CP-5型原子炉の発注

 昭和31年1月27日に行われた「原子炉の導入計画」についての閣議決定にもとづいて、日本原子力研究所は、ウォーターボイラー型原子炉1基を米国から購入するとともに、CP-5型原子炉1基を米国に対し発注することとなった。

 日本原子力研究所では、本年3月26日に、ウォーターボイラーの発注を行ったが、その後ただちにCP-5型原子炉の検討を開始し、数ヵ月にわたって、米国のNAA、ACF、AMF、GEの4製造業者について、炉の性能、価格、納期、契約条件等を研究した。この間、各社の技術者が来日して、説明を行うなどのこともあり慎重に検討した結果次の理由により、AMFに発注を内定し、同年9月4日の第42回臨時原子力委員会の議を経て、10月10日に正式調印が行われた。

 AMF(AMF ATOMICS INC.)に決定した理由としては、

① AMF以外は、出力5MWで、熱中性子束平均8×1013個/cm2/secていどであるが、AMFは出力10MWで、熱中性子束平均1.2×1014個/cm2/secと5割方多い。
② 各社の価格を、同一条件に引き直して比較すると、ACFとAMFとが安くてほぼ同等であり、NAA、GEがこれより高い。したがって熱中性子束当りの価格はAMFが最も安い。
③ 納期は、12ヵ月+輸送期間というのが最短で、30ヵ月が最も長く、AMFは18ヵ月となっていた。研究所の建設計画から見ると、あまり納期が早すぎでも他の工事が間に合わないので、18ヵ月ていどが適当である。
④ 炉本体の価格のうち、約1/3は日本のメーカーに下請けさせるので、外貨の節約となると同時に、わが国原子炉製造技術の向上にも役立つ。
⑤ CP-5型原子炉の製作経験についてはACFの方がまさっているが、AMFは、制御関係においてすぐれた技術を持ち、また、スウィミング・プール型原子炉の製造経験を持つので、技術的不安はないものと考えられる。
⑥ 保証については、AMFが最も大幅である。

 といったようなことがあげられる。

 なお、本炉の輸入についての要目は次のとおりである。

1.購入者 日本原子力研究所(JAERI)

2.製造者 AMF ATOMICS INC.(New York)

3.原子炉定格

 a)熱出力:10,000kW
 b)熱中性子束:平均1.2×1014個/cm2/sec
 c)燃料:20%濃縮ウラン、全装入量U235、約3.1kg

4.価格(燃料を除く)

 a)本体

1,495,000ドル
 b)重水(7.5トン)
約520,000ドル
 c)建家
約900,000ドル
 d)付属装置その他
約500,000ドル
    計
  約3,400,000ドル

5.支払計画(本体のみ)

  AMF(ドル貸)   三菱(円貨)
総額   984,595ドル   510,405ドル
        
契約発効日
(11月15日)
  25%
  -
90日後
  -
  25%
150日後
  25%
  -
第1回出荷時
(32年6月)
  25%
  25%
最終出荷時
(32年10月)
  15%
  25%
建設工事完了時
(33年2月)
  -
  15%
最終受取時
(33年6月)
  10%
  10%
   計
 100%
 100%

 なお、昨年6月11日のアイゼンハウアー米大統領演説にもとづく原子炉半額援助を、この炉に適用するよう米国政府に申し入れ中なので、米国政府がこの計画を適当と認めれば、最高35万ドルの範囲内で、日本政府に対して援助が行われることになる。