各国原子力関係施設の視察許可取付に関する
手続および注意事項


 外務省において原子力の平和利用に関する事項をつかさどっている国際協力局第三課においては、さきに2月19日付をもって「諸外国における原子力関係施設の視察許可取付に関する手続および注意事項」を作成したが、これは本誌にも掲載(第2巻第3号13ページ)され、海外原子力施設の視察者にとって有益な手引となっている。その後各在外公館からの報告も適宜その都度掲載してきたが、同課ではこれら報告を取りまとめ、若干の訂正を加えて、執務参考用および関係者の便宜に供するため以下に掲げるような資料を作成した。よってここにその全文を紹介し、各方面の利用に供することとした。ただし、編集の都合上一部形式や表現を変えたところがあることをあらかじめ御了承を得たい。

 なお、外務省から連絡のあった海外原子力関係施設の視察に関する手続および注意事項等で今までに本誌に掲載されたものを掲載順に挙げると次のようになる。ただし、今回の資料と相違するものがあれば、当然今回のように変更されたものと了解されたい。

                            巻 号  頁

海外原子力関係施設見学者の手続、注意   1  3  47

海外原子力関係施設等の見学者の手続注意 2  2  49

フランスにおける軍管理工場等への立入許可申請について

合衆国国防総省関係工場等への立入許可取得手続について(抜粋)

合衆国における軍関係施設および軍管理工場への立入許可取得手続について

アルコ国立研究所視察について

チョークリヴァー原子力研究所視察について

諸外国における原子力関係施設の視察許可取付に関する手続および注意事項について
                            2  3  13

米国国立原子力研究所視察の場合の手引  2  4  20

米国原子力研究所視察手引の一部修正について

                            2  5  41

米国原子力施設手引の一部変更通知の件

                            2  7  46

シッピングポート原子力発電所公開中止の件

                            2  7  46


各国原子力関係施設の視察許可取付に関する手続および注意事項

(協三第77号、昭和32年8月13日)

外務省国際協力局第三課

1. 米国

〔1〕米国国立原子力研究所およびこれに類する原子力施設で、米国原子力委員会の許可を必要とする場合

(1)視察の申込は原則としてすくなくとも1ヵ月前に外務省国際協力局に申し出ること。

(2)視察希望者は原則として本人の所属する部署の責任者から外務省国際協力局長あてに視察許可取付方に関する依頼状を提出する。この依頼状には下記事項を記載した書類(和文、英文各2通、ただし、渡航先が2ヵ国以上のときは1ヵ国ごとに和文、英文各2通を追加する)を添付すること。

(イ)氏名、生年月日、出生地、現住所、職業、学術的専門事項、使用外国語

(ロ)訪問希望箇所(関係省、場所、施設名、できれば訪問先関係官氏名を明記のこと)

(ハ)視察目的(具体的かつ詳細に記載のこと)

(ニ)訪問日時

(3)注意事項

(イ)1ヵ所の視察は1日とすること。ただし、現地訪問の際、係官が数日間の視察を許可する場合はこの限りでない。

(ロ)視察のすくなくとも4〜5日前までに視察箇所になるべく電話で連絡すること。

(ハ)本人の専門に直接関係のない場所を単なる土産話の種に漫然と視察することは止めること。

(ニ)視察直前に訪問日時を変更しないこと。

(ホ)やむを得ず日時を変更し、あるいは取り止める場合は、なるべく早目に外務省国際協力局または在外公館を通じて先方に通知すること。

(ヘ)視察者は渡航先における在外公館に自己の連絡先を必ず通知すること。

(ト)渡航前に視察許可取付に関する手続を行わなかった者が、現地で視察の申入れをなすときは、できるだけ時間的余裕をもって必ず在外公館を通じて行うこと。
 ただし、この場合は許可取付が非常に難しいのであらかじめ了知しおかれたい。

(4)許可取付に要する期間

 多くの場合、2〜3週間を必要とする。

(5)米国原子力委員会からは不許可の場合にのみ在米大使館に通知がある。

(6)アルコ国立原子力研究所の視察について

  昭和32年1月18日在米大使館からの報告によれば、最近各国からの同研究所MTR(材料試験炉)の視察者が激増し、同研究所においては業務にさしつかえが生ずるにいたった趣であり、このため同大使館では米国原子力委員会からの要請によりMTRを視察することが特に必要と認められる者に限り視察許可の申入れを行うこととなった。したがって、今後同大使館では視察希望者から訪問の理由を十分聴取し、場合によっては視察許可申請を断ることもあり得るので関係の向はあらかじめこの事情を了知しおかれたい。

(7)同年6月20日、在米大使館からの報告によれば、シッピングポート原子力発電所の見学は、7月1日以降当分の間(恐らく現場工事の完成まで)許可されないこととなった。

(8)ブルックヘヴン研究所の視察は、現地の都合で金曜日は許可されないから金曜以外の週日を選ぶこと。

〔2〕 米国原子力委員会と契約事業を行っている民間原子力施設の場合

  この場合は、なるべく視察希望者から直接視察先に交渉し、もし米国原子力委員会の許可を必要とするときは前項(1)(2)の書類を外務省国際協力局へ提出する。

〔3〕 各研究所への連絡方法および連絡先

(1)ブルックヘヴン国立研究所

 New York CityのPenn StationからLong Island Line 8時1分(朝)の汽車に乗り、Jamaicaで乗換、Patchogue(パチョーク)で下車し、ここでAEC専用バスに乗り、研究所へ行くのが便利である。所要時間はNew York−Patchogue 約2時間、AECバス約20分。

