放射性同位元素等による放射線障害の
防止に関する法律施行令


(昭和33年1月24日公布政令第14号)

 内閣は、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和32年法律第167号)第2条第2項から第4項まで、第3条第1項、第4条第1項、第6条第一号から第三号まで、第7条第一号から第三号まで、第10条第2項、第11条第2項、第35条第1項第二号、第43条第4項及び第49条の規定に基き、この政令を制定する。

目次
第1章 放射性同位元素等の定義(第1条−第3条)
第2章 許可の申請(第4条−第7条)
第3章 使用施設等の基準(第8条−第11条)
第4章 放射線取扱主任者の認定(第12条)
第5章 雑則(第13条・第14条)
附則

第1章 放射性同位元素等の定義

(放射性同位元素)
第1条 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(以下「法」という。)第2条第2項の放射性同位元素は、放射線を放出する同位元素及びをの化合物並びにこれらの含有物で、放射線を放出する同位元素の数量が科学技術庁長官が定める数量をこえるものとする。ただし、次に掲げるものを除く。

一 原子力基本法(昭和30年法律第186号)第3条第二号に規定する核燃料物質及び同条第三号に規定する核原料物質

二 薬事法(昭和23年法律第197号)第2条第4項に規定する医薬品

(放射性同位元素装備機器)
第2条 法第2条第3項の放射性同位元素装備機器は、次に掲げる機器とする。ただし、装備している放射性同位元素の数量が科学技術庁長官が定める数量以下である機器並びに第一号、第二号及び第九号に掲げる機器にあっては、薬事法第2条第6項に規定する用具で科学技術庁長官が厚生大臣又は農林大臣と協議して指定するものを除く。

一 放射線照射装置(装備している放射性同位元素の数量が100ミリキュリーをこえる放射線照射機器をいう。)

二 放射線照射器具(装備している放射性同位元素の数量が100ミリキュリー以下の放射線照射機器をいう。)

三 厚み計

四 液面計

五 積雪計

六 地下検層計

七 静電気測定器

八 静電気除去器

九 ラドン採集器

十 放射線測定器具の較正器

十一 その他放射性同位元素を装備している機器で、放射線障害の防止のため必要と認めて科学技術庁長官が指定するもの

(放射線発生装置)
第3条 法第2条第4項の放射線発生装置は、次に掲げる装置とする。

一 サイクロトロン

二 シンクロトロン

三 シンクロサイクロトロン

四 ベータートロン

五 直線加速装置

六 ファン・ド・グラーフ型加速装置

七 コッククロフト・ワルトン型加速装置

八 その他荷電粒子を加速することにより放射線を発生させる装置で、放射線障害の防止のため必要と認めて科学技術庁長官が指定するもの

第2章 許可の申請

(使用の許可の申請)
第4条 法第3条第1項の許可は、工場又は事業所ごとに受けなければならない。

2 前項の許可を受けようとする者は、予定使用期間その他総理府令で定める事項を記載した書類を添えて、申請しなければならない。

(販売の業の許寸の申請)

第5条 法第4条第1項の許可は、販売所ごとに受けなければならない。

2 前項の許可を受けようとする者は、放射性同位元素の種類ごとの年間販売予定数量その他総理府令で定める書類を添えて、申請しなければならない。

(使用に係る変更の許可の申請)

第6条 使用者は、法第10条第2項の規定による変更の許可を受けようとするときは、総理府令で定めるところにより、次の事項を記載した申請書を科学技術庁長官に提出しなければならない。

一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

二 工場又は事業所の名称及び所在地

三 変更の内容

四 変更の理由

五 工事を伴うときは、その工事計画

(販売の業に係る変更の許可の申請〉

第7条 販売業者は、法第11条第2項の規定による変更の許可を受けようとするときは、総理府令で定めるところにより、次の事項を記載した申請書を科学技術庁長官に提出しなければならない。

