われる。

 大屋参与:民間の施設をできるだけ利用する方針をとり、原研は原研でなければできないことをやるようにしてほしい。

 駒形参与:私どももそういう考えをもっている。ウオーターボイラーやコバルト60の1万キュリーの照射室等の大きな施設は来年度も引き続き共同利用の態勢をとっていきたい。共同利用に際しては、学界・産業界から人を入れた運営委員会をつくり、合理的な設備の利用を期する考えである。

 岡野参与:原研の予算の問題ではいつもでてくることだが、民間出資と政府出資のかねあいの問題について、皆さんのお知恵を拝借したい。
 32年度は2.5億円の民間出資があったが、原研全体の大きな予算規模のなかで一緒に使われるとどこにどう使われたか、どういう効果があったか、はっきりしない。その結果、一つには民間出資とその使い道とをはっきり結びつけられるようにしておくと民間出資を頼みやすい。また一つには民間出資が集まらなくなると、政府出資で全部をやるようになり政府自らが経営することともなってますます動きがとれなくなるおそれがある。自分としては、民間出資の使い方として、5年計画、3年計画といった筋の通ったことを考えていくのがよいと思う。33年度には3億円の民間出資を集められるように最善の努力をするつもりだが、難しいと思うのでお知恵を拝借したい。

 松根参与:いつまでも民間出資を多額に要求するようでは不安もでる。今度の動力試験炉を最後として、考えられる政府予算も入れて一応そこまででくぎった計画をだしてほしい。そうすれば民間出資として出す金もだいたい見当がつき、そのほかは年々の経費として少額のものになる。増殖炉のような大きなものが出たときは改めて相談することを前提として、こういったことを考えてはどうか。

 駒形参与:いろいろな点からそういった5ヵ年計画を考えていく必要がある。私も計画の策定に着手している。

 大屋参与:5年なら5年という計画をたて、その先は一応うちきって必要となったときに考慮するという意見が産業会議ででている。

 島村課長:松根参与の御意見は、原研に対する国家および民間からの出資の合計額が将来においてかなり少額になったならば、民間から出さなくてもよいということですか。

 松根参与:そうではない。全体が少額になればそれに応じて民間出資も減らして出すということである。

 島村課長:日本原子力研究所法では原研への出資は国が半分以上を出すということになっているが、東研の経費の膨張が急なために、国の出資額と民間からの出資額との間にかなり開きができている。

 民間出資が望めないようなら民間から出資した金額を返して国家で自由に原研を運営していきたいという考えが一時大蔵省にもあった。しかし給与の上でも開きがあるので、今日の段階では原研を国がひきとることは事実上不可能と判断される。しかしながら、民間の出資がなくなればたとい国営にならなくても国家の監督が厳しくなることは否定できない。
 原研の運営に弾力性を持たせる目的とよい研究者を迎えるための給与水準を維持するという目的により、原研を半官半民の形にしてある。この二つの目的のうち、後者はまがりなりにも果されてきたが、前者についてはとかく批判がある。この点から、今までは国家から原研に出す金は出資と補助金とに分けてきたが、原研の運営面で機動性にかけるので大蔵省の賛成も得て34年度からは全額を出資することとなった。
 原研への民間出資と政府出資の問題はできるだけ官民一体となって研究に力が注げるような趣旨を生かせるようにやっていただければよいと思う。

 石川委員:研修所のことを話していただきたい。

 駒形参与:原研は東京の科研においてアイソトープの研修所を開いている。1回に32名ずつ1万2千円の授業料ですでに3回行っている。8・9月にはユネスコの依頼により東南アジアの人を対象として開き、さらにその後コロンボ計画によって、アジアの学生をうけいれて開講する。来年度もこれに準じて続ける予定である。
 原子炉研修所を東海村で開く計画があり、本年度はその準備期間である。来年には開所できるようにしたいと考えている。

 岡野参与:ユネスコを通じて東南アジアから研修にくる人々は程度にかなりの開きがあり、アメリカの学校を卒業し本国で数年勉強してきた人や本国で卒業したばかりの人がまじっている。この点からアイソトープ研修所はやり方をよほど考えていかねばならない。

