昭和31年度原子力平和利用研究補助金交付決定

 昭和31年度原子力平和利用研究補助金は、交付対象となる研究課題の範囲を告示して希望者の申請を求めたところ、申請締切日の5月31日までに93件の申請があったので、これらについて原子力局内に設けた審査会議および原子力委員会において慎重に検討し、交付課題、交付先、交付金額等を決定した。

 交付決定補助金額は323,257,000円(うち国庫債務負担行為分126,600,000円)、被交付者数は24、交付課題数は39で、さきに原子力委員会で決めた昭和31年度原子力開発利用基本計画の線に沿って、原子燃料、重水、黒鉛、遮蔽材、金属構造材、各種機械装置等国産炉の製造に必要な技術の確立を目標として選定したが、特に将来における動力炉の国産に備えて液体金属その他冷却系統の基礎研究をも取上げることとした。

1.ウラン鉱の選鉱、製錬等に関する研究については、燐鉱石よりのウランの抽出については昨年度に引き続き研究するものとし、更に天然ウランの熔解、造塊、燃料要素のキャンニング粉末冶金等の基礎研究をはじめ、トリウムの製錬もとりあげた。

2.重水の製造に関する研究については、交換反応法、回収電解法については昨年に引き続き研究を続行して中間プラントによる試験を行うものとする。

3.原子炉用黒鉛の製造に関する研究については昨年度に引き続き更に高純度のものの製造、化学的処理による脱硼についての研究を行う。

4.放射線遮蔽材料の製造に関する研究については昨年度に引き続き特殊セメント、特殊コンクリートの研究を行うほか、これらの施工に関する研究も行わせ、更にホット・ラボ専用の放射線で着色しないガラス、放射線に汚染されにくいまたは汚染された場合洗滌または塗換え、取換えの容易な塗料の研究についてもとりあげた。

5.原子炉およびその附属装置に必要な金属材料に関する研究については本年度は原子炉材料として使用される鋼種のステンレスにつきその製造、熔接、加工について研究を行わしめることとした。

6.原子炉の自動制御装置に関する研究については直観式シミュレータおよび、昨年度の委託費により設計した国産炉の制御機構を試作し、基礎的研究を行わしめることとした。

7.遠隔操作装置に関する研究については、特殊ペリスコープおよび電気式遠隔操作装置をとりあげた。

8.放射線測定器の試作研究については、昨年度に引き続き各種シンチレータ、光電子増倍管等の研究を行うとともに新たに中性子用フィルムバッジ、計数管、波高分析器等現在試験研究用として外国から相当数の輸入をみているものの国産化を促進するためにとりあげることとした。

9.放射線防護用具の試作研究については適当と認めるものがなかった。

10.動力用原子炉に関する研究については本年度から動力用原子炉の基礎研究に着手し冷却材としての液体金属の取扱およびそれによる金属の腐蝕の研究をはじめ、管路内の沸騰現象、キャンドモータの試作研究を行うこととした。

11.原子力の研究および利用に必要な機械器具等に関する研究については、電子線状加速器、放射性粉じん用フィルター、集じん装置をとりあげた。