一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

二 販売所の所在地

三 変更の内容

四 変更の理由

五 工事を伴うときは、その工事計画

第3章 使用施設等の基準

(使用施設の基準)
第8条 法第6条第一号の規定による使用施設の位置、構造及び設備の技術上の基準は、次のとおりとする。

一 使用施設は、地くずれのおそれの少い場所に設けること。

二 使用施設は、浸水のおそれの少い場所に設けること。ただし、放射線発生装置の使用施設については、この限りでない。

三 建築物(建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第一号に規定する建築をいう。以下同じ。)である使用施設の主要構造部(建築基準法第2条第五号に規定する主要構造部をいう。以下同じ。)は、耐火構造(建築基準法第2条第七号に規定する耐火構造をいう。以下同じ。)又は不燃材料(建築基準法第2条第九号に規定する不燃材料をいう。以下同じ。)その他の不燃性の建築材料を用いた構造とすること。ただし、科学技術庁長官が定める種類及び数量の放射性同位元素を使用する場合には、この限りでない。

四 使用施設には、放射線を有効にしやへいすることができるしやへい壁その他のしやへい物を設けること。

五 人が常時出入する使用施設の出入口は、1箇所とすること。

六 放射性同位元素、放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置を使用する室には、総理府令で定めるところにより、標識を附すること。

七 放射性同位元素又は放射線発生装置を使用する室(放射線発生装置にあっては、放射性同位元素を製造する場合に限る。以下「作業室」という。)は、次の構造とすること。

イ 作業室の内部の壁、床その他放射性同位元素によって汚染されるおそれのある部分は、突起物、くぼみ及び仕上材の目地等のすきまの少い構造とすること。

ロ 作業室の内部の壁、床その他放射性同位元素によって汚染されるおそれのある部分の表面は、平滑であり、気体又は液体が浸透しにくく、かつ、腐食しにくい材料で仕上げること。

ハ 作業室には、次に定めるところにより、換気設備(排風機、排気浄化装置、ダクト、給気口その他放射性同位元素によって汚染された空気を換気し、又は浄化する一連の設備をいう。以下同じ。)を設けること。ただし、科学技術庁長官が定める種類及び数量の放射性同位元素を使用する場合には、この限りでない。

イ 換気設備は、排出口における排気中の放射性同位元素の濃度を科学技術庁長官が定める許容濃度(以下「最大許容空気中濃度」という。)の10分の1以下とする能力を有するものであること。ただし、排出口における排気中の放射性同位元素の濃度を最大許容空気中濃度の10分の1以下とすることが著しく困難である場合において、放射線監視設備の設置その他放射線障害の防止に関し特別の措置を講ずることによって放射線障害の発生するおそれがないと認められるときは、この限りでない。

ロ 換気設備は、作業室内の人が常時立ち入る場所における空気中の放射性同位元素の濃度を最大許容空気中濃度以下とする能力を有するものであること。

ハ 換気設備(給気口を除く。)は、気体のもれにくい構造とし、腐食しにくい材料を用いること。

ニ 換気設備には、その故障が生じた場合において放射性同位元素によって汚染された空気のひろがりを急速に防止することができる装置を設けること。

ホ 換気設備(給気口を除く。)には、総理府令で定めるところにより、標識を附すること。

九 放射性同位元素を使用する場合又は放射線発生装置を使用して放射性同位元素を製造する場合にあっては、次に定めるところにより、放射性同位元素による汚染の検査及び除去を行う室(以下「管理室」という。)を設けること。ただし、科学技術庁長官が定める種類及び数量の放射性同位元素を使用する場合には、この限りでない。

イ 管理室は、人が常時出入する使用施設の出入口の附近等放射性同位元素による汚染の検査及び除去を行うのに最も適した場所に設けること。

ロ 管理室の内部の壁、床その他放射性同位元素によって汚染されるおそれのある部分は、突起物、くぼみ及び仕上材の目地等のすきまの少い構造とすること。

ハ 管理室の内部の壁、床その他放射性同位元素によって汚染されるおそれのある部分の表面は、平滑であり、気体又は液体が浸透しにくく、かつ、腐食しにくい材料で仕上げること。

