原子力委員会参与会

第 7 回

日 時 昭和31年7月27日(金)午後2時〜5時

場 所 人事院ビル236号室(原子力委員会会議室)

出席者

 伏見、菊池、嵯峨根、児玉、木村、三島、中泉、脇村、大屋、倉田(代理大西)、松根(代理福田)、久留島、岡野、瀬藤、田中各参与

 正力委員長、石川、藤岡、有沢 各委員

 佐々木局長、島村、荒木、藤波、堀、鈴木各 課長 ほか各担当官

 駒形日本原子力研究所副理事長

議 題

 1.原子力開発利用長期基本計画について
 2.その他

配布資料

 1.原子力開発利用長期基本計画策定上の問題点に対する考え方
 2.アイソトープ・センターの構想に対する意見(伏見参与)
 3.CP−5型原子炉について(日本原子力研究所)
 4.国産1号炉建設について(同上)
 5.アイソトープの生産について(同上)
 6.原子力委員会第6回参与会記録

議事概要

 佐々木局長:定刻開会を告げて、前回の参与会で炉の再検討につき大臣からお話があり、本日研究所から資料が提出されている。焦眉の急を要する問題であるし、研究所側に御説明願いたい。

 駒形副理事長:まずCP−5型から始めたい。(事務局資料朗読)
 すでに、ウォーター・ボイラー型を発注し、明年5、6月から稼働することになっているがそれだけでは研究用として不十分なのでCP−5型に期待するところが大きいわけであると資料の内容を説明しつつ同型の利点を列挙した。

 大西氏(倉田参与代理):アイソトープを製造する場合、コバルト60がどのくらいできるであろうか。

 駒形副理事長:詳しくは別の資料にある。

 大屋参与:CP−5型に賛成はするが、安全性等の点で大きいのがよいのならばその方にしたい。

 大西氏(倉田参与代理):その型が最も多く売れているのではあるまいか。

 嵯峨根参与:実験用としてはよく使われている。

 有沢委員:直接の問題ではないが、金属材料実験炉の必要となる時期はいつごろか。

 嵯峨根参与:国産炉という意味如何にもよるが、炉全体を国産することになれば、M.T.R.(材料実験炉)が先に要る。

 駒形副理事長:なるべく早くとは思うが、M.T.R.は高級なものであるし、いろいろ困難がともなう。

 (嵯峨根参与、駒形副理事長、有沢委員の間で時期について討論が行われた。)

 三島参与:大体有沢委員と同意見で金属材料試験炉が必要と思うし、殊に自分としては早いことを希望する。動力炉の要求を検討願っておいて、必要な時期には直にM.T.R.を入れていただくように特に政府に要望しておきたい。

 菊池参与:大体同意見である。

 伏見参与:CP−5型とM.T.R.とにはそれぞれ特色があり、国産炉の建設を主眼とするならば当然M.T.R.に行かねばならない。問題は研究所の目的如何にあるのであって、発電が主眼であるか否かによって左右される。一種のコンバーターを作り、遅い中性子を早いものに転換する方法もあるので、研究所の方で御検討願いたい。

 駒形副理事長:当然そのことは考えているがなおよく研究したい。はじめからCP−5型をやめてしまうというのは問題であって、施設を作って広く活用するのが研究所の任務の一つであると思う。

 菊池参与:中性子束密度1014を特別注文されたのか。

 嵯峨根参与:そのとおりである。しかしギャランティを確める必要がある。

 藤岡委員:コンバーターは入っているか。

 嵯俄根参与:入っているが各社仕様が違う。

 正力委員長:既定方針どおりCP−5型導入を進めることとする。

 (次に事務局「アイソトープの生産について」朗読。)

 駒形副理事長:資料中のアイソトープの需要量は、原子力局で調べられた結果である。ある程度輸入して後の補給は漸次日本でできるようにしたい。現在輸入しているコバルト60の実情にかんがみると、天然ウラン・重水型炉で生産を行わねばならなくなってくる。炉を輸入または国産した場合のアイソトープの推定価格が輸入価格に比べていかになるかという検討はなかなか難しいが、概略推察してみてあると資料の内容につき説明があった。

 嵯峨根参与:(敷えんして)なかなか複雑であるが、大体まとめてみた次第である。実験炉の旧式化したものをアイソトープ専用炉に転用することも考えられる。

 藤岡委員:コバルトだけで計算されたのは一応尤もではあるが、いろいろ考え合わせると、果して他のを無視してよいであろうか。また、炉の構造上穴を多くあけることが可能であるか。