(2)原子燃料公社の事業の重点

 高橋参与:人形峠地区は確定鉱量がつかめるような程度まで探鉱が進展している。引き続いて夜次地区の探鉱を行っており、ここは鉱量はともかく品位がかなりよい。峠地区の品位がだいたい1万分の5であるのに対し、夜次地区では1万分の6〜7で中津河地区には千分台もある。中津河地区でも相当の鉱量が期待される。
 現在の探鉱の段階から推測すれば、確定鉱量と推定鉱量とを合計して140万トン程度の埋蔵量が人形峠に期待される。これを開発するための試案を作ってみた。400トン/日で1ヵ月に25日掘るとすれば月に1万トン掘る計算になる。品位を1万分の5とすれば年に金属ウラン60トンがとれる。これは、原子力委員会の長期計画にもあるように15万kWの天然ウラン型発電炉が1年間に要する取替量にほぼ匹敵する。鉱量はまだ増す可能性もあり、このペースで掘れば10年はもつので、なんとか山としてなりたっていくと思われる。採算の点からみて400トン/日では規模が小さすぎるので、もっと品位を落したほうがよいかとも考えている。400トン/日ではなく600〜800トン/日の製錬工場をたてれば国際価格のウランがとれるのではないかと思われる。すぐ採掘にとりかかれるが、製錬所ができるまでは許されればあと1年ぐらい探鉱を続けたいと考えている。公社で研究すべき技術の確立をめざすため、人形峠には早くきりをつけるべきだと考えている。
 東海村の試験所が完成し製錬の技術が確立すれば金属の段階にまで製錬ができることとなる。世界のウラン市場は最近様相が異なり買手市場となっているので、必要ならば鉱石を輸入して製錬することも考えるべきだと思う。
 現在の公社においては、探鉱の面と製錬の面とが一応軌道にのって進捗している。それをどの程度拡大していくかは国家の施策に応じられるように考えている。
 そのほか、北海道を除く全国各地に放射能の徴候があり、いくつかの地区で探鉱を行っているが、人形峠のような恵まれた鉱床に再びぶつかることがあれば天佑と考えられる。
 公社としては、加工、再処理の問題を今から勉強しておくべきだと考えている。そのため燃料調査団が公社の調査機関として民間の参加をも仰いで海外に渡り調査してくる予定である。再処理の問題は現在のところ原研が中心となって研究し、公社が協力していく形となっている。

(3)原子力船開発に対する考え方

 運輸省亀山企画課長:原子力船の開発計画全体については原子力船専門部会で検討していただいている。34年度の予算を考えるため、とりあえず40年度ごろまでに最初の試験船として原子力船を試作する段階に入ることを予想し、それに備えた基礎研究を続けるものとした。
 これまで原子力船開発のために運輸技術研究所に交付された国家予算は32年度700万円、33年度4,300万円となっている。民間は原子力船調査会や各造船所で研究を行っている。
 来年度の予算要求は運輸省で使うものは予算としてもらい、民間で使うものは補助金としてもらうこととする。この際、官と民との予算の分け方が問題となるが、今のところ計画全体がきまっていないのできちんと分けられないが、一応の考え方として、地上の模型実験のような基礎的共通的な問題は運輸技研で検討し、動揺試験、運転試験等を実船で試験するのは民間でやるという方針をとる。
 運輸技研で行う試験項目はつぎのようである。

(イ)遮蔽に関する研究
 床子力船に設ける遮蔽は軽量で動揺・振動に耐えることが必要である。遮蔽のための研究装置を設けるとともにスイミングプール程度の原子炉を持ちたい。

(ロ)動揺・振動の研究
 人工的に振動を起す装置ができており、原子炉の模型をその上において研究を行う。

(ハ)船用原子炉の補機に関する研究
 放射能の漏れ等の問題があり安全問題を重視する考えから補機についても研究する。なお主機に関する研究は日本原子力研究所に導入される動力試験炉によって行われる。

