日本原子力研究所設立の経過について

 日本原子力研究所法附則第2条第3項の規定にもとづき、設立委員として内閣官房副長官田中栄一ほか19名が昭和31年5月11日内閣総理大臣により任命され、後科学技術庁発足にともない科学技術庁次長篠原登が6月5日追加任命された。なお、設立委員の氏名および役職は次のとおりである。(敬称略いろは順)

設立委員氏名

    役 職

石原 武夫

  通商産業事務次官
石破 二朗   建設事務次官
石坂 泰三   経済団体連合会会長
友末 洋治   茨城県知事
茅  誠司   日本学術会議会長
高辻 正巳   内閣法制局次長
田中 義男   文部事務次官
田中 栄一   内閣官房副長官
内田 俊一   東京工業大学学長

上野 幸七

  経済企画庁次長

藤山愛一郎   日本商工会議所会頭
駒形 作次   財団法人原子力研究所副理事長
荒木茂久二   運輸事務次官
迫  静二   全国銀行協会連合会会長
木村忠二郎   厚生事務次官
岸本 義広   法務事務次官
篠原  登   科学技術庁次長
平川  守   農林事務次官
平田敬一郎   大蔵事務次官
菅 札之助   社団法人日本原子力産業会議会長
杉  道助   大阪商工会議所会頭

 第1回設立委員会は、昭和31年5月15日午後2時から内閣総理大臣官邸において開催され、設立委員会規程、起業目論見書、定款、出資金募集要領、設立準備費予算その他必要な事項の審議決定をみた。

 設立委員会事務局は、第1回設立委員会において議決された設立委員会規程にもとづき、5月15日に発足し、その事務所を港区芝田村町1丁目3番地富士銀行新橋支店内に設置した。

 定款は、第1回設立委員会において議決された後、ただちに日本原子力研究所法附則第2条第4項の規定にもとづき、設立委員会委員長名をもって内閣総理大臣に対し認可申請を行い、5月19日原案どおり認可になった。なお、この定款は、日本原子力研究所浜本則の規定をほぼそのままでリピートしたほか、出資証券の名義書換、印鑑の届出、理事会議等について、若干新たな規定を設けたに止まっている。

 民間出資の募集は、定款の認可後第1回設立委員会の承認を得た募集要領にもとづき、5月21日付の官報および日本経済新聞に掲載された募集公告により開始された。募集公告開始後ただちに財団法人原子力研究所石川理事長から財団寄附者に対し日本原子力研究所の出資応募を依頼するとともに、後述第3表に掲げる14銀行を取扱銀行に指定し、その募集事務の一部の取扱を委託した。また一方においては正力国務大臣に財界代表の設立委員である石坂、藤山、迫、菅、杉各委員と石川財団理事長を加えて出資金募集打合せを行い、さらに産業界の各業種団体の代表者および財界代表設立委員の参集を求め菅原子力産業会議議長が幹事役となって出資金募集について打ち合せ、広く各業界の協力を求めた。このように各界の協力を求めることにより募集期間の5月21日から6月9日までに法人200社と個人2人から応募申込があり、その総額は2億4,800万円に達したが、その取扱銀行別および業種別の内訳は、第3表および第4表に示すとおりである。第4表に示すように応募金額の過半は電力業界が占め、次に機械、化学等が続いている。

 昭和31年6月8日日本原子力研究所法附則第2条第1項にもとづき、理事長となるべき者として安川第五郎氏、監事となるべき者として岡野保次郎氏が指名された。

 民間出資の募集終了直後、昭和31年6月11日日本原子力研究所法附則第2条第6項の規定にもとづき、設立委員会委員長名をもって内閣総理大臣に設立認可の申請を行い、6月13日認可になった。

 第2回設立委員会は、昭和31年6月13日午前10時半から東京会館において開催され、設立準備費の決算、理事長となるべき者への引継事項その他必要な事項の審議決定をみた。

 政府出資金の払込申請は、昭和31年6月13日日本原子力研究所法附則第2条第7項の規定にもとづき、政府に対して行われ、6月15日2億5,000万円の払込を受けた。

 政府出資金の払込のあった6月15日において日本原子力研究所法附則第2条第8項の規定にもとづき、設立委員会委員長から理事長となるべき者安川第五郎氏に設立に関する事務を引き継ぎ、同法附則第2条第9項の規定にもとづき理事長となるべき者安川第五郎氏が設立の登記を申請し、即日登記完了した結果、同法附則第2条第10項の規定により日本原子力研究所は成立した。なお、同日同法附則第3条の規定にもとづき、財団法人原子力研究所は解散し、その一切の権利および義務は新研究所に承継された。

日本原子力研究所の資本金明細書(民間出資分)
第3表 取扱銀行別内訳 31.6.15 第4表 業種別内訳 31.6.15