原子力委員会参与会

昭和32年第11回

日時 昭和32年12月19日(木)午後2時~5時
場所 東京会館
出席者
 稲生、大屋、岡野、菊池、駒形、瀬藤、高橋、中泉、松根、三島、安川、脇村、大来各参与
 正力委員長、石川、藤岡、兼重各委員
 吉田政務次官、佐々木原子力局長ほか

議題
(1)原子炉等規制法および放射線障害防止法関係政令、府令について
(2)その他

配布資料
(1)発電用原子炉開発のための長期計画
(2)核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の施行期日を定める政令(政令第323号)
(3)核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令(政令第324号)
(4)核燃料物質、核原料物質及び原子炉の定義に関する政令(政令第325号)
(5)核原料物質又は核燃料物質の製錬の事業に関する規則
(6)核燃料物質の加工の事業に関する規則
(7)原子炉の設置、運転等に関する規則
(8)核燃料物質の使用等に関する規則
(9)放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する諮問について(答申)
(10) 第10回参与会記録

議事内容
 佐々木局長:原子力関係の法律としては、原子炉等規制法と障害防止法とが今春の国会を通過した。そのうち原子炉等の規制に関する法律は、法律が通って半年後に実際の効力を発するということで、そのために必要となってくる政令、府令および省令を今回決定し、資料としてお手もとに届けてある。障害防止法は一ヵ年経って33年の4月1日に効力を発する。したがってこのほうに関連する政令、府令等はまだ公布には至っていないが、案としてお配りしてある。
 石川委員:皆様の御意見をかねてからうかがっていた長期計画が昨日でき上ったので、御説明申し上げる。

 島村課長:昨日の委員会で長期計画を決定したが、前回お見せした案と違ったところを申しあげる。
 1.案では全体を10章にわけて書き並べていた。しかし、長期計画としてどこまでが目標的なものであり、どこまでが真の計画なのか不明確だという意見があったので、今回決定した長期計画は全体を三つにわけて、その点をはっきりさせた。すなわちI,II,IIIと分類して、Iは前提のような部分であり、これは新長期経済計画の考え方をかなりとりいれている。本計画の中枢はIIであって、これは発電用原子炉の国産化計画、動力試験炉計画、研究炉の設置計画等の基本的方針をのべている。最後にIIIでは発電炉の開発を行ったときの影響をのべている。
 2.ほかから引用した数字と原子力委員会で考えた数字とがはっきり区別しないでかかげてあること、また試算の数字が断定的な表現で示されていることが指摘されたので、その点を改めた。
 次に細かい点で変ったところは、
 3.新長期経済計画が閣議決定されたので関連する数字はそれにあわせた。
 4.案では原子力発電の目標として、昭和40年度までに90万kWというテンポを考えていたが、初めのうちはもっと開発量を少なくしたほうがよいという御意見をいれて、昭和40年度までは60万kWとした。減らした30万kWは45年以降に加えたので、50年度までに705万kWという全体の規模は変らない。
 5.発電炉の型式については、天然ウラン型に重点をおきすぎるという御意見あるいは初期の段階では天然ウラン型ばかりやるようにとれるという御意見があったので、ことばづかいを慎重に吟味した。ここの部分が最も問題なので、ここのところだけ読みあげる。(「発電炉の型式」の項を読みあげる。)
 6.核燃料に関する項では、濃縮ウランをもいれて核燃料の需給を考えてみたらどうかという声があった。これは何年に濃縮ウラン型の発電炉をいくら建設するかという考えからきめていかねばならないので、その点には及ばなかったが、一応天然ウランだけで核燃料の需給を試算してみるのだということを明らかに示した。
 7.「技術の研究開発」を新しくつけ加えた。これは案では参考資料にいれてあったものを本文にうつして、研究開発を重んずる精神を示した。

8.案よりも「所要資金」、「外貨収支」の項を後にまわして結果を示すような配置とした。
 なお、藤岡委員の御注意によって「所要資金」の項に4~5行削る箇所ができたのでこれを正誤表にのせている。

