海外における原子力関係情報

 海外における原子力関係の情報については、それぞれ在外公館長から外務大臣あて報告がなされており、国際協力局を通じて原子力局にも通報がよせられているが、それらのうち次の二つをえらんで紹介することとした。なおこの二つは、ともに1月17日開催の第58回原子力委員会にも報告されている。

カナダのウラニウム埋蔵量と生産量

1.12月12日ハウ通商大臣は原子力平和利用に関する情報の公開について発表を行い、イギリス、アメリカ、カナダ3国で構成する機密解除委員会(Declassification Committee)はこのほど新しい情報の解除を決定したが、そのなかにはカナダのウラニウム埋蔵量と生産量が含まれている旨を述べた。

2.ついで13日エルドラド会社はこの埋蔵量と生産量につき「カナダのウラニウム鉱埋蔵量は2億2,500万トン、ウラニウム含有分にして23万7000トンと見積られる。12月末現在におけるウラニウム生産量は年にして3,300トンの割合である。年産は1957年に急増し、1958年中頃までには14,000トンから15,000トンに達する見込みである。この生産による総所得は年約3億ドルに達するであろう。」と発表した。

3.ウラニウム埋蔵量および生産量について数字が発表されたのは今回が最初であり、注目されているが、この発表に関し、グローブ・アンド・メールは次のごとく報じている。

 「今回発表されたカナダのウラニウム埋蔵量は米国原子力委員会の発表した米国埋蔵量のほぼ4倍である。この数字はカナダの原子力計画遂行に十分であるのみならず(当分は年所要量数百トンにすぎない)多量輸出しうることを明らかにした。現在の輸出先は米国であるが、今後は英国、日本、その他の資源のない西欧側諸国に原鉱またはウラニウム・コンセントレートが輸出されるであろう。埋蔵量2億2,500万トンは価格にすれば40億ドルにも達するが、ベネット・エルドラド会社社長はこの埋蔵量は内輪に見積った数字であると語っており、鉱山関係者はいずれも、実数はこの2倍またはそれ以上と推測している。」

フランスにおける原子力平和利用

1.Geaorge Guille 原子力担当国務相は、12月8日フランスの核分裂物質の生産状況に関して要旨次のとおり言明した。

(1)核分裂物資資源

 フランス本士のウラニウム埋蔵量は5万ないし10万トンと推定され、うち1万トンは直接的調査によって確認された。またマダガスカルにはThorianite(ウラニウム10ないし20パーセント、トリウム60ないし70パーセント含有)約1,000トンが埋蔵されていることが確認されている。この資源は限られたものであるが、ここ数年はなおフランスは依然主要トリウム生産国の一であり、純分の高い鉱石を使用する唯一の国であろう。他の海外諸領においては採掘可能な鉱脈はいまだ発見されていない。サハラ、フランス領赤道アフリカ、フランス領西アフリカ、Guyave において調査進行中であり、有望なデータが出ているがいまだ判断するには時期尚早である。調査済面積は137,000平方キロに達し、それ以外に空中調査も緒につき、サハラにおいてすでに50,000平方キロの空中調査が行われた。

(2)化学的選鉱工場

a 建設の完了したもの

 Geugnon 工場(Saone et Loire 県)

 原子力委員会により管理され、鉱石処理能力年5万トン、使用鉱石のウラニウム純分100分の1ないし8(ただし、現在純分の高いもののみが採掘使用されている。)選精鉱(ウラン酸ソーダ)年500トン。

b 建設中のもの

 Escarpiere 工場(Wendee 県)

 鉱石処理能力年30万トン、使用鉱石のウラニウム純分100分の1.1ないし1.5。

 選精鉱はウラニウム純分換算により年400トン。

 Bessines 工場(Haute−Vienne 県)

 原子力委員会と私企業の共同出資による会社が管理し、鉱石処理能力年20万トン、使用鉱石のウラニウム純分100分の1.1ないし2.5。選精鉱ウラニウム純分換算により年450トン。

(3)1957年生産予想

1957年にはウラニウム純分60%の化学的方法による選精鉱380トン、Nucleaire 純度ウラニウム粗金属300トン、Nucleaire 純度トリウム硝酸塩300トンの生産が予想されている。

(4) 投 資 額

 原子力委員会による採掘のための直接投資は120億フラン、選鉱工場に対する投資は45億フランであり、Bouchet 工場(ウラン酸ソーダおよびウラノトリアナイトの処理を行う)に対する投資は28億フランである。

(5)核分裂物質の原価

 原子力委員会管理下の化学的方法による選精鉱の現在の原価はウラニウム1キロにつき12,000フラン、Bouchet 工場における精錬の費用はウラニウム1キロにつき5,000フランである。現在建設中の設備完成により数年後には選精鉱の原価は10,000フラン、精錬費用は4,000フランになるであろう。

(6)将来の計画

 前記費用その他を基礎として今後のウラニウム年産額は1958年500トン、1961年1,000トン、1970年2,500トン、1975年3,000トンを目標とし、その大部分はフランス本国において生産の予定である。このためには約600億フランの投資がさらに必要であるが、この計画は欧州原子力機構の成立とともに同機構により再検討が加えられよう。この計画実現のため必要な人員は現在の約3倍、すなわち7,000名、うち技師400名、技術指導員1,000名である。人員、資材、原料の供給はフランス1国によっても可能であるが、ヨーロッパ諸国の協力によって一層容易となろう。

2. 現在フランスにおいて最も不足している原子科学者の養成のためグルノーブルにおいて第2原子力研究所の起工式が行われた。1958年には濃縮ウランを使用し、出力1,000キロワットのプール型原子炉の完成を見る予定であるが、最も重要なのは各種研究、実験設備を有し、300名ないし400名の専門科学者の養成を行うとともに、海軍との協力により原子工学の研究および石油研究所その他地方工場との協力により放射化学の研究を行うことである。なおこの措置にもかかわずフランスの原子科学者不足は解消されず、さらになんらかの手段を講ずる必要があるとされている。