原子力委員会参与会

第6回


〔日 時〕昭和33年6月19日(木)14.00〜17.00

〔場 所〕東京都千代田区永田町2の1総理官邸

〔出席者〕
 稲生、井上、大屋、岡野、久留島、瀬藤、高橋、田中、中泉、
 伏見、松根、三島、宮崎、山県各参与
 三木委員長、石川、菊池各委員
 石井政務次官、篠原事務次官、佐々木局長、法貴局次長、
 島村政策課長、荒木原子力調査課長、堀助成課長 ほか担当官

〔議 題〕
1.一般協定について
2.各専門部会の活動状況について
3.原子力関係科学者技術者の養成に関するアンケートについて
4.その他

〔配布資料〕
1.原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定
2.原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とグレートブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定
3.核燃料経済専門部会
4.原子力船専門部会
5.原子力委員会各専門部会
6.動力炉専門部会経過報告書
7.原子力関係科学者技術者に関するアンケートについて
8.第2回原子力平和利用国際会議について
9.第5回参与会議事録

新委員長の挨拶と新委員長への要望

 本日の議題を検討するに先だち、三木原子力委員長および石井政務次官から参与に対し新任の挨拶があった。

 三木委員長:原子力委員会委員長ならびに科学技術庁長官として原子力開発を推進すべく力をつくしていきたい。原子力が政府の施策の上にも現われ、民間の開発の意欲も積極的に出てくるように時代が進んできた。原子力の利用の具体化につれいろいろ問題が出てくると思うが、将来の日本のためあやまりのないようにやっていきたい。参与の皆様には今後とも、原子力の開発におほねおりをお願いする。

 石井政務次官:科学技術庁の政務次官としてできるかぎり原子力開発の進展に力をつくしたい。

 石川委員:なにか大臣にお願いなり御質問なりすることがあれば御発言していただきたい。

 大屋参与:私が一番年長のようなので産業人として発言させていただきます。後進国の日本として原子力開発はテンポが早いといえよう。日本原子力発電株式会社もできて実用も時日の問題である。しかしながらいっぽう理論的に原子力は危険だという説が学者からでている。われわれ産業人は原子力の実用化を急ぐことが日本の将来のためだと思っており、決して無考えで物参らしさでやっているのではない。日本の産業がさかんになったのはいつもスタートにおいて産業人の活躍があったものである。われわれはもう腰を上げるべき時代がきたと思っている。原子力の利用には放射能というしろうとにはわからないものがともなってくる。放射能の危険は十分注意しているから絶対に危害が起らないといってもあらゆる可能性を考えればあるかも知れないということになり、水掛論となりうる。こうしたことから一部で反対論が起り、時には開発が進みかねているので、もう心配はないのだというふうに方針をきめていただきたい。どうか原子力の災害に関して一日も早く国が確固たる方針をたてていただきたい。

 三木委員長:客観的な根拠を固めていきたい。はっきりした結論をだすべき時期だと思っている。

 瀬藤参与:通産省では原子炉の安全問題に関心を持ち、原子力発電の安全の問題を検討するために委員会がつくられたということである。原子力委員会にも安全審査専門部会と安全基準専門部会とがあって、昨日などは、われわれに出席するようにと原子力委員会と通産省と両方の会から通知をいただいた。どちらが重要なのかどちらに出るべきかわからないし、こういった問題によばれる人はだいたいきまっているので、どちらか一つで十分だと思われる。これは省と庁の間で十分連絡し、もし必要なら両方の連合でやるというようなことも考えてほしい。つぎに今日の議題にアンケートがでている。これは原子力関係の科学者や技術者を養成しようとするもので、もっと早くから原子力委員会でとりあげてよいものであったが、文部省のほうでも原子力委員会がやるのだろうと思っていたのかも知れない。前の問題と反対に共管の事がらを両方でゆずりあった結果となったが、省と庁との連絡がやはり不十分なものと思われる。こういった点を是正していっていただきたい。

 佐々木局長:安全基準部会を通産省が昨日開くことは聞いていなかった。今後こういうことのないようにしていく。通産省のほうとはときどき話合いはして連絡をとってきた。

 菊池委員:原子炉の設置の許可は委員会に属し、工事施工の許可は通産省に属するのだから、それぞれ直接に関連のあることを検討するようにすればダブらないようにできるのではないか。