(正力委員長出席)

 正力委員長:一言御挨拶を申しあげる。ただいま御説明したような「発電用原子炉開発のための長期計画」ができあがった。原子力委員会としては十分にねったものである。これを国会に出し、総理に報告しようと思う。「長期計画」について思いだすのは、日本の原子力は昭和31年にヒントンが来日して以来様相が一変した。それ以来急速に進展してきたもので、ヒントンには非常に恩恵をうけている。
 近ごろ政府は科学振興を唱えているが、私は関係各省と学者とがいっしょになって審議会をつくるという案を作った。大蔵大臣、経審長官、文部大臣、私のほか常勤委員2人、非常勤委員2人で構成したい。おおいに科学技術を振興していくべきだと思っている。

 石川委員:「長期計画」について何かお気づきの点があればお話しいただきたい。

 大屋参与:前回の参与会における意見を大幅にとりいれて根本的につくりかえられたように思われる。まだ詳しく読む時間が与えられていないが、これ以上のものは現在の知識ではつくれないであろう。おおよそのところは大賛成である。
 これで政府の長期的施策の裏づけとなるものができたが、産業界からみるとこの「長期計画」を遂行するのに最も問題になるのは燃料である。そこで産業会議の原子燃料問題特別委員会で問題を考えているが、今日結論に達した。それは政府におしらせしても、プラスにはなれマイナスにはなるようなものではない。今日、明日にも関係方面にお配りすることにしている。

 大来参与:今度決定した「長期計画」では、私どもの希望もいれていただき満足している。

 島村課長:最近は技術導入の問題、特に原子炉に関連する技術導入の問題が現われる環境があり、これに対する原子力委員会の方針が問題になるところである。
 昨日の原子力委員会では、乙種(契約期間が1年未満のもの)の技術導入について、以下の条件をみたすインフォメーション程度のものは、現在でも申請があれば認めるのが適当であろうということを了解した。

 その条件とは(1)導入される技術がわが国の原子力の研究開発にプラスとなること、(2)受入者の技術水準が導入される技術をこなせること、(3)時価が適当であること、(4)直接生産に関連しない情報であることの四つである。現在では、直接生産に関連する技術導入にはまだ検討すべき問題があるので、インフォメーションの範囲にこのような制限をつけた。今後甲種の技術導入や、乙種でも生産を前提とする技術導入がでてくると思われるので、引きつづき、委員会で審議することになっている。

 石川委員:原電から今度英国に調査団を送ることになっているが、動力炉導入交渉の方針などについて安川参与からお話しをうかがいたい。

 安川参与:英国から原子力発電設備を導入する目的で近くミッションを組織して派遣することになった。交渉の内容とか方針としては、次のような点を考えている。

 1.まず、どういう場所に設置すべきかという問題がある。地質、水利等の状況が問題となる。現在は、第1候補地として東海村の官有地を一部借用することとしている。
 2.発電容量はいくらとするかという問題がある。150MWを一応目標にしているが、多少の増減は予期せねばならない。経済ベースと価格をにらみあわせて折衝していきたい。
 3.石川調査団が帰朝してから地震対策委員会がつくられ、地震問題が検討されてきたが、今度ほ英国側のグループと日本側のグループと両者が集まって協議する段取りにしている。地震を度外視しても安全度の問題は重要であり、われわれが要求するような安全度が保証されるかどうか研究したい。
 4.やむを得ない部分を除き、できるだけ多くの部分を第1基目から国産ですますようにしていきたい。
 5.発電所設備の責任がどこにあるか不明瞭な点があり、設備に保険をかける問題を検討せねばならない。
 6.だいたいの仕様書の方式をこちらで準備し、地震とか安全度の問題が片づけばいよいよ工事に対する交渉に入る。交渉した結果をもちかえってきて関係方面の意見をきいて発注の決定をし、おそくも昭和33年10月までには締結の運びとしたい。
 7.今朝英国大使館からきた返答では、調査団は年があけてからの方が英国側のつごうがよいというので、昭和33年1月3日に地震のグループが出発し、10日から地震に関する討論を始める予定である。