(ニ)船体の研究
 原子力船は大型で速力のはやいものでないと採算にあわないと思われる。原子力船に適した船体を研究するため高速の客船や潜水船を想定して研究する。

(ホ)原子力機関
 船用原子炉としてgas cooling が採用されることが考えられるので、ガスタービンの研究を行う。

 以上の項目にともなう研究室の整備・人員の増加を考え、金額としては結局8億3千万円になる。これは33年度の約20倍に相当する。この考え方に対して原子力局から現在の研究体制でよいのかという指摘があった。研究規模が拡大するにつれ原研のような研究体制の必要も考えられる。現在では運輸技研と原子力船調査会との間でバランスをとってやっていく。
 つぎに、民間において期待する補助金の対象となる研究の内容は、実船に計器類をつけて計測しその結果を解析するものとし、機関の負荷変更の問題、コンテナーの振動の問題等10項目程度の研究を行う。これらの研究費の50%を補助するものとして、補助金は1億円程度を期待している。

 山県参与:原子力船の予算を考えるのに一番問題となるのは原子力船の開発方針がはっきりしていないことである。長期計画を策定すべきだということは前からいわれているが、同時に短期計画を考えるという声が諸方面からでている。これは2〜3千トンの試験船を1隻まずつくるべきだというものである。その結果、原研の動力試験炉は長期計画的なもので、そのほかに試験船をつくるべきだという議論がでる状態で混乱を起している。原子力委員会へのお願いとして、原子力船の開発計画を策定していただきたいと思う。

 石川委員:専門部会で案を練っていただいてよい計画をつくりたい。こちらからもよろしくお願いする。

 大屋参与:産業会議では、原子力船の開発に関しては基礎的な研究はやらないが、具体化するにはどの道が一番早いかを検討している。たとえば、調査団をつくって海外に調査に行くことも検討している。また、原研や運輸技研などで行う基礎的な研究のほかに、2〜3千トンの船を造ってそれによる実際的な研究も行いたいという民間の考えがあり検討している。

 島村課長:原子力船の開発計画は検討を進めるべきだと考えている。専門部会でも計っていただいて早急に策定したいが、とりあえずの計画は34年度予算のためにつくりたい。
 34年度の原子力船の予算に関して問題が二つある。一つはどの程度までを34年度にやるかということである。もう一点としては、運輸省の計画では現在のところ、国と民間とにわけ、国というのは運輸技研を中心に考えているようだが、今までの建前は、炉の関係は原研でやり船体は運輸技研でやるとしてきた。34年度まではまだよいだろうが、今度原子力船に投ずる予算額の増大するにつれてこの間の調整を考えねばならない。

 石川委員:運輸技研のスイミングプール炉は原研の敷地内に置きたいというものである。

 山県参与:運輸技研のスイミングプール炉は原研の動力試験炉と並行してくる。したがって、国の原子力船開発計画を確定し、現在の動力試験炉といっしょにスイミングプール炉を設置せねばならないという意義を出さなければ実現は困難である。この点検討してほ しい。

 岡野参与:原子力船の問題には特殊性があり早く船体を手がけておかないといざとなって間にあわない。100点満点のうち75点ぐらいになったら手をかけるべきである。

 兼重委員:原子力船舶用の原子炉は急激な負荷の変動に応ずる必要があるのでそういった特殊性を研究するということだが、それと小型の船で実験を急ぐということとはどういうつながりがあるのか。
 山県参与:長期計画と短期計画とを混同した考えから生じたものと思う。

(4)助成制度のあり方

 島村課長:初めて原子力予算のついた昭和29年以来補助金、委託費による助成制度が行われている。33年度はだいたい債務負担行為とあわせて6億円程度、そのうち今年度に使えるのは補助金2.5億円、委託費3千万円である。
 国としては一般的に補助金はなるべく減らすという方針があり、原子力関係の補助金、委託費の性格について難しい問題もあるが、原子力の開発のためある意味では効率的だと言えるのではないか。産業界の施設・人員を利用して割合に少ない資金で相当の成果が上っているので望ましい点もある。
 しかしながら、最近では民間企業がグループをつくり積極的に原子力の実用化にのりだすようになってきた。グループによってある程度の特色もあるが競争関係にたつ点もあるので、明らかに技術的な差があるときは別として、補助金を出したグループに特権を与えたようなことになる。もちろん各グループに万遍なく与えるのも策がないやり方である。補助金制度を続けることもある程度は必要であるが、以上のような問題があるので御検討を願う。

