原子燃料公社設立準備の経過

設立委員の任命

 原子燃料公社法(昭和31年5月4日公布法律第94号)附則第2条第3項の規定にもとづいて、設立委員として法制局次長高辻正巳氏ほか15名が昭和31年6月19日内閣総理大臣により任命された。(設立委員氏名は本誌Vol.1No.3(7月号54ページに既載につき省略する。)

設立準備事務室の設置および役員の指名

 昭和31年7月2日から港区芝琴平町7番地住友銀行虎の門支店内に設立の準備を開始するため事務室を設け、7月17日設立委員会事務局職員となるべきもの9名を内定した。ついで7月19日原子燃料公社法附則第2条第1項にもとづき、理事長となるべきものとして高橋幸三郎氏、監事となるべきものとして村田八千穂、宮原幸三郎の両氏が指名され、同時に副理事長となるべきものとして原玉重氏が内定した。

 さらに昭和31年7月19日午後2時から原子力委員会室において、内定した理事長および副理事長と原子力局との第1回打合会を開き、局側から原子燃料公知設立事務の進捗状況および要望事項の説明を行った。

第1回設立委員会開催および設立委員会事務局の設置

 昭和31年7月20日午後2時から内閣総理大臣公邸において開催され、正力国務大臣挨拶の後理事長、副理事長および監事の紹介があり次いで、設立委員会規程、起業目論見書、設立準備費予算その他必要事項の審議決定をみた。なお起業目論見書のうち事業計画の内容は次のとおりである。

 「原子力の開発および利用の促進に寄与するため、国内の核原料物質の探鉱を急速に行うとともに、その採鉱および選鉱ならびに核燃料物質の生産加工を行い、昭和34年度に日本原子力研究所に建設される予定の国産第1号炉に国産天然ウランの供給ができるよう努力し、以降の原子炉についても国産核燃料物質を供給することを目標とする。

 差し当っては国内資源の開発を早急に行うため、通商産業省地質調査所が昭和29,30両年度において実施した基礎調査の結果、有望地域と目される鳥取、岡山両県下において探鉱を開始し、昭和32年度にはさらに探鉱を継続拡大する一方、採掘を必要とする地区については開発に必要な諸施設を整備して採掘に着手する。

 また鉱石の精練の中間試験を実施するため、適当な敷地を選定し、昭和32年度上期に運転開始を一応の目途として土地、建物および中間試験の施設の整備を行う。その後逐次核燃料の生産加工の中間試験設備から生産工場への切換を行うように計画する。さらに燃料要素の再処理と廃棄物の処理についても国内に設置される動力試験炉の操業と平行して実施し得るように中間試験を開始する。

 この事業計画の進行にともなって、初年度の人員は100名ていどとするが、逐次要員の増加を図るものである。」

 なお設立準備予算は150万円(内訳省略)である。

 原子燃料公社設立委員会事務局は設立委員会規程にもとづき、昭和31年7月20日正式に発足し、その事務所を前記住友銀行虎の門支店内に設置した。

第2回打合会

 昭和31年7月27日午前9時30分から原子力委員会室において、さきに内定した理事長、副理事長、監事および7月26日理事に内定した佐藤源郎氏、豊島隆氏と原子力局との打合会を開き、原子力局側から原子燃料公社の関係法令の説明が行われた。さらに午後1時30分から設立委員会事務局において内定役員出席のもとに原子燃料公社長期計画、昭和31年度予算および事業計画(案)、原子燃料公社組織(案)、昭和32年度予算(案)などについて説明が行われた。

 なお第2回設立委員会は昭和31年8月7日開催され、8月10日原子燃料公社設立発足の運びとなった。