 瀬藤参与:アメリカにはいくのか。

 安川参与:一部のものだけいく。

 三島参与:アメリカも燃料関係の秘密を徐々に解除していく方針のようである。燃料関係の問題は原子炉技術の発達にとって重要である。昭和33年度の適当な時期に、燃料の生産および加工に関する専門技術の調査団として優秀な人を派遣することを考えてほしい。

 石川委員:よい御意見だと思う。よく考えをねってきめたいと思う。

 瀬藤参与:東海村には動力炉はいくつおけるか。

 安川参与:15万kWを2基ならべることを今考えているが、そのあとにももっとおく敷地がある。

 岡野参与:導入する炉の燃料の問題に関する原電の構想はどういうものか。

 原電福田理事:燃料の問題はAEAと交渉してみなければ具体的にきめられないわけであるが、第1号炉に入れるインベントリー用の燃料と補充する取替用の燃料とにわけ、10ヵ年くらいの間にこのくらいの量を確保したいとAEAに申しこむつもりである。必要と思われる最大限の量を通知しておき、燃料がわが国で国産化できるようになることも考えられるので、それを限度とする範囲で供給をうけることとし、各年度においてさらに細かい個別契約を結べばよいと思う。燃料の価格は最高いくらという条項をいれておく必要がある。そしてこれとは別にエスカレーション条項を設けて将来の値下りに備えたらよいと思う。使用済燃料は英国に送り返した場合にはいくらで引きとるか、委託加工はどのくらいでやってくれるかということを研究してやっていくべきだと思うが、だいたい最初は英国に送りかえして買い取ってもらう方法がいちばん経済的ではないかという気持を持っている。

 大屋参与:米国でほ核燃料に関してはAECがいっさい責任をもち、民間がその加工を引き受けている。英国でも燃料はAEAが握っている。日本でも何らかの形で燃料を管理しようという構想がある。日本は濃縮ウランを使うには当面は米国から供給をうけねばならないし、将来も当分の間は米国に依存せねばならない。したがって米国と交渉する場合には向うの意向をいれていかねばならないが、英国の場合は違ってくる。すなわち、ウランの鉱石は日本でも産出するし、天然ウラン金属も日本で造れると考えられる。したがって英国から天然ウランの燃料を買う場合には、相当日本の自由裁量を老えていくべきである。今度原電から調査団が行く場合も、燃料問題は国がやっているので調査団は何も知らないというようでは困るから、よく勉強していき、向うで交渉できるようにしたほうがよい。

 安川参与:原子力委員会と打ちあわせ、おおよその権限はもっていくことになっている。

 石川委員:燃料公社の高橋理事長にウランの採掘状況をお話し願いたい。

 高橋参与:最近ウランの探鉱が進展してきた。人形峠地区は、従来鉱床の分布状況を一部分しか考えていなかったが、最近では、今まで存在しないと思っていた地域にも鉱脈を発見し、また従来の鉱床もだんだんとのびてきた結果、33年度には、今までの数倍に範囲が拡大される。新たに発見された地域では鉱床の地質状態も従来のとは異なっていることが想像されるので、しばらくは調査を続ける必要がある。倉吉地区では小鴨鉱山のアルキ谷から掘進した坑道内でかなり高品位のウラン鉱脈を新しく発見し、期待をもっている。
 さらに各方面でウラン鉱が発見されている。東北地方の東海岸にも相当の埋蔵量のあることが考えられ、気仙招、釜石、野田村玉川の三つの地区で高品位の鉱石を発見しており、将来を有望視している。岐阜県下には最近黒川鉱山と岩倉鉱山とでカウントの高い鉱物を発見した。山口県には地質学的におもしろい地帯があり、秋ごろから、甲府、宇部の周辺を探査する予定である。
 今までは鉱脈型に賦存するウラントリウム鉱を目ざしてきたが、一次鉱物で採掘の対象となりうるものが続々みつけられてきた。今までは地表ばかりを探る段階であったが、33年度からはだんだん下底を探りうる時期となり、範囲の広い仕事を力強く推進できると思う。