 松根参与:通産省では電気・機械・原子炉・立地条件の四つの小委員会を設けるということで、原子力委員会の原子炉安全基準専門部会と実際にダブっている。直接間接に関連のあることをとりあげることになるからどうしても今のままではダブることになると考えられる。

 法貴次長:事務的に話し合ったところでは、ダブったことはしないようになっており、原子力委員会が検討する設置の許可に関する事がらは検討した結果を通産省に流すようになっている。

 岡野参与:造船、海運関係の方が少ないようなのでわたしから原子力船の計画について大臣にお話しし、この際、意を新たにしていただきたい。今日の原子力船は今から30年前にジーゼルの船が首をだした時と同じ境遇にある。日本の造船界の技術は世界に劣らないし、わたしの考えでは近い将来に世界における原子力船は在来の船に代って相当の比率を占めることになるであろう。したがって原子力船の開発をもうすこし積極的にやってほしい。原子力発電と原子力船とは2本の旗であるが、片方がすこし細いようである。

 伏見参与:数日前に新大臣にお手紙をさしあげたがお忙しいのでまだ読んでいただけないかと思われる。
 この間締結をみた一般協定についてであるが、いわゆる返還プルトニウムの平和利用の保証がわれわれの希望どおりでなかったのは残念である。外務省が非常に努力なさったのは感謝しているが、最後の段階で急にごまかされたような気がした。外交折衝が非常に難しかったであろうが、参与会あたりでわれわれにもうすこし経過をしらせていただければ、あるいは側面から援助できたのではないかと思う。つぎに第2回のジュネーブ会議が9月に行われることになっている。日本から提出される論文はすでにきめられているが、出席する人がまだきまっていない。ああいう重要な会議に出るには十分長い勉強をした人でないとにわか仕込みでいってもよい結果が期持できない。したがって会議に出席する人は誰でもよいというわけでなく、早く人選ができそうなものである。この点で外務省と原子力委員会との連絡が悪いのではないかと思う。

 三木委員長:一般協定に関しては返還プルトニウムの問題はこっちの主張が通らなかったが、諸外国が米国と結んだ協定にはなかった覚書が日米の協定にはついており厳密な考え方をする人はあきたらないかと思うが、あれで御容赦願いたい。あとの点に関してはごもっともでできるだけ早い機会にきめたい。

 松根参与:電力の状況は、だいたいの大勢から観察して量はあるがコストの上昇が押えきれないようである。この点からみて将来は原子力発電によらなければならないと考えている。これを進めるにはみなさんの賛成や協力を得なければならないところである。つぎに原子力だけの問題ではないが、原子力発電はエネルギー問題の一つである。電気・石油・石炭を総合した見地から経済企画庁で検討していただいて、単に統計の数字を集めたエネルギー白書ではなく産業界の知識をも集めた根本的なエネルギー対策をきめてほしい。

 三木委員長:エネルギー計画は10年、15年の将来を見通して、なにか松根さんのおっしゃったようなことを考えていきたい。

1.一般協定について
 6月16日に調印された日米一般協定および日英一般協定について宮崎参与(外務省国際連合局長)と佐々木局長から説明があり、質疑を行った。

 宮崎参与:特に報告する用意はしていないが、簡単に協定交渉の経過ならびに本文の考え方についてお話ししたい。
 日米協定は1年間、日英協定は9ヵ月ほどかかって交渉した。最初は先方がだした原案の各項目の含意等について質問書をだし解答を検討した。これが全体の1/3程度の時日を要している。つぎに先方の案に対する
 日本の対策をつくり、それと先方の案とをもとにして折衝した。この折衝の過程で問題になった点は多々あったが、米国は8ヵ国とすでに協定を結んでおり協定のヒナ型ができているので、日本との協定でもヒナ型からはずれ従来の例よりも日本に有利になるとすでに締結した国に対して都合が悪いということであった。
 しかしわれわれが交渉をかさねた結果、各国が獲得していないことであるが、日米の覚書と交換公文を付加して取りかわすことができた。交換公文のなかで特に日本に渡す材料や情報について最善の努力をしてよいものを渡すというのは今までに見られなかったことである。英国との協定においてはこれを本文にいれることに成功した。日本で照射した燃料を米国で再処理してもらう場合、再処理の場所が二つ以上考えられるときは、日本からみて費用の少なくてすむほうを選ぶということが日米の交換公文に書いてある。これらの点は日米または日英の一般協定が他のものに比してすぐれた点である。
 日本の原子炉内で生じたPuを米国に引き渡した場合、米国はそのPuを平和的利用にしか使用しないということについては、日米一般協定は不満足な形となったことは認めざるを得ない。これは米国が外国から買いもどしたPuは軍事に用いないという大統領令はあるが、大統領令は国内令であるから実際には軍事に利用される結果となることもありうるとして日本が抵抗してきたもので、米国としては国務省の覚書がそれに対してなしうる最大のものであるというので、結局それに落ちついたものである。一般協定の調印は6月16日に日米、日英ともいっしょに行われた。日英一般協定では昨年12月に免責条項の問題がでてきて交渉が停滞したが米国も英国も協定の締結を急いだ結果同時に調印できることとなった。
 あとは国会の批准が終れば協定は効力を発生することとなる。米国ではすでに協定が国会に提出され、あと1ヵ月たって議員から異議がでなければ成立する。他方英国のほうも問題はないようなので、日本が批准は一番遅れそうである。批准が遅れることについては米国、英国の了解をとっておけば問題はない。