 嵯峨根参与:天然ウラン・黒鉛型炉ではコバルトはできないわけである。

 石川委員:使用量増加のカープがにぶいように思えるが、大学と原子力研究所と協力して生産することを考えていただきたい。

 中泉参与:価格がやすいようであるが、原価を表示されたものであろうか。また、日本で医療用にコバルト60が多く使われるのはエックス線装置の不備をおぎなうためもある。それからコバルト60はガンマー線が目的であるが、セシウムの大量生産がアメリカで成功したら、殊に医療用にはコバルトを使用しなくなる。

 (つづいて国産1号炉の問題に入り、事務局から資料を朗読。)

 駒形副理事長:国産という意味は、材料など足りないもの、あるいは、入手に時間を要するものは輸入するという意味を含んでいる。それを作ることが技術水準を向上させるものでなくてはならないし、またでき上ったものが役立つものでなければならない。

 瀬藤参与:デリケートな点はあるが、民間業者にも一応進捗状況を知らせた方がよいように思われる。

 駒形副理事長:民間メーカーと無関係に行っているわけではない。個々それぞれのグループと連絡しているが、なおよく検討を加えるつもりである。

 大西氏(倉田参与代理):各社の設計を集めて研究所の設計をされるのではあるまいか。

 大屋参与:果して研究所で優劣を判断できるであろうか。本当に国産炉をやるというのならば、英国のようにグループを作らすべきである。

 児玉参与:仕様書を誰が検討するのであろうか、自分の物を自分で検討する形にならないか。

 駒形副理事長:御意見一々ごもっともではあるが、研究所でできるように持ってゆきたい。

 児玉参与:建設の主体はどこにあるか。

 嵯峨根参与:現在は全部がいわば赤ん坊の状態であって、なかなか難しい。

 正力委員長:善処方を考えたい。

 有沢委員:研究所が中心となり、官民一体となってやる方法を講ずべきである。

 岡野参与:現段階では国産炉の型を研究している途中であって、直ちに最終結論を出すのは浪費が多い。筋を立ててじっくり行うべきである。もう一つは、あくまで研究所が中心となるべきである。たとえばジェット・エンジンの場合、各社の共同出資の形となったが、全日本的目的からできたものであって、原子力の場合もそれと同様に、外部から嘱託で入るとか、設備を提供するとかの方法を考えられたい。

 正力委員長:現在、既成の大家はいないわけで、研究所だけでもできず、官民合同でやらねばならない。

 委員長の発音に対し、岡野、大屋両参与から賛成意見がのべられた。

 大西氏(倉田参与代理):設計は衆知をあつめてできたとして、炉をどこで作るか。

 嵯峨根参与:セーフティの問題で、アメリカで生産しなければなるまい。

 大西氏(倉田参与代理)、瀬藤参与:研究所の責任が大きくなるし、方針を統一してやっていただきたい。

 福田氏(松根参与代理):電気事業者は原子力発電を急ぐわけであって、諸外国に比べて今日日本が遅れているとすれば、まず動力炉を輸入してでも追いつき、然る後、知識を糾合するなり、外国と提携するなりしてはいかがであろうか。

 藤岡委員:動力用原子炉とは問題が違うわけであって、ここでいうのは低温低圧の研究用のものである。

 福田氏(松根参与代理):自分としては多少疑義あり、重ねてお願いしたい。

 正力委員長:研究偏重という声がないでもないが・・・・・・。結論は次回までに考えてもらいた

い。

 岡野参与:国産第1号炉への方向は結構であるとしても、外国のものも、たとえば昔の軍のように、どしどし使ってよいと思う。

 佐々木局長:国産炉についての各界の協力の方法や規模はいずれ再検討いたしたい。次に、訪英調査団について、前週金曜日の電報連絡によると、(1)ヒントン卿はクリスマスまで病体の予定である。(2)10月中旬ころ来られるがよろしかろう。(3)コールダーホールには3週間くらい滞在ということにいたしたい、ということである。研究所への連絡によれば、先方では6万キロが最も良く、1、2万キロでは問題にならずまた、1基だけ単独の注文は希望しない由である。プルトニウムは各種の報道を総合判断すると、おそらく英国へ送り返すことになるだろう。

 正力委員長:(敷えんして)6万キロのはすでに設計もでき上っているそうである。

 大屋参与:ヒントン卿から自分あてにも、政府の調査団と産業会議の調査団と両方来ることは了承した、時期は10月以降がよい、といってきている。

 佐々木局長:長期計画の後半を審議していただく時間がなくなったので、事務局の1案を次回にお目にかけるようにしたいと思う。伏見参与のアイソトープ・センターに関する意見書は後でお読みいただきたい。

 次回は8月24日(金)に開催することを決定して年後5時閉会した。