 石川委員:大学方面に原子炉を設置したいという声があるので、それに関して委員会で決めたことをお話ししたい。

 佐々木局長:大学における研究用原子炉の扱い方についてつぎのような考え方を委員会の内規のようにきめた。研究炉を①教育用②研究用の二つに分け、①教育用については、(イ)原子炉等規制法の条件をみたすこと(ロ)スタッフが十分で原子力教育を行いうること(ハ)熱出力が10kW以下の小型のもので、その型式や性能が教育的目的にあっていることという3条件に適合するならよいとした。また、②研究用については問題がいっそう大きくなるから違う観点から考える必要があり、(イ)原子炉等規制法の条件をみたすこと(ロ)原子炉の使用目的が原子力の研究開発や科学者の養成に限られ、型式および性能がこれらの要請にあうこと(ハ)大学間の共同使用が可能であることという3条件にかなうものについて、そのつど検討のうえ設置を認めるかどうかを決めることとした。

 岡野参与:②研究用の原子炉の規模には制限を考えていないのか。

 藤岡委員:出力の制限は考えていないが、1,000kW以上のものは研究用としてはでてこないのではないか。型式にはいろいろのものが考えられるが。

 松根参与:燃料の精錬は今まで原研と公社の双方に重点をおいてやってきたようだが、来年度から精錬を具体的にやる場合には、民間でやることも含めて考え方をきめていただいたほうがよい。


昭和33年第1回

日時 昭和33年1月30日(木)年後2時~5時
場所 第三公邸
出席者
  稲生、大屋、岡野、倉田(大西)、駒形、瀬藤、中泉、高橋、三島、脇村 各参与
  石川、藤岡、有沢、兼重 各委員
  青田政務次官、佐々木局長、島村政策、鈴木アイソトープ各課長ほか担当官
議題
(1)昭和33年度原子力関係予算案について
(2)その他

配布資料
(1)昭和33年度原子力予算総表
(2)昭和33年度原子力関係予算について
(3)昭和33年度原子力関係予算案主要事項

議事内容
 石川委員:このたび藤岡委員が国際原子力機関のアイソトープ部長の役におつきになることになった。今まで国際会議の相当な地位についている人が日本にはいないので、結構なことだと思い国際原子力機関に申しこんでおいたものである。日本のなかでも知っているかぎりの有力な方に手紙をだして協力を求めていたが、数日前に国際原子力機関から電報がきて藤岡さんをほしいといってきた。原子力委員をおやめ願わねばならぬのは非常に残念だが、これから原子力の国際関係がますます重要になるときにあたってすこしでも早く就任していただきたい。

 藤岡委員:日本としてほ国際原子力機関にはできるだけ協力して、これを育てていかねばならない。私が行かなければ誰かが行かねばならないから、それを考えるとこの際おひきうけするのが古いことばでいえば、お国のためかと思い決心した。原子力委員の任期もまだ長く残っており、無責任のようでもあるが、向うにいて国際的な立場で働くのもお役にたつことと思うようになった。イニシァルアポイントメントは1年で、これはまださきにのばすことができる。思いきってでかける以上は早く帰りたがるようでは成功は期せられないので、働けるまで働く覚悟で行く。3月10日に国際原子力機関の理事会があるので、それに間にあうように行くと電報をうった。国際原子力機関の事務局で働くのだから日本の利益をはかるつもりで行くべきではなく、共存共栄という考えでやりたい。皆様の御支援なしでは働きにくいので、いろいろな意味から公私ともに御後援くださることを願っている。