 三木委員長:国会にはできだけ早く提出して批准を完了したい。

 佐々木局長:まず日米一般協定について、本文の第4条が無保証条項、第7条H項が免責条項となっており、両方とも似た性質のもので引渡しの後は受けたほうに責任があるとするものである。これに対し、供給した側の責任も残しておくべきだとする意見もあったが、日本だけが違う協定は結べないだろうという点、また細目協定におけるこれらの条項はすでに国会で検討し、認めているから問題はないのではないかという点が考えられ、本文の後の交換公文において米国は資料および材料の提供に最善の努力をするということを示して解決した。
 供給をうける濃縮ウランの量についても問題となった。最初は動力炉4基、舶用炉2基のほか研究炉の燃料も入れて7トンを10年間に供給してもらえるように申し込んだ。最終段階になって国会で問題となるかも知れないので7トンの根拠を説明できる資料がほしいと米国から言ってきた。将来採用される動力炉の型式、規模には問題があるので今考えられる最も確実なもののみをあげ2.7トンを要求することとなった。筏に必要となったらいつでも増額することができる。2.7トンというのは発電用15万kW 1基、動力試験炉および研究炉3基に使う燃料で、舶用炉は除外した。
 日本で照射した核燃料から生じたPuを米国に返還した場合、米国はそれを軍事に使用しないということについては宮崎参与からお話しをきいたとおりで、覚書に記載することができたのは米国が日本の特殊性を認めてくれたものである。
 保証措置に関連して日本が査察をうけることとなるので査察の内容が問題となったが、国際原子力機関と同じ考え方をしているということでやむをえぬものと了承した。日米原子力一般協定に関しては以上のごとくである。
 つぎに日英協定について、日英では最初に保障措置が問題となった。日本側では提供された燃料から生じた核分裂性物質の査察は1代かぎりとし孫まで査察をみとめなくてもよいのではないか。また日本の手で建設するかぎり設備すなわち原子炉は査察の対象からはずしてもよいのではないかと主張したが、国際原子力機関憲章の解釈もそうだからということで日本としては国際原子力機関の考え方が変れば両国の間で協議してきめることになっているからそのときに改めて問題とすることにした。
 英国側は12月にはじめて免責条項をもちこんできた。免責条項はたとえば原電が購入した燃料から生じた事故の賠償責任は日本政府がもてというもので、英国の裁判所がきめたとおりに無制限な金額を払うことが考えられるので問題となった。これに対しては燃料を受けとる際に事故が発生しないように十分検査することとし、英国が最善の努力でよいものをくれようとしている点があり、また英国の国内法ができ国際原子力機関の考え方が変ってくれば協議するということで了承した。

2.各専門部会の活動について
 資料3、4、5、6により原子力局法貴次長から各専門部会の活動状況を報告した。

 三島参与:核燃料専門部会と金属材料専門部会との両方に関係しているが、英国との協定について御説明があったように燃料をうけとるときの検査が重要になってきたと思われる。
 英国からの動力炉の導入が順調にいくことを考え、検査を行う技術者の養成を間にあわせるよう早めに討論していきたい。

