特殊核物質賃貸借に関する日米細目協定について 日米原子力細目協定については、昨年11月いわゆる日米原子力協定が締結されて以来燃料貸与の諸条件を規定するものとして日米両政府間において種々の折衝が行われ、またわが国においては、原子力委員会を中心に慎重に検討を加えてきたが、ようやく両国間において意見の一致を見、11月中旬に調印の運びとなった。 この細目協定は、現在茨城県東海村に建設中のウォーターボイラー実験炉の所要燃料2kgの賃貸を規定するものであるが、原子力委員会は、原子力開発利用基本計画にのっとり本実験炉を32年4月据付完了し7月本運転開始を可能ならしめるためには、遅くとも11月中には交渉を妥結させる必要があるとの観点から米側の協力を求めたが、米側は、わが国原子力計画を十分認識しつつも、細目協定は米国自身初めてであり、今後のモデルケースとなること、原子力国際機関設立その他の諸情勢から原子力政策を変転したこと等の事情により予想外の日時を費したが、その間、燃料引受後、米国政府の責任を免除する免責条項の規定等の問題点も、燃料引受に当り公正な第三者による検査を実施することを規定した検査条項がわが国の主張により挿入され、これにより日本側の不利を排除する等の妥協が行われた結果ようやく妥結を見た。 そこで臨時国会に提出、承認を得れば発効することとなるが、以下にその概略を紹介する。 特殊核物質賃貸借に関する日米協定要綱 1.貸与量 細目協定により貸与される濃縮ウランは、ウラン235含有量19.5〜20%のもの2kgであり、東海村に設置されるウォーターボイラー炉用として貸与される。 なお、万一の事故等により必要となった場合日本政府の要請があったときは、追加量が貸与されることとなっている。 2.燃料の加工業者への引渡 日本政府が契約した契約者(燃料の加工業者)より依頼を受領して後120日以内に、AECは加工業者にAEC施設において金属ウラン(その他)の形で引渡を行う。 3.検査 燃料の質に関する検査は日米両国政府により選択された分析機関により加工過程における適当な一時点においてサンプル調査を行うものとし、検査費用は折半とする。量の検査は加工業者より日米両国政府に証明書を手交するが、別途、加工業者との契約により量の検収を行いうる。 4.日本政府への引渡 加工業者は30日の予告期間をおいて、日米両国協議の上決定するAEC指定の地点において日本政府に引渡す。引渡は日本政府の適当な領収書の手交により確認され、爾後日本政府は安全保持に関する一切の責任を負う。 5.返還 日本政府は1960年9月30日までまたはいかなる場合も協定の終期までに日本政府と協議の上でAECの指定する場所において返還するものとする。 6.燃料の再処理 再処理は次の方法により行う。 (1)AECがAEC施設で再処理を引き受けたときはAECに恢復費および輸送料を支払う。 7.賃貸料 賃貸料は日本政府よりAECに支払うものとし、次の方法による。 (1)使用料
(2)消費および減損料 (3)燃料価値計算の根基は、20%濃縮ウラン中に含まれるU235が1g25ドル、天然ウラン(0.72%)中に含まれるU235が1g5.62ドルとし、これに正比例させた計算により行う。 (4)支払方法 8.米国政府の免責 日本政府は燃料の引渡を受けた後は、燃料の生産、加工、所有、貸与、占有、使用等に起因する一切の責任について米国政府の責任を免除するものとする。 9.AECの証明書(別途交換公文による) AECから加工業者に対し金属ウランの品質に関する証明書を渡し、その写しを日本政府にも送るものとする。 訪英原子力発電調査団の出発 訪英原子力発電調査団のうち、一本松副団長以下、嵯峨根、法貴、藤波、弘田、辻本、大山、稲生の8氏は、10月15日羽田発エール・フランス機で出発した。なお、駐英原子力アタッシェに決定した村田書記官も一行とともに出発赴任した。 |