昭和33年度核原料物質探鉱計画


 核原料物質開発促進臨時措置法第3条により、通商産業省および原子燃料公社が行う探鉱の合理的な実施を図るため、毎年原子力委員会の議決を経て核原料物質探鉱計画を定めることとされているが昭和33年度核原料物質探鉱計画については、さる4月25日開催の第17回定例委員会において以下のとおり議決された。

昭和33年度核原料物質探鉱計画

 昭和33年における核原料物質の探鉱については、前年度に引き続き通商産業省地質調査所が基礎的調査を実施し、その成果にもとづき、原子燃料公社が民間企業と調整をとりつつ効果的に企業化調査を実施し、国内資源の早急な開発を期するものとする。

1.通商産業省地質調査所が行う探鉱
 わが国において、核原料資源の賦存の可能性が最も大きく、また現在までに発見された主要な鉱床の多くが属している地域は、酸性迸入岩地域およびその周縁部並びに水成岩地域である。このような地域のうち約80,000平方キロメートルを対象として、昭和31年度から3ヵ年計画をもって、組織的に放射能強度分布調査、放射能異常地調査および鉱床調査を実施しているが最近にいたりようやく顕著な成果を収めてきた。本年度はその第3年目として下記により調査を実施し、当初3ヵ年計画に予定した地域の調査を一応終了するものとする。
 なお、上記地域以外の地域において、核原料物質の存在する鉱床が各所に発見されている現状にかんがみ、さらに調査範囲を拡大し、昭和34年度以降においても継続してこの種の調査を実施する必要が認められるので、本年度において基礎的資料を収集、検討する。(1)放射能強度分布調査
 約31,000平方キロメートルの地域にわたって、エアボーン、カーボーンおよび地表概査等により、放射能の水平的分布を調査するほか、本年度においては、新たに核原料物質が存在する見込みの強い鉱床型式を具備している主要な鉱山を対象として、坑内調査により放射能の垂直的強度分布を調査する。

(実地地域)

(イ)エアボーンおよびカーボーン
  岩手、山形、京都、奈良、島根、広島、山口各府県下等

(ロ)地表概査および鉱山坑内調査
  北海道北部および南部、岩手原北部・東南部および西部、山形県北部、埼玉県西部、新潟県北部、北アルプス地域、岐阜県西部および北部、兵庫県中部、奈良・和歌山県境、岡山県南部および北部、広島県中部および中南部、徳島・香川県境、福岡県東北部および西部、佐賀県中部、長崎県対州、鹿児島県西部および東南部等

(2)放射能異常地調査および鉱床調査
  放射能強度が特に異常な地域については、地質鉱床調査、物理探鉱、地化学探鉱、試錐探鉱等を実施し、鉱床型式、地質構造等の概要を明らかにして、今後の探鉱に関する基礎資料を得るとともに、地質鉱床学的調査研究を推進する。
 実施地域としては、前年度までの放射能強度分布調査の結果にもとづき下記地域を予定するほか、本年度における調査の結果にもとづき適宜追加する。

(実施地域)
  北海道北部、岩手県北部、山形県西部、宮城県南部、岐阜県西部および北部、鳥取県東部、島根県西部、岡山県中部および西部、山口県中部、鹿児島県南部等

2.原子燃料公社が行う探鉱
 昭和31年度および32年度の成果にもとづき、本年度は探鉱箇所および探鉱方法等に適宜取捨選択を加えるとともに、特に人形峠鉱山に重点をおき、下記により探鉱を実施するものとする。

(1)人形峠鉱山
 現在までの調査により、品位、鉱量とも相当に期待することができ、鉱床はさらに東方へ広範囲に賦存することが予想されるので、地質鉱床精査、物理探鉱、地化学探鉱、試錐探鉱等によりその広がりを確認するとともに、坑道探鉱により品位、鉱量等を推定し、すみやかに開発しうるようにつとめる。

(2)倉吉鉱山
  前年度に引き続き、坑道探鉱および試錐探鉱により鉱床深部の探鉱を行い、既知鉱床の品位、鉱量等を推定するとともに、地質鉱床精査、物理探鉱、地化学探鉱等により平行脈の存否を確かめる。

(3)岩手県久慈南方地区、山形県鶴岡南方地区、宮城県気仙沼周辺、岐阜県中津川北方地区、岡山県倉敷北方地区および山口県防府北方地区等
  前年度において小規模に探鉱を実施した地区であるが、本年度は地質鉱床精査、物理探鉱、地化学探鉱等を組織的に行うとともに、試錐探鉱、坑道探鉱等を併用して、鉱床の実態を把握する。

(4)その他の地区
  通商産業省地質調査所等の調査の結果、新たに企業化の適否について調査を実施する必要が認められる地区については、随時地質鉱床精査、物理採鉱、地化学探鉱等を実施して、価値の把握に努める。