昭和31年度核原料物質探鉱計画 この探鉱計画は「核原料物質開発促進臨時措置法」第1章第3条によったもので、すなわち「内閣総理大臣は、通商産業大臣又は原子燃料公社(以下「公社」という)が行う核原料物質の探鉱の合理的な実施を図るため、毎年、原子力委員会の議決を経て、核原料物質探鉱計画を定めなければならない。」によって、昭和31年8月2日、原子力委員会の議決を経て定められたものである。この探鉱計画の原案作成にあたっては、通商産業大臣の諮問機関たる地下資源開発審議会鉱山部会の協力を得たものである。 昭和31年度核原料物質探鉱計画 1.方針 昭和31年度における核原料物質の探鉱については、わが国の原子力の開発および利用が実行段階に入る年として、国内資源の探鉱を強力かつ合理的に推進するものとする。 その探鉱に当っては通商産業省地質調査所が基礎調査を実施し、さらに原子燃料公社が地質調査所の行った基礎調査にもとづいて企業化調査を実施するものとする。 2.実施計画 (1)通商産業省地質調査所が行う探鉱 わが国における核原料資源の既存が予想される地域は、酸性迸入岩地帯およびその周縁部ならびに水成岩地域であり、このような地域にたいしては、組織的放射能強度分布調査(エアボーン、カーボーン調査または地表概査)を行い、放射能強度異常地域の発見に努めるものとする。また、その結果放射能強度が、特に異常な地域については詳細な調査、すなわち地質精査、地化学探鉱、物理探鉱および試錐等により、鉱床の経済的価値判定のための基礎的資料を得るものとする。 実施地域 (イ)エアボーン、カーボーン調査 (ロ)地表概査 (ハ)地質鉱床概査(サンプリングその他の調査) (ニ)鉱床調査(物理探鉱、地化学探鉱および試すいを含む) (2)原子燃料公社が行う探鉱 昭和29年度および30年度において地質調査所が行った基礎調査の結果、企業化調査の必要な下記地域について坑道掘さくを主とする探鉱を実施するものとする。 (イ)鳥取県小鴨鉱山およびその周辺坑道探鉱、試錐 この探鉱計画に示されているように、通商産業省工業技術院地質調査所は核原料物質の賦存可能と予想される地域について、エアボーン、カーボーン、地表概査等によって、広範にして基礎的な調査を実施し、この結果発見された有望な地域について原子燃料公社がさらに詳細な調査を重点的に実施することになっており、あくまで調査内容、調査地域の重複を避け、合理的に事業を遂行せんとするものである。 地質調査所は昭和29年度以来核原料物質資源調査を実施し、最近は従来知られていたペグマタイト鉱床の他に、鳥取県・岡山県下に新しいタイプの鉱床を発見した。(鉱床の概要については、本誌Vol1、No.4.(8月号)50ページに記載につき省略)さらに地質調査所は、昭和31年度を第1年度として3ヵ年計画のもとに調査を実施するが、本年度は予算1億円をもって、調査範囲を拡大する。すなわち日本列島に分布する広範な花こう岩地帯に主力を注ぎ、その他人形峠型の鉱床、現在稼行中あるいは休山中の金属鉱山のうち核原料物質賦存の予想される鉱山などが対象として選ばれている。 原子燃料公社は上記有望地帯について地質調査所が詳細な基礎的調査(一部ボーリングを実施)を実施した結果、下部の探鉱を必要とする段階になった地区について、一部坑道掘さく、一部ボーリング等によって、企業化調査の第一歩を踏み出そうとするものである。また、この他、昭和31年度の地質調査所その他の調査で、有望地域の発見も可能で、この地域についても早急に企業化調査が必要となると考えられるので、探鉱対象としたものである。 公社はすでに8月10日に発足しているが、探鉱の事業実施期間は本年度は6〜7ヵ月と考えられ、また僅かな限られた予算(資本金1千万円、補助金9千万円、債務負担行為5千万円、計1億5千万円)でもあるので、坑道約500m、ボーリング約1,000mの実施予定となっている。 |