原子力局

原子燃料公社設立経過原子燃料公社法の概要

設社経過

 昭和31年7月20日第1回設立準備委員会終了と同時に設置された設立委員会事務局は原子力局職員および9名の専任職員から構成され、設立に必要な事務一切を処理した。8月10日公社発足当日までに、内定した公社役員と原子力局との連絡会を7月中4回、8月中3回にわたって開き、設立後遅滞なく事業遂行ができるよう充分な連絡を取った。なお、8月2日新たに理事として今井美材氏が内定した。

1 第2回設立委員会

 昭和31年8月7日午前11時電機工業会館(千代田区永田町2丁目1番地)において第2回設立委員会を開催した。篠原委員長の開会の辞の後佐々木原子力局長から原子燃料公社設立準備経過報告があり、次いで設立準備費の決算概算、原子燃料公社の理事長となるべきものへの引継事項が審議決定された。なお第1回設立委員会において問題となった起業目論見書業務計画の一部について、大蔵省主計局と事務当局との折衝の結果、その主旨には大きい変更はないが、表現を次のごとくした修正案が承認された。

2 事業計画

 「原子力の開発および利用の促進に寄与するため、国内の核原料物質の探鉱を急速に行うとともに、その採鉱および選鉱ならびに核燃料物質の生産加工を行い、昭和34年度に日本原子力研究所に建設される予定の国産第1号炉に国産天然ウランの供給ができるよう努力し、以降の原子炉についても国産核燃料物質を供給することを目標とする。

 さしあたっては国内資源の開発を早急に行うため、通商産業省地質調査所が昭和29,30両年度において実施した基礎調査の結果、有望地域と目される鳥取、岡山両県下において探鉱を開始し、昭和32年度にはさらに探鉱を継続拡大する一方、採掘を必要とする地区については開発に必要な諸施設を整備して採掘に着手する。

 また鉱石採掘への努力とあいまって精錬の準備を進めることとし、昭和32年度中に運転開始を一応の目途として土地、建物の整備を行う。その後必要に応じ遂次核燃料の生産規模を拡充し本格的生産工場へ切換を行うように計画する。さらに将来国内に設置される動力炉の操業と並行して燃料要素の再処理と廃棄物の処理についても遺憾ないよう体制の整備につとめる。

 この事業計画の進行に伴なって逐次要員の確保を図るものとする。」

 さらに原子力局長から公社の所在地を中央区日本橋大伝馬町2の1大伝馬ビル3階に設けることが報告され、また新たに内定した理事、豊島陞氏、佐藤源郎氏、今井美材氏の紹介が行われた。

3 公社設立

 昭和31年8月10日設立委員長からの理事長たるべき者への事務引継、設立登記を完了して原子燃料公社は正式に発足した。

 発足と同時に設立委員会事務局は廃止され、公社事務所は8月13日中央区日本橋大伝馬町2

の1大伝馬ビル3階に移転を完了した。

 昭和31年8月10日任命された役員は次のごとくである。

  理事長   高 橋 幸三郎
  副理事長  原   玉 重
  理  事   豊 島   陞
  理  事   佐 藤 源 郎
  理  事   今 井 美 材
  監  事   宮 原 幸三郎
  監  事   村 田 八千穂

原子燃料公社法の概要

 原子燃料公社法は昭和31年4月30日成立、5月4日公布施行された。本公社法は7章43ヵ条および附則からなり、原子力基本法(昭和30年法律186号)第7条にもとづき作成制定されたものである。

1 設立目的

 わが国における原子力の開発が将来のエネルギー資源の確保に果す役割はきわめて大きいものがあり、これがための技術の研究向上の必要なことはもちろんであるが、原子力エネルギーの源泉となるウラン・トリウム等の核原料物質の開発も極めて重要なことであり、さらに核燃料物質を生産し、かつこれらの物質の管理を総合的かつ効果的に行い、原子力の開発および利用の促進に寄与することは本公社設立の主目的である。

2 公社の性格

 公社は法人であることが規定されているが、これは民法上または商法上の法人とは異なる特殊法人であることを意味している。しかし鉄道、専売、電々の三公社とは異なり「公社という名の公団」と称し得るものであり、むしろ既存の住宅公団法、道路公団法等にきわめて類似した規定内容を持っている。すなわち全額政府出資(資本金1,000万円)であるが、他の公社、公庫等のごとくその予算について国会の議決を経る必要はなく、単に主務大臣および大蔵大臣か財務会計を監督する。職員は他の三公社は公労法の規制を受けるが、本会社は一般私企業と同様に労働法令の規制を受けるだけである。

 会計については会計検査院の検査を経て、決算書類を毎年国会に報告することは公社、公団同様であるが、毎年その業務に関しては、業務報告書を国会へ提出することを規定していることは、公社という名称を考慮したものである。

 公社の役員としては理事長、副理事長、理事(5名以内)および監事(2名以内)をおき、それぞれ内閣総理大臣が任命することになっているが、役員人事の重要性にかんがみ、その任命に当っては原子力委員会等の意見をきくこととなっている。資本金については、政府は必要と認めるときは追加して出資することができ、公社は資本金を増加する。

3 公社の事業

 公社が行う事業は公社法第19条に規定するとおりである。すなわち

 (1)核原料物質の探鉱、採鉱、選鉱を行うこと。
 (2)核原料物質の輸入並びに買取及び売渡を行うこと。
 (3)核燃料物質の生産及び加工を行うこと。
 (4)核燃料物質の輸及び輸出並びに買取、売渡及び貸付を行うこと。
 (5)(1)〜(3)の業務の実施に伴って生ずる副産物の売渡を行うこと。

等がそのおもな業務である。

 これらの事業内容は将来起り得る種々な場合の公社が行う業務を示してある。さしあたっては、国内のウラン、トリウム等の核原料物質の探鉱を重点的に行う。この場合核原料物質の開発は急務を要するので、この業務を促進するために別に定められた「核原料物質開発促進臨時措置法」(昭和31年法律第93号)によって、さらに積極的な探鉱の実施に支障のないようにし、さらに探鉱の結果によって、鉱区の買収、租鉱権の設定などによって、自らも採掘、選鉱を行うほか、国内鉱石の買上げも行う。また将来国内鉱石が需要をみたし得ない場合は可能な範囲内で外国鉱石の輸入も行う。鉱石からの製錬・加工を行い、核燃料物質の供給を行う。また核燃料物資の輸出入、買取、売渡および貸付を行う。さらに使用済の核燃料物質の再処理を行い、またウランの製錬過程から派生的に産出される製品のみならず、採鉱、選鉱などの過程においてウランを取り除いた他の鉱物も副産物として売渡を行う。

4 その他

 利益および損失の処理について、毎事業年度利益を生じたとき、繰越損をうめ、さらに残余を積立金として整理する。損失を生じたときはその不足額は繰越欠損金として整理する。

 借入金については、内閣総理大臣の認可を受けて、短期借入金をすることができるが、年度内に償還する。資金不足のため償還不可能の場合はその金額に限り、内閣総理大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。

 恩給については恩給法に規定する公務員または公務員とみなされるものが、引き続き公社の職員となり、またさらに引き続いて公務員または公務員とみなされる者となったときに公社在職中の年月数は加算されることになっている。

 公社法は本誌Vol.1,No.2(6月号)62ページに記載されているから参照されたい。