連絡先・Bookhaven National Laboratory,Long Island,New York

連絡者 Mr.Van Horn,Director,AEC Brookhaven Operation Office

(電話)YAphank 4−6262

(注意)視察日の前日までに上記Mr.Van Horn,Director, AEC B.O.O.に連絡すること。

(2)アルゴンヌ国立研究所

 Chicagoの宿舎等を下記Mr.D.P.Rudolfに連絡し、迎えの車を求めるのが一番便利な方法である。所要時間は自動車で約1時間。

連絡先 ArgonneNationalLaboratory,P.O.Box 59,Lemont,Illinois

連絡者 Mr.D.P.Rudolf,Director,Technical Service AEC Chicago Operations Office,Lemont,Ill.

(電話) LEmont−0800,Illinois

(注意)視察日の前日までに、上記Mr.D.P.Rudolfに連絡のこと。

(3)オークリッジ国立研究所

 KnoxvilleからNashville行バスに乗りOakRidge下車またはLimousineを利用のこと。所要時間約1時間で、宿はKnoxville または Oak Ridgeで泊るのが便利である。Oak Ridge の宿は AlexanderHotel1軒である。

連絡先 AEC Oak Ridge Operations Office

連絡者 Mrs.Allis Coreley

(電話)Oak Ridge5−8611,ext.4278

(注意)視察前日までに上記に連絡のこと。

(4)アルコ国立研究所

 Idaho Falls下車。ただし、特に許可をうけた場合とする。

連絡先および連絡者

Mr.N.C.Funk,Deputy Director,AECIdaho Operations Office Box1221,IdahoFalls, Idaho.

 〔備考〕

(1)AEC施設は各国からの見学者多数のため、多忙をきわめている由であるので、できれば希望者はなるべくまとまって訪問のこと。

(2)見学希望期日の近い者にはいっしょに訪問するよう依頼することがある。

(3)1人が1箇所以上見学ないし視察を希望する場合には計画を立てて一度に申し出ること。

2. カナダ

(1)カナダの原子力関係施設の視察許可取付は、前記米国の場合における提出書類および注意事項を準用する。

(2)昭和32年1月7日、在カナダ大使館からの報告によれば、チョークリヴァー原子力研究所では、最近同所の訪問者が激増し、その応待に忙殺されているため、カナダ外務省は同大使館に対し、同所の訪問者数を制限する趣旨ではないが、1人または2人で別個に来訪する訪問者を、でき得るならば同時に案内することが双方にとり好都合と思われるので同大使館に配慮方申入れがあった。

 ついては、研究所視察は、各人の旅程、研究目的の相違等により同一行動をとることの困難な場合が多いとは考えられるが、同大使館においては、今後なるべく先方の希望にそうよう実施することとなったので、関係の向はあらかじめ上記事情を了承しおかれたい。

(3)チョークリヴァーは、オタワの130マイル西北にあり、交通機関は自動車で往復1日を要する。時間の節約と安金を期して通常、借上自動車を利用しているが、借上料約50ドルを要する。

3. 英 国

(1)英国における視察許可取付も、前記米国の場合における提出書類および注意事項を準用する。

 なお、この手続の際は、特に本人の旅券番号、発給年月日および発行地を通知する必要がある。

(2)コールダーホール原子力発電所はロンドンから遠隔にあるため、視察にはすくなくともまる2日を予定しなければならない。同所の一般公開は毎週土曜日(午前中)、原子力関係専門家には水曜日と定められている。

4. フランス

 フランスの原子力関係施設の視察申請手続も、前記米国の場合における提出書類および注意事項を準用するが、さらに下記の点を留意しなければならない。

(1)視察は原則として科学的、技術的知識を有するもののために許可される。

(2)事前に許可を得た公開日(毎週土曜日午前中)以外の一般の視察はほとんど不可能である。 

(3)視察許可申請は、できるだけ時間的余裕をもって提出する必要がある。

(4)視察者多数の場合は拒否されることもあり得る。

5. スイス、スウェーデン、ノールウェー、インド

 標記各国の原子力諸施設を視察する場合も、前記米国の場合における提出書類および注意事項を準用する。


[参考]

昭和32年1月から7月までの諸外国の原始力施設視察者実数

1.視察者の所属別分類


2.視察先別訪問者数

 米国
  ブルックヘヴン研究所         17名
  アルゴンヌ   〃          31名
  オークリッジ  〃          26名
  ア ル コ   〃          15名
  シッピングポート発電所        23名

 カナダ
  チョークリヴァ一研究所        10名
  バンクロフト・ウラン精錬工場      2名
  ブラインド・リヴァー 〃        3名

 英国
  コールダーホール発電所        19名
  ハーウェル研究所           26名
  スプリングフィルド燃料工場      11名
  ウインズスケール化学処理工場     15名
  ドーンレー増殖炉工場          1名
  ラジオ・ケミカル・センター       2名

 フランス
  サクレー研究所            15名
  ブーシェ・ウラン精錬工場         9名
  CEAシャティヨン本部           4名

 スウェーデン
 
 ノーベル研究所             5名

 ノールウェー
 
 シェラー研究所             9名

 ベルギー
  原子力利用研究センター         1名

 南阿
  アングロ・アメリカン・コーポレー
 
 ション(ウラン鉱山および精錬所)    2名

 インド
 
 CIRステーション            2名
  (トロンベイ・プロジェクト)