 堀課長:問題点の一つは5年間助成制度を続けるうちに情勢が大きく変化したことによる。29年に助成制度を始めたときはこの制度によらなければ原子力の研究をやるところがなかったが、今では自力でやろうという空気がかなりでてきた。研究内容にも変化があり、当初の重水とか黒鉛といった大きな問題はある程度の研究を終り、今では規模の小さいものが残るようになった。その結果企業が主体となって研究をやり助成制度は文字どおり補助的な働きをすることとなった。
 また、企業化をどうするかという問題も生じてきた。すなわち、助成によって研究が完結し生産に移れるものもあるが、そのなかには重水、黒鉛、放射線のフィルムバッジなどのように、どの企業も生産に移ろうとしないものがある。これらをそのままにしておけば、絶対的にもまた他国と比較して相対的にも技術が低下するという問題がある。企業化が行われない理由は、重水は原研の研究炉の組成材料として、また研究用としての需要が雨だれ式にある程度にすぎないからである。フィルムバッジは継続的な需要はあるが量が少なく、輸入するより高くつく。黒鉛はアメリカでテストしており、その結果がでればおそらく原電の1号炉に使えると思われるものの、その後の需要がはっきりしない。そのためどの企業も自力で黒鉛の製造にとりかかる気はないといっている。原電の1号炉に使用するには黒鉛の製造工場は来年のはじめに建設にとりかかる必要があるのでこれの助成策は早急に検討することを要する。
 なお、原子力船、核融合、重水の新しい製造法等の新しい問題がでており、これらは委託費を交付して研究を促進する必要があると思われる。

 茅参与:原研で必要な研究のうち民間でやれるものは民間にやらせてほしいという大屋参与のお話には賛成だが、今の助成制度の問題とはどういう関係があるか。

 堀課長:要望テーマの決定にあたり、原研と民間の意見を十分きいている。

 大屋参与:助成金の制度がある以上民間ではむやみに助成金をほしがるであろうが、元来日本の産業はいずれも需要がないという状況から出発し、企業の勇気で成長してきた。したがって、むしろ各企業の勇気でやることのほうが大事だというように企業を指導していくのがよいと思う。そのようにしても民間でやれないようなことが原子力の場合特殊な性格としてあると思うので、国による助成も必要だと思うがその範囲にとどめ、民間で独力でも競争してやろうとしているようなことに助成金を支出することは避けたほうがよいと思う。

 中泉参与:フィルムバッジの問題について申しあげる。ある民間企業が初めX線用のフィルムのバッジケースを助成金なしで工業化した。つぎに助成金の交付によりγ線用のフィルムとバッジケースを完成したがすこしも使われない。需要が少ない原因として二つある。まず、バッジを使う人はフィルムを evaluate してもらうために1回300円も費用を払わねばならないこと、つぎにバッジを使用者に提供しフィルムをevaluateするほうの人からいえば、保険や補償にものをいうので evaluation の結果は注意して保存し整理しておかねばならない。こういう面倒が考えられるので誰も手をださない。
 いままで、千代田レントゲンという小さい企業がやっていたがやめるといっている。何か公的な機関で経済的な負担がかからないようなやり方でやっていくようにしたい。
 フィルムバッジは電気試験所が所管している。その外郭団体に電気協会があり、フィルムバッジにのり気であるがどういうわけかなかなか実現しない。事情を調べてほしい。

その他

(1)英国の発電炉の設計変更に関する英国側の説明について
 資料2によって説明を行った。

 法貴次長:軍事用プルトニウム生産の場合を考えて多量の燃料の取替が可能なように取替用設備を増大したもので、発電用と軍事用プルトニウム生産の両用目的に変更したのではなく、やはり商業用発電をめざすものであるということである。