 田中参与:原子炉に関する安全問題としては、事故に対する安全と常時運転に関する安全とがある。正常運転時における放射能の影響については、さきほど大屋参与のおっしゃったようなある程度検討しておいてそれ以上の危険はないものとふみきるというような方針はとれないのではないか。すなわち、放射能の影響は遺伝上の問題も考えねばならず、たとい微量でも影響がありうるので、国の立場からここまでは安全だということはいえないのではないか。結論をむやみに急ぐべきでないと思う。

 大屋参与:原子力の平和利用はその進展をあらゆる方法で援助していくべきであって、安全問題があるからといってやたらにおどかしてもだめになる。

 田中参与:原子炉安全基準専門部会には医者の数がな少ないように思う。

 山県参与:関西の大学用原子炉について専門部会で意思表示をする必要があるのではないか。

 石川委員:まだ委員会に申請のこない状況である。

3.原子力関係科学者技術者の養成に関するアンケートについて
 資料7に従って島村政策課長から説明を行った。

 島村課長:従来から原子力関係で将来必要となる科学者技術者の養成計画をつくる必要があると各方面からも聞いていた。委員会でもだいたいの想定を行ってみたりしたが、本格的な計画をつくるには関係方面に技術者の必要数を聞いてみねばならない。せっかくやるからには考えられるうちで最もよい方法でやりたいと思い、今回の案をつくったものである。アンケートのような事がらで煩わすのは恐縮であるが御検討をお願いする次第である。
 このアンケートによる調査で難しい点は、現状だけを調べては意味がないので将来の見通しをも聞くがそれにともない不確定な要素が入ってくることである。各企業に将来必要となる技術者数の見込みを回答してもらい、それを単に集計しても意味がなく各企業の事業計画をある程度聞いてそれにこちらの統一ある考え方を加味して加えたり引いたりせねばならない。その場合、各企業において将来の計画がはっきりたてられていると期待しがたいので、その点からも不確定さが増すと思われる。それにしても一応企業や機関、大学等の考えをアンケートによって聞けば、なにか得られることと思われる。

 松根参与:アンケートの対象としては何社ぐらいを考えているか。

 島村課長:産業界に出すアンケートについては産業会議の考えにお任せすることになっているが、6〜700社ぐらいと考えられる。そのほか大学が約500、国立機関が約100あるので、それにもアンケートを配るつもりである。大学にアンケートの回答を求めたり、アンケートの質問項目中に高校や大学の講座に関する希望をのべてもらうつもりもあるので、文部省とは十分相談しており、大学関係については文部省に御協力をいただくことになっている。
 結果の集計は産業会議に産業界に関するものの一部について集計をお願いできるようだが、その他は原子力局で集計するつもりである。

 瀬藤参与:こういったものは、養成すべき人員の桁数にメドをつけるという意義がある。得られた結果についてもう一つ注意したいことは、原子力関係の実際の事業をやっている部門は人数を多目にほしがるし、研究機関とか金融部門では控え目の予想をしたがるという傾向のあることである。

 山県参与:炉その他の検査要員は通産省や運輸省におくのですか。

 島村課長:そうです。

 伏見参与:瀬藤さんは東大でこういったアンケートをなさったことがあるそうだが。

 瀬藤参与:工学部でサンプリングでやったことがある。文部省から資金をもらって、年々理工科系はこれくらい不足し、文科系はこれくらいあまるという警告的な結果がでた。そのときは、将来日本の産業構造はこうなるべきだとか、こうなるだろうとかいった産業の体質改善の考えはいれないでやった。

 石川委員:今度の案では報告を求めるのは33年3月現在の数字を回答してもらうこととなっているが、4月1日あたりに新卒が採用されたはずだから4月の数字で答えてもらったはうがよいのではないか。

 島村課長:案をつくったのは3月ごろだったが、今から考えると4月を入れたほうがよいと思う。

4.ジュネーブ会議について
 資料8により荒木原子力調査課長が第2回原子力平和利用国際会議について説明した。

 伏見参与:会議に出席する人はいつきめるのか。

 島村課長:発表論文がきめられないうちに早くきめてしまうと論文の発表をする人がもれるおそれがある。発表者を確保する意味でまだきめていない。結局最終決定は7月末になる見込みである。

