原子力開発利用基本計画に対する意見
(昭和31年5月7日 第3回参与会)

 前号14ページ「原子力委員会参与会」においてすでに記述したように、5月7日開催された第3回参与会において原子力開発利用基本計画について参与ひとりひとりの意見を聴いたが、以下は各参与の発言を項目別に整理して再録したものである。(文責在筆者)

A 基礎研究について

1.基礎研究も必要であるが、効力、アイソトープへの応用面も必要であるから平行して研究すべきである。   (松根参与)
2.基礎研究グループを持つべきである。   (児玉参与)
3.ケミカルプロセスの研究を行う必要がある。   (児玉参与、木村参与)

a)国費の使用について

1 国内関連業界の育成はできるだけ研究テーマの重複をさけて補助金を出すようにすべきであり、中間試験はfuel−Sizeの設計を行ったものについて認めるというように、目的のはっきりしたものをえらぶべきである。   (児玉参与)
2 原子力研究所と原子核研究所の2本建は外国にも例が少ないから国費の使い方に注意されたい。   (瀬藤参与)
3 予算使用の成果は年々正確に報告さるべきである。   (田中参与)

b)技術導入について

1 技術導入を行うには専門家をあつめて協議し、その選択を誤まらぬよう注意されたい。   (田中参与)
2 国内技術の受入態勢が充分でないばあいには、技術導入しても失敗する可能性が強い。   (脇村参与)
3 技術導入と同時に基礎研究をも進める必要がある。両者の重点のおき方は資料にもとづいてきめるべきである。   (三島参与)
4 技術導入に際しては、国内の技術を結集することが必要である。   (瀬藤参与)

c)核燃料開発関係について

1 原案どおり計画を推進すべきである。   (木村参与、久留島参与)
2 トリウムについても貯蔵法等を考えるべきである。   (木村参与)
3 核燃料政策も重要であって、濃縮か、天然かという問題の検討も必要である。   (田中参与)

d)金属材料関係について

1 金属材料は種々の炉を予想し、若い研究者にテーマを分担させて研究を行わせるようにすべきである。   (三島参与)
2 金属材料中一般的なもので、なおかつ原子力にも関係のあるものは民間の専門会社と共同研究を行うべきである。   (三島参与)
3 材料組合せ技術、燃料棒等の問題も、純理論は研究所で行い、作る方は民間会社とタイアップするようにしたい。   (三島参与)

e)技術者の養成訓練について

1 養成方法を早く確立すべきである。   (脇村参与、嵯峨根参与)
2 文部省と話し合いをして行うべきである。   (瀬藤参与)
3 技術者の国内訓練のできる処置を海外留学と平行して考えるべきである。化学関係の専門家養成は大学の施設を利用すれば国内でもできると思う。   (木村参与)

f)原子炉について

1 研究、製造、使用は官民合同で行うべきである。   (岡野参与)
2 最初の数段階は輸入するにしても、国産炉を組立てる方が技術者の養成に役立つであろう。   (菊池参与)

B 原子力発電について

1 原子力発電はコストの急激な低下を招くから、コストの比硬から原子力発電の量をきめるべきである。   (児玉参与)
2 現在各国の発電は試験的であるから、これを急いで導入することはない。   (菊池参与)
3 信用あるところの試験炉を導入することは意義がある。   (岡野参与)
4 1万kW2台の設置が適当であると思う。   (松根参与、岡野参与)
5 動力の専門委員会を設置し、外国の調査団にデッサンを考えてもらいたい。   (松根参与)
6 電力業者が5年後に動力用原子炉設置を目標とし、そのために来年動力用試験炉を輸入しょうとすることは反対はないと思う。   (大屋参与)
7 学者側のいうように躊躇するには当らないが、1年を争うものでないから慎重を要する。   (瀬藤参与)
8 電力界は電力需給の逼迫に応じて時を稼ぐという態度をとり、一方学界と産業界は時を無駄にしないで、この間に基礎研究をすすめることがのぞましい。   (田中参与)
9 原子炉の設置は東京に偏しないようにすべきである。   (倉田参与代理大西氏)
10 電力問題は、中間的に石油、石炭の混焼型から、ウラン、重油の混焼型にしたらよいと思う。  (倉田参与代理大西氏)

C アイソトープ関係

1 アイソトープセンターの設置場所等についてはアイソトープ配分の問題があるので特に考慮すべきである。   (木村参与)