昭和32年 第 2 回 日 時 昭和32年3月15日(金)午後2時〜5時半 場 所 人事院ビル236号室(原子力委員会会議室) 出席者 伏見、菊池、児玉、三島、中泉、茅、山県、大屋、倉田、松根、 議 題 配布資料 議事概要 田中参与:買うについての目的や意義につきどういうところに重点をおいておられるか。 石川委員:主要目的は実験、研究、訓練にある。もちろん電気もとるが・・・・・・。 藤岡委員:遠因は電力不足からきている。10年くらいにある程度のものが必要だとすればさしあたり一つ必要になる。 石川委員:ここで留学生問題についてちょっとご報告申し上げれば、204名の希望者中から書類選考で88名が選ばれ、そのうちの40名が民間である。民間の場合は斡旋だけであるし、数はもっと増えるかもわからない。旅費を国から出すことはなかなか難しかろう。 島村課長:前回民間関係をもっと考慮せよということであったが、その後書類選考の結果ご意見が反映して人数が多くなっている。国家予算を出すことは困難である。 瀬藤参与:特別外貨は難しいので、一般外貨をとりやすいようにしていただきたい。 島村課長:渡航審議会に事前に連絡してあるので、その点昨年も問題になったことはない。 伏見参与:学術会議の1月総会で最も問題になったのは、動力炉の導入が長期計画中でどういう位置を占めるかということであった。 石川委員:長期計画の中に、「数種の動力炉を輸入する」とうたってある。 大屋参与:第2回調査団の派遣は賛成であるが、今回は受入側の代表という形で出すべきであろう。 田中参与:電力界の考え方はどうだろうか。 松根参与:最初は大型の炉でなくてもよいであろうと思っていたが、だんだん考え方が発展してきた。研究所で担当されるのは今でも結構だと思っている。大型炉に適しているかどうかは再検討の要もあろう。具合が悪ければ別の形を考えねばならない。資金も相当要することではあるし、発電を行うと同時に研究用でもあるので、形態を決めるのが難しい。もう一つは、石炭、石油があてにならないので、エネルギー需給上の見地から割合早く商業用炉を相当導入せねばならない。2年や3年遅れても電力需給の点では大差なくても、技術の修得、安全性の確保などの点が違ってくるので、技術的開発の促進が必要である。タイミングの上からも早くとりかかる方が日本経済全体の、ためである。 茅参与:最初の計画ではPWR型を試験用に置くということであった。外国で商業用原子炉が可能になった場合に民間で自由に輸入するという意見もあり、30万キロの大型のもので利益もあるとも思うが、自分にはよく納得できない。 石川委員:そうはっきり決っているわけではない。昨年までは1万キロか1万5千キロ程度のものを入れるという意見があった。現在のところまだ動力炉の定義もはっきりしていない。 藤岡委員:事実考え方は相当変ってきている。米、英を比べると、アメリカはいろいろな種類の炉を比較している段階である。すでにディザインできている英国から入れた方がよいという考え方である。 茅参与:つまりタイミングの点と、レディ・メイドを買うということであろうか。 嵯峨根原研理事:そればかりでもあるまい。 藤岡委員:ほかにもいろいろあろうけれどもだいたいさようなところではあるまいか。 菊池参与:イギリスの計画自体が大きくなったのであろうか 石川委員:先刻も申し上げたとおり、ミル大臣の演説でも3倍にするといっている。 藤岡委員:一昨年の白書では、1966年までに英国内12ヵ所で300万キロといっている。ブリーダーとまではっきり示してはないが、必ずしも同じコールダーホール型とはいっていなかった。 田中参与:炉を輸入する場合技術導入はどの程度行われるか。 石川委員:どの会社とはっきり指定せず2、3候補者を出すであろうし、英国原子力公社でその中のいずれかに許可を出すこととなろう。バブコック社など事情をよく知っているところでは、部品は日本で作りたいといっている。ノーハウは最終的に決定してはじめてくれる。 瀬藤参与:結局技術導入なしの輸入ということになる。 大屋参与:現在のところ、自らのコストで原子力発電を行おうという電力会社はないと思う。政策を国全体として考え、国がやはりをある程度決心を示して金を出すべきである。今の研究所の改組、増資などでそれができるものならば幸いであるが、いかがであろうか。結論はなかなか難しいが、大筋は官民協力でいきたい。原子力研究所とまったく別のものを新たに作るのもすこし無理であろう。基礎研究がおろそかになっては困る。 藤岡委員:資金の点で二つ問題がある。すなわち、国がイニシアティヴをとれ、ということと、できるだけ借款を考慮せよということであろと思う。 大屋参与:アメリカはほとんど決ったような話であるが、英国は未定であろう。最近英国からも借りられそうな形勢である。いずれにしても外国の金が入りやすいようにすべきである。 石川委員:借款の問題はなかなか難しく、愛知用水もまだ出ない。.ロンドンのシティバンクとメーカー、商社の三者が話し合えば何とかできるであろうという話である。ただし、9電力か政府か開発銀行が保証する方法をとらねばならないと思う。 稲生参与:国家保証が最も楽である。 大屋参与:パーソン公使と会った時、炉の部品は極力日本で作らせてもらいたいと話したら自分の方もそう願いたいといっていた。また今の日本の役所の機構ではほとんどあらゆることに大蔵省が干渉するし、民間のお手伝いが難しい。 