日本原子力研究所設立後の経緯

 日本原子力研究所(以下「研究所」という。)は、6月15日発足して以来、新役員の就任をまって組織、内部規程等の整備を急ぐとともに、研究所の昭和31事業年度の予算、事業計画および資金計画の作成を進めてきたが、その概要は次のとおりである。

1 役員の任命

 研究所の役員は、その発足当初は理事長または監事となるべき者から自動的に役員となった安川理事長、岡野監事の2人のみであり、副理事長、理事については設立後直ちに任命される予定であったが、多少遅れて6月21日原子力委員会の了承を得た上6月26日駒形副理事長、杉本、嵯峨根、久布白、今泉各理事および柴沼監事が、7月28日本村理事が任命され、法律上の限度一杯まで役員が充足された。

2 組織の整備

 研究所の組織については、設立後すみやかに整備されなければならないものであったが、役員の人選も遅れ、また後述のように種々の問題もあったため、組織の決定が容易に行われなかった。

 研究所の組織をどのように組み立てるかは、財団法人当時から種々議論されてきた所であり、一応財団法人としての組織があった訳であるが、人員の増加、実質的業務の開始に伴ない当然新しく組織替えすることも考えねばならず、この際問題とされたおもな事項は研究部門の性格をどうするか、内部管理組織を確立するか、東海村研究所の地位を現在からどのように規定

しておくかというような諸点であった。

 研究部門の性格については、独立した部門を設けるか否かが問題であり、これを設けると研究各部が他の部と異なった地位になるとともに、一般管理部門との連絡上の問題も生じるのではないかと考えられたが、将来これらの研究各部が東海村に移った後の事も考え、研究実施機関として独立し、副理事長がその長を兼ねることとなった。

 内部管理組織の確立については、総務部のほかに管理部を設けて、業務全体についての内部管理を強力に行う事により業務の能率的運営を図ろうとする考えもあったが、本年度についてはまだ研究が本格的に開始されぬ段階であり、人員の整備も一挙に行うことはできず、また研究所という性格からもその内部管理は相当困難であると見られるので一応その準備を行うにとどめ、管理部は設けないこととなった。

 次に東海村研究所の地位については、本年度はほとんど建設が主力であるので、建設事務所を設けるのみとした。

 以上のような経緯により組織規程は7月24日から実施され、新組織によって業務が行われることとなった。(組織図は巻末参照)

3 予算、事業計画および資金計画の作成

 研究所の予算、事業計画および資金計画については、日本原子力研究所法附則第6条の規定により、研究所の成立後遅滞なく認可を受けなければならないこととなっており、また研究所がその業務を発足後直ちに推進して行くためには経費の支出が直ちに必要となるので、1日もすみやかに予算等の認可を受けることが必要であるので、財団法人当時からその作成を急いでいたが、事業計画の基本が容易に確定せず、時とともに新しい情勢が生じるため数度にわたって組替が必要となり、予算等の認可申請は相当遅れ8月17日に至ってようやく正式に申請される運びとなった。

 予算等について特に問題とされたのはCP−5型原子炉の購入予定期日および金額の問題、アイソトープセンターの問題等であり、このほか給与についても公務員その他との均衡が問題とされた。

 研究所の収入支出予算は下表のように資本、建設費、試験研究費および共通費の各勘定に分けられ、それぞれの収入形態および支出目的が明確にされている。このうち資本勘定の収入において計上されている補助金については、一応補助金として計上はしてあるが、今後の必要によってはこれを出資に切り替えることを予定している。

昭和31事業年度収入支出予算

4 会計規程および基本事項

 研究所は日本原子力研究所の財務および会計に関する総理府令第20条第1項により会計規程を定めなければならないものとされ、同条第3項により会計規程の基本的事項について内閣総理大臣の承認を受けなけれぼならないこととなり、また日本原子力研究所法施行規則第7条によって物品の取扱に関する規程ならびに会計および監査に関する規程を制定するときはその実施の日の10日前までに内閣総理大臣に届け出なければならないこととなっており、また会計規程は購買、支出、経理処理等の基準勘定科目等を定めるものであるので、これがきまらなければ支出の整理もできないこととなるので、その作成を急いでいたが、研究所の実態に即したものとするためにはなお研究を要する事項が多いので、これらの問題を後にまわした形で承認を求めることとなった。

 会計規程およびその基本事項について問題となったのは、試験研究費の処理方法、原価計算の方法、契約および支払の方法等であった。

5 給与規程および給与の支給基準

 研究所の給与の支給基準は、定款第36条により、給与規程は日本原子力研究所法施行規則第7条により、それぞれ内閣総理大臣の承認を求め、または10日前までに届け出ることとなっており、実質的には大蔵当局とも協議しなければならないものであるので、研究所は設立後給与規程の作成をいそいでいたが、予算との関連からその決定が遅れ、ようやくその内容を確定する運びとなった。研究所の給与はここ数年間国からの補助に仰ぐこととなるので、他の補助金との関係、他の公団、公庫等との均衡を考えて公務員よりやや高い水準になった。

6 その他の内部規程

 以上のほか、旅費に関する規程が事前届出になっているが、これについてもすでに内容を確定して届け出る段階になっており、その他の内部規程については研究所独自で決定施行することができることとなっているので、一応9月からこれを実施し、研究所の業務を軌道に乗せることとなっている。