 伏見参与:各国から集まった論文のアブストラクトがジュネーブから送られてきたということだが、一般にも早く読めるようにしてほしい。

 荒木課長:部数も少なく各方面に一様におくばりするに至っていない。論文の数も2,400篇ほどでまだ検討中である。

5.その他

 松根参与:英国は動力炉の設計を変更してPuをつくるということだが、正確な情報を教えてほしい。

 佐々木局長:原子力委員会として向こうの回答を求めているところである。

 大屋参与:コールダーホール型動力炉ではPuが増加すると温度係数がプラスになって原子炉が不安定になるということを新聞はしきりに報道している。これに対して原子力委員会はどう考えているか。

 法貴次長:その問題についてはわれわれ調査団(今年1〜2月渡英した原電の発電炉購入の交渉団を示す)が英国に行ったときも非公式にきいたことがある。その後はっきりしたデーターはないが、原子力発電株式会社のほうでも問題を検討している。Puができてくるにつれてプラスの温度係数に転換するのは考えられることだがそれまでの経過が問題である。グラファイトの温度が上らないと中性子の温度も上らないわけだから、プラスの温度係数になるまでには時間がかかることになる。、この時間がコントロールロッドによる制御を可能にするだけ長いと考えられるので、すぐ危険だと判断すべきではない。

 大屋参与:専門家がみてこういうわけだから大丈夫だという説明を発表してもらうとよい。それがないと一般の人が誤解するから啓蒙の意味でやってほしい。

 石川委員:今年の7月末に英国からテンダーがくるまでははっきりいえない。

 岡野参与:一般のしろうとは役所のいうことを信用する。こういうふうに問題を検討した結果この程産まで事情が明らかになったからふみきるべきだということを主張してほしい。100%安全でなければ安全でないといういい方があるが、そういうところはコモンセンスでふみきるべきだ。

 大屋参与:耐震構造についてはひと安心しているが、Puのことはわからないので一般の人は本当に危険かと思う。公平な第三者の立場からこういうものだという考えをだしてほしい。

 田中参与:コモンセンスでふみきるといわれたが、10年間原子炉を使ってみてはじめてコモンセンスがいえるのではないか。

 岡野参与:わたしがいうコモンセンスを解決しようというのではなく、学者のいう理論とは別だからある程度まで研究したのちは政治とか産業とかいうプラクティカルなものはふみきることが必要で、それがコモンセンスである。

 大屋参与:むやみにいい結論をだしてくれというのではない。

 岡野参与:Puの正の温度係数の問題にしても英国から見積りがきてもはっきりしたことのいえる見積りはこないのではないか。なにもいわないで一般の人に疑問をいだかせるよりコモンセンスでいってほしい。

 菊池委員:大屋さんや岡野さんのおっしゃることはわかるが、十分検討した上でいわないと軽卒となり、知っている人にあげ足をとられることになる。一般的には、原子力平和利用については英、米はすこしの懸念があってもやるというところがみえ、わたしももうふみきってよいと思う。しかし問題によっては、もっと科学的に分析する必要があるのはもちろんである。

 岡野参与:Silence is gold という言葉があるが silverぐらいにしてもっと発言してほしい。

 瀬藤参与:ロンドンとワシントンにいる原子力アタッシェは予算が不足して十分に活動ができないときいているが。

 島村課長:原子力のアタッシェをだそうというのは正力大臣の発案で1人あたり1千万円という案だったがそうもいかず、ただ若干の特別の予算がついていた。各省とも大使館員としてアタッシェをだしているので、原子力だけがプラスアルファをとっているのは大蔵省としては困るということで予算上の特別措置はなくなった。根本的な解決は今のままでは無理である。しかし、情報官として派遣されている以上、アタッシェはじっとしているわけにはいかない。日本にいる人はシッピングポートをみてきたがアタッシェはみていないことになりはしないかと心配される。

 伏見参与:昨日の新聞では増殖炉を開発する計画を変更するということだが。

 法貴次長:はっきりした話しではない。日本原子力研究所と打合せ会をやったが原研で36年なかばごろに数千kWの増殖炉の設計をはじめることは、研究を集中的にやれば可能かもしれないが、他の重要な研究もやると間にあわぬかもしれないという話しがあった。まだ長期計画の変更としてとりあげる段階ではない。

 島村課長:長期計画がずさんで委員会が独走しているというそしりをうけるが、増殖炉の開発の問題は原研の考えを聞いたものである。今後のことは来年度になにを原研でやるかを検討したもので、長期計画の改訂とは別の問題と考えてほしい。