核融合反応研究の開始決定

 ジュネーブにおける第1回原子力平和利用国際会諸においてバーバ博士の予言がなされて以来、それまで世界各国において秘密裡に進められていた核融合反応に関する研究がすこしずつ明らかになってきた。特にソ連のクルチャトフ教授の研究が発表され、英国がゼータを、米国がステラレーターを発表するにおよんで次第に世界の注目をあつめるようになった。
 わが国においても大阪大学工学部において超高温の研究が進められており、その他にも数種の新しい着想が発表されている。また理論的な面に舞いても基礎物理学上の豊富な基盤に立ってすぐれた研究が発表されている。
 原子力委員会においては昭和32年度には原子力研究所に核融合に関する調整を行うための経費として数十万円を計上した。また上述のような状況にもとづき昭和32年2月、10月の2回にわたって核融合懇談会を開き、各方面の意見を聴取した(本誌第2巻第12号9ページ参照)が、 この結果にもとづき同年12月18日開催の第49回原子力委員会において次のような決定が行われた。
 「わが国における核融合反応に関する研究は現在のところ初期的調査の域を脱しないが、核融合反応制御の完成によってもたらされる偉大な効果および欧米諸国における研究状況より見てわが国においても核融合反応に関する研究を早急に開始すべきである。」
 これの具体策としてさしあたっては昭和32年度委託研究費の要望課題として「核融合反応を目的とした超高温プラズマに関する研究」をとりあげ、昭和33年1月10日から1月31日までの間に公募し目下審査中である。
 また電気試験所に超高温プラズマに関する研究費2,000万円を原子力予算として要求している。