 佐々木局長:お手もとの資料によって、昭和33年度の原子力関係予算について御報告し、運用等に関する御意見でもうけたまわれば幸いである。
 資料のうち「1.昭和33年度原子力予算総表」では昭和32年度と33年度の予算の額を比較している。合計額は32年度の90億円に対して、33年度は111億円強で、そのほか33年度分には備考欄にあるように、民間出資および雑収入として原研に3億円あまりつくので、それを含めて115億円ほどの金が事業資金として投下される。
 量からは去年が増えたのに比べて増加率は及ばないが、実体的にみると項目にもよるが、充実した予算であると思う。
 合計額を予算額(現金)と債務負担額とにわけてみると、現金は17億円増加して、60億円から77億円になった。債務負担額も30億円から33億円へと3億円増加した。債務負担行為は33年度からできるだけ廃止したいという考えが大蔵省にあったが、原子力研究所のなかに動力試験炉を買い入れて設置するための予算が約25億円ほどで、その大部分が債務負担となったため、最終的には、32年度の額を上まわることとなった。
 次に、資料の「2.昭和33年度原子力関係予算について」という作文に33年度予算の主要な点の説明が書いてあるので、これを読みあげる。(島村課長:資料2.を朗読)

 佐々木局長:経過等につきやや詳細にお話しする。

(1)原子力研究所 原研の予算のうちで一番問題になったのは試験用動力炉の問題で、大蔵省の主計官としてはどうしても1年早いので納得できないという意見だったので、政治的な解決にまたねばならぬかと思った。しかし最終段階において、主計官から原研にそれまでについた予算を崩さないで、そのなかから1億円の現金を工夫してくれたらこの予算をつけるのにやぶさかでないということになった。原研は、民間から2億5千万円の出資を仰いでいるが、試験用動力炉は、発電炉、舶用動力炉の実用化というサービス的な面があるから、民間出資をさらに求めても話しがあわぬことはないという考えから、32年度よりも5千万円多い3億円の出資を期待することとした。そのほか研究費の面でも考慮してあわせて1億円の現金をつごうして折衝したので問題が片づいた。
 技術者養成の問題は原研の33年度における問題のうちで一つの眼目である。32年度と同様に、留学生を派遣するわくがとってある。原子炉学校は34年3月に発足させる予定である。アイソトープ研修所を原研に設けるが、これは1回に30名として240名くらいを教育する。そのうち1回は東南アジアの人々を予定している。原研の定員は32年度の450名から300名ふえて、33年度は750名になる。このほかに外部から50 名くらいをいわゆる手弁当でいれる。原研の設備は広く一般に開放し、協同研究をしたいという考えをもっている。この点、原研の33年度の予算はほぼ予定に近い線で獲得したということができる。
 建屋等の建設資金についても、33年度ではいっさい政府補助金という制度をなくした。政府 からの援助には政府出資と補助金とがあった。補助金がでていると法律で定められた大蔵省の査定を受けることになり、大蔵省の主計官と相談せねば進まないので、これが難渋をきわめる。特殊法人として発足した原研もこれを一因として自由に活動できないので、改善が叫ばれていた。33年度からは補助金がなくなり政府出資のみになるので、事業の初めに計画をきめておけば安心して着手できるようになった。債務負担行為もあるのでこれについては承認を要するが、補助金からくる煩雑さを免れることができると思われる。その反面まかせたらこんなことになったといわれては困るので、原研の関係者の御出席をお願いしているこの席では恐縮だが、非難されるところがないような妥当な運営を期待している。