 佐々木局長:プラスの温度係数という欠陥をカバーするために今度の企画をしたのであれば、問題が大きいので調査した。調査した結果は、そういう原因ではなく、将来の軍事用に備えて操作のための設備を多少加える程度であり、日本によこすものは全然設計を変えないといっている。

(2)外人招聘の件
 石川委員:プラスの温度係数の問題のように、こちらでは不明なことがある。33年度に2人ほど外国から専門家を呼び知識を提供してもらおうと思う。ジュネーブ会議が間もないので、期日は11月ごろになると思うが、誰を呼ぶか適当な人があれば申し出てほしい。

 大屋参与:コックロフトはどうか。

 松根参与:やはり英国からがよいと思う。

 安川参与:コックロフトに来てほしいと一本松さんが手紙をだした。返事はまだこない。

 石川委員:原子力局の次長の考えではリズレーのカニンガムがよいということである。

 岡野参与:人を呼ぶときはその人の世界的な重要性を一般にもよく知らせておきたい。2人呼ぶとすれば発電関係とアイソトープ関係の専門家を呼ぶことになるかと思うが、できれば原子力船も考えてほしい。

(3)大学用原子炉について
 茅参与:原研のウォーターボイラー原子炉は大学が利用する余地がなくなるかと思われる。大学の教育用あるいは研究用として、大学はどういう設備をもつのがよいだろうか。今はまだよいが、そのうちにだいたいの目安がいるのではないか。すこし長い目で、大学および大学院の研究を考えて、委員会で取りあげてほしい。

 島村課長:端的にいえば、大学のもつ炉は case by caseで考えていく。

 茅参与:Case by caseとすると計画性がなくなる。原研の下につづく研究を行う大学として、こうあってほしいという考え方があってもよいと思う。

 佐々木局長:今までのところ大学側の希望を聞いてみても案外小さいので特に取りあげることは考えていない。いずれは国として何か体系づけたほうがよいと思う。

 茅参与:東大でもはっきりした計画は何ももっていない。さしあたり大学生の教育を考えるだけで、国の方針のようなものができるのをまって計画をねるつもりである。

(4)原子力アタッシェについて
 大屋参与:原子力アタッシェにはもっと予算をつけ有力な人を常駐させたい。

 篠原事務次官:外務省との調整が難しい。

 大屋参与:大使にそういう必要性がわかっていないのですか。

 篠原事務次官:大使にはわかっているが本省のほうがわかっていない。

 島村課長:原子力アタッシェは旅費を持たず資料を集める金もない。33年度は原子力アタッシェだけに若干の予算がついていたが、34年度からはそれもなくすると大蔵省ではいっている。何とかしなければいけない。

 大蔵省貝堀主計官:科学アタッシェにどれだけのWeight を置くべきかは外務省と科学技術庁とで話しあってもらいたい。経費が少ないことはわかっているが、実際は派手なほうに経費がいってしまうのでそれを改めたいと思う。防衛庁・外務省・科学技術庁の関係をひっくるめて、在外公館で使う機密費は8億円で決して少なくはなく、使い方の問題であると思う。その使い方を大蔵省からは指示しにくい。

 荒木課長:外務省出身者として申しあげるが、現在のように在外公館からの予算でアタッシェの十分な活躍を望むことは困難である。外務省とは別に、長期出張、滞在ということを研究すべきである。

 脇村参与:もっと地位の高い人を送り10年ぐらいは滞在するようにしないと効果はあがらない。今いる人達としては仕事は高く評価されている。

 安川参与:村田アタッシェはよくやってくれるがあれでは力がだせない。今度今井という若い人を行かせたが、外貨の割当がきわめて少ない。大蔵省は目的と職務を考えて外貨の割当をしてほしい。

 貝堀主計官:駐在員でなく渡航のみであれば規定がある。為替局に駐在員を許すよう交渉していただきたい。

 安川参与:駐在員を認めて貰えない。大蔵省はもっと理解してほしい。