石川委員:日本航空の場合がやはりそうであって、最初欠損続きで政府の出資が増えたが、この頃やっと利益が上るようになり、大蔵省も愁眉を開き、新しい飛行機を買えるようになってきている。 倉田参与:金を集めるためには国がやるべきだと思う。 石川委員:ただ政府は議決権のない株を好まない。 菊池参与:原子力発電のいわば本命は濃縮ウランにあると考えられないか。 石川委員:天然ウランも進歩すると思う。 藤岡委員:どちらが本命かの議論は見定める必要があるのかもわからないが難しい。 菊池参与:経済ベースが同じなら問題ないが・・・・。 石川委員:ミル氏はほとんど変らないといっている。 山県参与:船の場合に運賃でバランスがとれるような具合に発電の場合もできるであろうか。もっとも運賃だけの比較でなくて船価も上るのであるが 石川委員:一言でいえば建設費は高いが、後の経費がやすい。 嵯峨根原研理事:アメリカ型の炉はイギリス型よりも高い。 大屋参与:濃縮ウランが高いうえにキャパシティがすくないからであろう。 天然ウランと両方使うようになればやすくなろう。 茅参与:もしコールダーホール型炉をテレビと同様にノウハウなしに買っても意味ないと思う。 大屋参与:ノウハウ同様な知識をくれることが前程である。 石川委員:英国型炉の安全の点は大丈夫と思う。保険の問題もあるが・・・・・・。 大屋参与:新鋭火力と同じ安全性はもちろんないので、やはり相当のリスクがある。 石川委員:それからアメリカのものは10年くらい後でないと買えるようなものがない。 田中参与:地震対策はその後どうなっているか。 法貴局次長:動力炉専門委員会で研究してきたが、今回さらに地震対策小委員会を作り、なるべく早期に検討にとりかかる。 嵯峨根原研理事:補足して申し上げれば、関係方面と相談して東海村の地盤調査を1,600 万円の予算で始める。 久布白原研理事:現地でのボーリングの結果は大体良好で、現在のコールダーホ一ル型く らいは大丈夫と思われる。 岡野原研監事:同地方は鹿島のかなめ石と俗にいうものがあるくらい地震の影響の最もす くないところである。 倉田参与:反面鹿島灘はよく震源地になる。 法貴局次長:ヒントン卿の報告によれば炉を中途で止めることもできるそうである。 嵯峨根原研理事:一連の炉の設置計画は慎重に行いたい。 岡野原研監事:わたくしの感じでは、根本問題は政府がいかに踏み切るかである。そのためには、この参与会が政府に進言すべきである。もう一つは、研究所は今のままで絶対変えられないものでもないと思う。政が肚を決めないで研究所の在り方を云々するのは本末転倒である。研究所が必ずしもアカデミックなグルンドリッヒなものではないのならば、1万キロの計画が10万キロになってもやらせるべきである。 高橋公社理事長:電力不足が表面化して炭価が上ると、炭坑が濫掘され、鉱山開発や石炭化学の、将来に対してもよくないから、やはり原子力発電は急いだ方がよい。 伏見参与:コールダーホール型炉は異質のものであるし、研究所の研究態勢が乱される 大屋参与:今回はいわば第一読会にすぎないから、もう一度改めて意見を出したい。 岡野原研監事: 研究所の研究は生かし得る。つまり動力、医、農、工等の応用の研究である。 石川委員:基礎と応用と両方であろう。 瀬藤参与:コールダーホールとリズレイの関係がよい例であると思うが、一つのところでうまくやれるだろうかと漠然たる不安が感じられる。 藤岡委員:日本の経済情勢上なるべく集中する方針でスタートしたわけであるが、今のままで全くよいとも思えないし、全然別のものにもできない。事態はデリケートである。 伏見参与:研究軽視が心配である。 藤岡委員:そのためにはむしろ一緒の方がよい。 大屋参与:研究所工業部あるいは開発公社の案もあった。 嵯峨根原研理事:問題を要約すれば、(1)資金問題、(2)発案後2年もかかるような金のつ使い方では困る。(3)先生級の有能の士を集める。(4)危険性の保障、(5)長期借款等があろう。 児玉参与:動力炉導入の目的は何であろうか。新鋭火力と同じコストで原子力発電を行うということは一つのビジネスであり、研究とは両立しない。 大屋参与:名称も発開研究所とでも改めねばならなくなってくる 石川委員:現在の名称は基本法で定められているものである。 佐々木局長:外国の例をみても、戦時中からのは公社あるいは国営でやっていた。 日本原 大屋参与:原子力研究所の改組でできれば最も簡単であるが、いずれにしでも民間の発言 権がないのは困る。 藤岡委員:次に、補助金、委託費の説明を申し上げたい。 島村課長:以前に予算の説明の時にも申し上げたとおり一度委託費一本にしたこともあるが、昭和32年度には再び補助金、委託費のつ二本建となった。 4月早々テーマを公示し、6月ころから募集を始める。 交付先は、自ら研究を行うもの、経理上の事務処理の能力を有するものとなっており、本年度からは個人も加わった。 茅参与:審査の仕組みはどうなっているか。 佐々木局長:4月早々公募を開始して、原子力局で審査したこものにつき委員会の承認を求め、庁議で決定する。 嵯峨根原研理事:技術的面はどこで行うか。 佐々木局長:主として助成課が当る。 茅参与:権威者の意見をかりるべきだろう。 佐々木局長:あまり広範囲こなっても弊害がともなうので、実際問題としてはいろいろ難 点がある。 嵯峨根原研理事:委員会と局との関係が理想的にいっていれば結構であるが・・・・・・。 次回は4月19日(金)午後2時に開会することを決定し、午後5時半閉会した。 |