(2)原子燃料公社 石炭、石油等のエネルギー源に対してはいっさい経済ペースで考えを進め、保護政策はとりたくないというのが大蔵省の一貫した考え方である。ウランをも例外としないので、国内のウラン資源を開発しようとする燃料公社の予算も要求額を大幅に削ってきた。すなわち、大蔵省は、ウラン精錬の中間試験設備の金はださない。必要な燃料要素は海外から輸入してほしい。その時は必要な予算はつける。国内の探鉱は32年度程度の規模にしてほしいなどといってきた。しかしウランの重要性をいろいろ説いた結果、最終的には大蔵省の考え方も緩和されてきて、精錬中間試験設備もみとめられ、その前段階として必要な粗製錬の設 備も33年度に完成する。探鉱関係においても人形峠、倉吉地区でいっそう探鉱の範囲を拡げ、そのうえ気仙沼等の新しい地区の探鉱もできるようである。大蔵省も委員会の考えを入れてくれて、まずまずの状況である。

(3)放射線医学総合研究所 放医研は最初東海村につくる予定のところ稲毛に変ったので、半年くらい工事がずれ、早ければ33年12月、おそければ34年3月完成となる。したがって、まず建物ができてから業務に必要な経費の御相談に応じようというのが大蔵省の言い分であった。しかし、建物の完成に先だって、人間を選んで採用しておかねばならないので、事前に予算をつけるように了承してもらった。

(4)その他 委員会を強化するため、4人の委員を全部常勤にするのに必要な予算がついた。委員会と局の外国出張旅費ほ32年度より八十数万円ふえた。外務省ほ別としてこのような予算は他省に許されていない。留学生は32年度と同数の35名分の予算をとった。民間からの留学生は32年度より増すので、全部で70名以上になると思われる。
 最後に国立試験研究機関の予算について、担当者から御説明申しあげる。

(鈴木アイソトープ課長および担当官から国立試験研究機関の予算について説明)

 瀬藤参与:日本でRIが自給できるようになるまでは積極的に輸入したRIを利用しようということで、日本放射性同位元素協会ができている。これは現在かなり積極的にやっているが、ずっと後までも当分やらせるものと考えられる。私は同協会に関係をもっているが、献身的にやっているようであり、金の面でも無理をすることがあるようなので、将来のことも考えて根本方針をきめておきたい。

 駒形参与:原研でつくるコバルト60も協会を通じて需要者に出すことにしている。いますぐ原研でやれといわれても、ほかに重要な仕事を控えている。

 大屋参与:協会の理事をしているが、RIは需要者から複雑な申込みがあり事務が煩雑である。国一炉ができるとかなりRIは国産できるが、一方需要ののびも急速になると考えられるので、輸入が少なくなって、協会の仕事がなくなることは、当分起らないだろう。煩雑な事務を原研で引き受けるわけにはいかない。

 中泉参与:現在協会の世話でコバルト60を使っている医者が50人くらいいる。使っているうちに放射能が弱くなったら、協会は古道具屋のような世話をやらねばならない。これは政府機関ではできないことだと思う。

 中泉参与:私は広島のABCCで働いているが、ABCCは実際に原爆の放射能に曝された多数の人を対象にして研究を進めている世界で唯一の研究所である。アメリカからは何億という金がでているのに日本からは何万という程度にすぎない。日本ももっと研究に金をだすべきである。

 藤岡委員:ABCCはアメリカの機関だからではないのか。

 中泉参与:予防衛生研究所の支所がABCCの建物のなかにあり、そこの職員はABCCの中で働いている。日本は予防衛生研究所の建物の維持費をだしているのみである。

 大屋参与:日本もアメリカの研究にまかせず、広島、長崎での被爆者の例から、結論をだして自主的に発表したいと思う。

 石川委員:原研で、今度アイソトープ研修生を募集した。授業料として4週間に8千円とった。前に産業会議でやったときには、2週間で8千円という例があったので、今度の8千円はそう高くない。もっととってもよいという意見がある。

 大屋参与:産業会議がやったときは8千円ずつあつめても経費をカバーできず、不足分は産業会議が補助した。8千円よりも高くてよい。

 駒形参与:原研に出資している民間の会社からはほとんど研修生をよこしている。そういう人たちに便宜を与えることはいわば出資に対するサービスに含まれるようなものだから、あまり授業料をあげる必要もない。ただ実習に要する材料費だけもらったらという考えで8千円とした。