ニ 管理室には、少くとも、放射線測定器、洗浄設備及び更衣設備を設けること。

ホ 管理室には、総理府令で定めるところにより、標識を附すること。

十 工場又は事業所内において放射線量率及び空気中の放射性同位元素の濃度が科学技術庁長官が定める許容度の10分の1をこえるおそれのある場所には、境界さくその他人がみだりに立ち入らないようにするための施設を設け、かつ、総理府令で定めるところにより、これに標識を附すること。

2 前項の規定は漏水の調査、こん虫の疫学的調査、原料物質の生産工程中における移動状況の調査等放射性同位元素を広範囲に分散移動させて使用し、かつ、その使用が一時的である場合には、適用しない。

3 第1項第一号から第六号までの規定は、装備している放射性同位元素の数量が100ミリキュリー以下の放射性同位元素装備機器を使用する場合及び装備している放射性同位元素の数量が100ミリキュリーをこえる放射性同位元素装備機器を随時移動させて使用する場合には、適用しない。

4 第1項第一号及び第三号から第九号までの規定は、放射線発生装置を随時移動させて使用する場合には、適用しない。

(貯蔵施設の基準)
第9条 法第6条第二号及び法第7条第二号の規定による貯蔵施設の位置、構造及び設備の技術上の基準は、次のとおりとする。

一 貯蔵施設は、地くずれ及び浸水のおそれの少い場所に設けること。

二 貯蔵施設は、貯蔵室、貯蔵箱等外部と区画された構造の施設とすること。

三 建築物である貯蔵室の主要構造部は、耐火構造又は不燃材科その他の不燃性の建築材料を用いた構造とすること。ただし、科学技術庁長官が定める種類及び数量の放射性同位元素を貯蔵する場合には、この限りでない。

四 貯蔵施設には、放射線を有効にしやへいすることができるしやへい壁その他のしやへい物を設けること。

五 人が常時出入する貯蔵施設の出入口は、1箇所とすること。

六 貯蔵施設のとびら、ふた等外部に通ずる部分には、かぎその他閉鎖のための設備又は器具を設けること。

七 貯蔵施設には、総理府令で定めるところにより、標識を附すること。

八 貯蔵施設には、次に定めるところにより、放射性同位元素を入れる容器を備えること。

イ 容器の外における空気を汚染するおそれのある放射性同位元素を入れる容器は、気密な構造とすること。

ロ 液体状の放射性同位元素を入れる容器は、こぼれにくい構造とし、浸透しにくい材料を用いること。

ハ 液体状又は固体状の放射性同位元素を入れる容器で、きれつ、破損等の事故の生ずるおそれのあるものには、受皿、吸収材その他放射性同位元素による汚染のひろがりを防止するための施設又は器具を設けること。

ニ 容器には、総理府令で定めるところにより、標識を附すること。

九 工場又は事業所内において放射線量率が科学技術庁長官が定める許容線量率の10の1をこえるおそれのある場合には、境界さくその他人がみだりに立ち入らないようにするための施設を設け、かつ、総理府令で定めるところにより、これに標識を附すること。

(廃棄施設の基準)
第10条 法第6条第三号及び法第7条第三号の規定による廃棄施設の位置、構造及び設備の技術上の基準は、次のとおりとする。

一 廃棄施設は、地くずれ及び浸水のおそれの少い場所に設けること。

二 液体状の放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染された液を流す場合には、次に定めるところにより、排水設備(排水管、排液処理槽その他液体状の放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染された液を排水し、又は浄化する一連の設備をいう。以下同じ。)を設けること。

イ 排水設備は、排水口における排液中の放射性同位元素の濃度を科学技術庁長官が定める許容濃度(以下「最大許容水中濃度」という。)の10分の1以下とする能力を有するものであること。ただし、排水口における排液中の放射性同位元素の濃度を最大許容水中濃度の10分の1以下とすることが著しく困難である場合において、放射線監視設備の設置その他放射線障害の防止に関し特別の措置を講ずることによって放射線障害の発生するおそれがないと認められるときは、この限りでない。

