日 時 昭和32年4月19日(金)午後2時〜5時 場 所 人事院ビル236号室(原子力委員会会議室) 出席者 議 題 1.昭和32年度原子力開発利用基本に計画について 議事内容 1.昭和32年度基本計画について 菊池参与:原子力海外駐在官の活動のために、予算は十分与えられているか。 佐々木局長:図書購入費がそのために出ていたが、現在ではその予算は外務省のほうについている。 瀬藤参与:核研と原研との協力態勢はどうなっているか。 菊池参与:目下直接の関連はないが、別に支障は考えられないので、具体的な問題が出ればうまくゆくのではないかと思う。 三島参与:燃料の成型加工に関し、原研の研究設備が完成するまでこの間も、民間の諸企業とタイアップして一層研究を促進し、国産1号炉の完成までには、国内技術により成型加工ができるように遺憾なきを期されたい。 藤岡委員:この点はよくお趣旨を体して検討する。日本中の金属関係の学者を集めて委員会のような組織をつくり、検討することを考えている。 中泉参与:放射線医学総合研究所はX線を除外する予定か。 佐々木局長:X線は含める予定である。 山県参与:放射線医学総合研究所の設立と設置場所に関しては、文部・厚生両省と合議済みか、また、最終決定をみたものであるか。 藤岡委員:原子力委員会で決定したもので、法律にはなっていないが、だいたい最終的な決定である。 佐々木局長:両省とは設置に際しても十分に連絡したが、運営その他に関しても十分協議してゆけるようになっている。 2.動力炉の受入体制について i)輸入の目的・時期および規模 大屋参与:最初の炉はあくまでも実験、試験をすることを目的として考えるべきである。時期はなるべく早い方がよい。商業規模の炉を導入して試験、実験を行うべきであるが、実験炉として勉強する際には、2基一緒に28万kWを最初から買う必要はない。 倉田参与(代):技術を将来発展させるためには、同じものを2基同時に入れるよりも、別の方法に資金を使った方がよい。kW当りでは割高になるが、半分の1基でよいのではないか。 稲生参与:1基だけだと、建設費がかりにkWあたり2割高くなるとすれば、発電原価は1割高になると概算される。 発電原価で1割ていどのちがいということなら、試験が目的であるということから、1基ですませる方がよいと思う。 嵯峨根理事:1基のみ入れる場合にはなかなか最後に黒字になるという計算にはならない。ところが2基でやればずっと早く黒字になる。そこで規模の問題は、さらにこまかく経済的な計算をして、その上で議論をしていただきたい。また、研究目的からいえば、1基だけで十分目的を叶えることができる。 岡野監事:2基同時に入れると、金は多く払うけれども、収益が多くなる時期も非常に早くなってくる。 数字をみないとそのよさは信じられないので、規模の問題はあまり結論を急がずに試算のデータを参照にして考えてゆくようにしたい。 ii)技術導入の方法 茅参与:動力炉を輸入するに際しては、次の段階かさらに次の段階において、より進んだものを自分の手で作るような技術を養成したい。その点コールダーホール型では、ただ据えて中の内容は教えてくれないのではないか。日本の技術に積極的にプラスとなるような形で入ってくることが可能か。 藤岡委員:その点ははっきりした答えはできないが、可能であるかどうかというよりも、こちらがこうしたいという希望を持って交渉するという問題と考えている。 倉田参与(代):炉の型が変ると技術導入も改めて行う必要があろうと思われる。 したがって技術導入は営業炉になるべく近いものでいれたい。イギリスはグループごとにまとまっているから、一つの会社で技術を全部持っているわけではない。 それゆえ日本側とイギリス側とが会社対会社で技術提携する形にはならないだろう。ただ買うだけにして、得た知識は日本全体で利用するようにしたい。 岡野監事:アメリカに関しては、従来の普通のライセンス契約がやりよい形になっているが、イギリスは公社が背景にあり、グループごとにまとまってやっている。そこでライセンス契約をするには、どれか一グループの炉型を選定して、それについて技術導入することになるが、間違ったものを買う危険性がある。また、日本の一グループだけがライセンス契約をすると不公平になる。その意味で買うだけでも勉強になるから、最初はライセンス契約をせず買うだけにした方がよい。 稲生参与:最初からライセンス契約をした方がよい。イギリス側が指導し日本が教わる立場にたって建設を手伝い、国産化技術の育成を図る。ライセンス契約は国家なりそれに準ずる何らかの機関でやる。イギリスの各グループはいずれもハーウェルやリズレーで教わっており、技術者は英国の政府が獲得した技術を習得している。プラントの設計は政府から貰ったベース・プランにもとづいてやっている。 それゆえ作られる炉はグループによりたいした差はあるまい。イギリスのグループには代表的な会社があるので、それと契約すれば全体の技術が貰えるのではないか。これは調べていただきたい。 大屋参与:イギリスがすくなくとも三つは続けて炉を買えというように要求してくることを心配している。そのような条件であれば買うべきではない。一度買ったら後は技術導入して次の炉から国産したい。入れてみないとわからないが、2基目から国産できると思う。そういう点でしばられぬようにしたい。イギリスのではAEAが輸入の相手となる責任者となり、どのグループの原子炉を買って欲しいというようにまとまった膳立をもってくると思う。日本側から特に注文はつけられるが、だいたいは向うでまとめてきて、われわれが向うのメーカーと勝手に話をすることはできないのではないか。したがって第1回では、相手がどういう風に考えてくるのかをみて、交渉にあたり臨機応変の処置をとるような考えがよい。 iii)資金の調達方法ならびに経営形態 大屋参与:28万kWをやるというような議論ならば、400億円は必要である。これを国家に期待するのは無理で、金を民間から借りられるような形を作ることが非常に大事な問題である。資金調達の問題はしたがって受入体制を考えねばならない。200億円または400億円という多額の金を新しく使うような場合には、民営でやることを考えないと民間資金は集まらぬのではないか。原子力研究所とは表裏一体でやってゆきたい。 倉田参与(代):動力炉の場合は研究といってもエンジニアリングの改良とかそういう問題が主だと思う。したがって、民間が相当金を出してやる方が将来営業に移る場合によいであろう。 大屋参与:数百倍の金がいるので民間の金を相当まとまって出して貰わねばならぬ。しかもその金は利益をあまり生まないことを覚悟して貰わねばならない。原子力研究所の運営形態で何百億という多くの金を実際に使うのは困離であるから、別の組織を作り、原研と表裏一体で運営することを考えてゆきたい。政府からの出資を希望するが、リアクターとか初期装荷燃料とかの現物出資も考えられるであろう。あるいは税金その他の面での優遇措置も取って欲しい。しかし主体は民間資金で、外資の導入も考える。運営してみた結果で場合によってはプロフィット・コーポレーションとなるかも知れないが、一応はノンプロフィット・コーポレーションであること覚悟して貰わねばならない。運営は民間資金が主となる関係から民営を希望するが、こういう新しい仕事をやる場合は民営の方がはるかにフレッシュになる。 瀬藤参与:受入体制に関する問題は多くの意見がでるが、そのおのおのには利点もあれば欠点もある。それをサムアップした一覧表を作って、それから比較考慮して各案を採点してゆくような方法をとりたい。
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