 宮崎参与代理外務省大塚担当官:今年の1月に国際原子力機関の会議がウィーンで開かれ、各国のスカラーシップの受入れが話しあわれた。日本の古内大使から、日本が協力しないのははずかしいからスカラーシップを提供できるようにしてほしいといってきた。それに対しては、日本の予算がそれを考えて組まれていないので、旅費、滞在費を国際原子力機関でもつならば日本で5~7名をうけいれてもよいと返事をしておいた。このような場合には外国からの研修生の月謝は免除してもらえるか。

 島村政策課長:ハーウェル等でも授業料はとっている。原研が授業料を負担するのはおかしいし、国の負担とすると予算が問題になる。

 佐々木局長:急に予算がつけられないので、特別の措置がとれるようによく研究しておく。

 大屋参与:今日は松根参与が来られないということで、私が代りの発言を頼まれてきた。原子力委員会が昨年暮にきめた長期計画によると、昭和50年度までの日本のウランの需要量は、天然ウラン型の発電炉のみを開発するとした場合、2万数千トンで、そのうち1割が国産できる程度である。電力会社としては、原子力発電をいよいよ身近の問題と感ずるようになったが、燃料の問題に注目せざるを得ない。現在の程度の燃料対策では心配で、民間も燃料の製造に協力させて、燃料の確保に万全を期してほしいという声もある。原子燃料公社が燃料供給の中心という考え方は変らないが、民間の力をも活用して、精錬、加工技術の完成を急ぐというように考えてほしい。

 佐々木局長:カナダとはイエローケーキを取引できる協定を結べるようだが、米英との協定では文中のソースマテリアルという文句にイエローケーキが含まれるかどうか問題が残っている。米、英、加ともにイエローケーキを提供してくれるとしても、その量は炉の出力によって規制されるのか、政府の保証さえあればいくらでも供給してくれるのかも問題である。今のところでは、炉の計画に従ってイエローケーキを供給する考えらしく、したがって、燃料の精錬設備ばかりを造っても、イエロ-ケーキが輸入できないことも考えられる。また、民間にやらせるか公社にやらせるかは予算措置に必要となる金額とのかねあいもあって、いろいろな方面から考えねばならない。

 大屋参与:炉の出力から考えられる以上に燃料をもらうわけにはいかないが、開発規模がどんどん大きくなっているときは、供給をうける燃料の量にもあるていど余裕をみてほしい。カナダから原子炉を輸入しない場合は、日本の国産の炉とからみあわせて、イエローケーキを輸入できるかどうか不明である。いずれにせよ、今までとは違った燃料の手当を考えねば国産の炉は意味をなさなくなる。この考え方をきめていただくのと民間に燃料を造らせることを考えてほしい。

 佐々木局長:今までは燃料の生産をとりあげて考えていたが、今度はその流通をも考えに入れねばならない。両方を重視してみると今までの考え方がよいかどうか問題で、目下研究中である。

 大屋参与:燃料の流通をどうするかということと、民間の力を燃料の問題に活用することとは一応別の問題である。どういう風にしたいという案をもっているわけではないが、なにか燃料の問題は心配な気がする。燃料は金属の段階以後は全部外国からもってこねばならないことにでもなれば紐つきとなって原子力発電が商業的なものでなくなるから、燃料管理はよく考えてほしい。燃料でしばられてくるとなれば、長い目でみて原子力発電の商業性に疑問がもたれてくる。民間対民間の燃料ルートも考えて遺憾なきを期してほしい。

 今日は予算のお話をうかがったが、日本の研究機関としてよくこれだけの金をあつめたものと感服している。これも原子力のおかげである。

 佐々木局長:燃料管理の問題は早くきめて皆様におはかりしたい。次回の参与会は2月20日(木)を予定している。