ロ 排水設備は、排液のもれにくい構造とし、排液が浸透しにくく、かつ、腐食しにくい材料を用いること。

ハ 排水管には、総理府令で定めるところにより、標識を附すること。

ニ 排液処理槽は、排液を採取することができる構造又は排液中における放射性同位元素の濃度が測定できる構造とし、かつ、その出口には、排液の流出を調節する装置を設けること。

ホ 排液処理槽の上部の開口部は、ふたのできる構造とするか、又はその周囲にさくその他人がみだりに立ち入らないようにするための施設を設け、かつ、総理府令で定めるところにより、これらに標識を附すること。

三 放射性同位元素によって汚染された物を焼却する場合には、次に定めるところにより、焼却炉を設けること。

イ 焼却炉は、気体がもれにくく、かつ、灰が飛散しにくい構造とすること。

ロ 焼却炉には、さくその他人がみだりに立ち入らないようにするための施設を設け、かつ、総理府令で定めるところにより、これらに標識を附すること。

四 前号の場合において、焼却炉の排出口における排気中の放射性同位元素の濃度が最大許容空気中濃度の10分の1をこえるおそれがあるときは、第8条第八号イからホまでの規定に準じて換気設備を設けるか、又は焼却炉の排出口を作業室の換気設備に連結すること。

五 液体状若しくは固体状の放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染された物を第二号及び第三号に規定する方法以外の方法で廃棄する場合には、次に定めるところにより、容器を備え、かつ、その容器を保管する設備を設けること。

イ 容器又は容器を保管する設備は、放射線を有効にしやへいすることができるものであること。

ロ 容器は、これに入れた放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染された物が浸透しにくい材料を用いること。

ハ きれつ、破損等の事故の生ずるおそれのある容器には、吸収剤その他放射性同位元素による汚染のひろがりを防止するための施設又は器具を設けること。

ニ 容器には、総理府令で定めるところにより、標識を附すること。

ホ 容器を保管する設備には、さくその他人がみだりに立ち入らないようにするための施設を設け、かつ、総理府令で定めるところにより、これらに標識を附すること。

(詰替施設の基準)
第11条 第8条第1項の規定は、法第7条第一号の規定による詰替施設の位置、構造及び設備の技術上の基準について準用する。

第4章 放射線取扱主任者の認定

(認定の基準)
第12条 法第35条第1項第二号の規定による認定は、第一号又は第二号に該当する者で、放射線の取扱又はその管理の業務に通算して3年以上従事したものについて行うものとする。

一 学校教育法(昭和22年法律第26号)による大学(短期犬学にあっては、科学技術庁長官が指定するものに限る。)、旧大学令(大正7年勅令第388号)による大学若しくは旧専門学校令(明治36年勅令第61号)による専門学校において理科系統の正規の課程を修めて卒業した者又はこれと同等以上の学力を有すると認められる者

二 診療エックス線技師法(昭和26年法律第226号)に基く免許を有する者


第5章 雑則

(放射線検査官の定数及び資格)
第13条 放射線検査官の定数は、20人とする。

2 放射線検査官は、放射線障害の防止について相当の知識及び経験を有する者でなければならない。

(手数料)
第14条 法第49条の規定により納付すべき手数料の額は、次の表のとおりとする。

附則

(施行期日)
1 この政令は、昭和33年4月1日から施行する。ただし、第12条の規定及び第14条中放射線取扱主任者に係る部分は、公布の日から施行する。

(経過規定)
2 法附則第2項の規定により法第3条第1項の許可を申請する者については、昭和34年9月30日までの間は、第8条第1項第三号、第八号及び第九号、第9条第三号並びに第10条第二号(同号ロ、ハ及びホを除く。)及び第四号の規定は、適用しない。

3 法附則第2項の規定により法第4条第1項の許可を申請する者については、昭和34年9月30日までの間は、第9条第三号、第10条第二号(同号ロ、ハ及びホを除く。)及び第四号並びに第11条において準用する第8条第1項第三号、第八号及び第九号の規定は、適用しない。

(科学技術庁組織令の一部改正)
4 科学技術庁組織令(昭和31年政令第142号)の一部を次のように改正する。第13条第三号中「障害防止の基本」を「障害防止」に改める。