参 考  各国の留学生受入れに関する回答

イギリス

1.ハウエル原子力研究所のアイソトープ・スクール

 アイソトープ・スクールは研究所のアイソトープ部の一部としてthe Security Fenceとは別個に設置され、ラジオアイソトープの測定、処理および使用を指導する基礎コースとして1951年4月に発足した。そのコースの修了者数は1955年6月現在で400名以上にのぼっている。

範囲と目的

 コースの期間は4週間で年に約7回開催される

 このコースはその関連科学分野においてラジオアイソトープを研究および工学のための資材として利用したいと要望している大学卒業ていどの者を指導するために設けられたものである。このコースではアイソトープの特殊応用に関する専門的訓練は実施せず、もっぱら研究の実地面に重点を置き、学生が提案した応用について職員および他の分野における専門家達と討論するよう指導されている。講議、映画および見学の細目はコース開始前に配付される。講議および実地研究で教授する問題のアウトラインは別紙のとおりである。授業時間は午前9時から5時半までで、1週のうち月曜から金曜までの5日間行われる。

設   備

 近代的電子管装置およびその他の装置が完備しており、その種々な装置を利用できるよういろいろな機会が与えられるようになっている。

授 業 料

 授業料は4ポンドで、コース中に行われる照射およびその他のサービス費すべてを含むが、宿泊、交通、および食事の費用は含まない。授業料請求書は授業開始前に送付される。その送金はアイソトープ・スクール向け出すこと、これは英国原子力公社開発部に支払われる。

入学申込

 規格の入学申込書に書き込んだ後、アイソトープ・スクールへ返送すること。これはアイソトープ・スクールの管理委員会に提出され、ここで応募者の選抜が行われる。1コースの収容者数には制限があるため、補欠人名簿があり、欠員のある場合には学校側と相談してよい。

宿   泊

 原子力研究所附近の宿泊所には制限があるため、宿泊所について要請があれば、アイソトープ・スクールが一応手配する。この点について特別な要求のある場合には申込書を返送する際記述すること。

交   通

 授業開始の前日午後デットコット・ステーションに集合、たいていの場合、毎日の交通はハウエル職員と同程度の一般交通費でホテルと学校間の交通の便がある。

食   事

 中食はハウエル内でできる。

その他のコース

 原子炉工学に関するコースの問合せは原子力研究所の原子炉学校に申し込むこと。電子工学についての短期講習は常時電子工学部で開催されており、問合せはそこに申し込むこと。

I 講義内容

1.核物理学
 核の構造、核反応、ラジオアイソトープの製造。
2.放 射 能
 放射性崩壊、放射線の性質とその特性、ならびに他の物質との相互作用。
3.放射化学
 化学的考察、特にトレーサー技術への応用、分析および研究へのラジオアイソトープの使用。
4.装   置
 イオン化放射線の検出および測定の方法、種々な測定港の範囲と限界。
5.保健物理学
 線量測定、遮蔽、最大許容水準、研究所の設計、放射線および汚染の警告。
6.そ の 他
(a)実験の範囲および放射線源の調整。
(b)アイソトープの工業利用。
(c)アイソトープならびに照射設備の利用方法。
(d)時間のゆるすかぎりまた要望によって特別講義
 を補足する。

 訓練および工業、医学上の映画が利用され、また研究所ならびに設備ことにアマーシャムのラジオ・ケミカル・センターへの見学が予定されている。

II 基礎実験

 実験の目的とその技術に関する講義を行った後、実験を実施する。

1.ガイガー計数器、プラトー・ウラン標準線源の調整
2.ガイガー計数器、統計
3.ベータ粒子吸収曲線、燐32の源線調整、稀釈、点滴法、汚染発見のためのモニターの使用、汚染したガラス用器の清浄化、ベータ粒子到達範囲の決定、パラリシス・タイムおよびバックグラウンドの矯正、ヘザー分析器の調整
4.金198の線源からのガンマ線の吸収ガイガー計数器のベータおよびガンマの計数効率についての比較。
 ベータ粒子到達範囲を決定するヘザー・アナライザーの使用。
5.燐32および硫黄35を使用したベータ線源による後方散乱。
6.ベータ粒子線源の自己吸収。
 カルシウム45の線源の調整。
7.よう化エチルにおけるジラード・チャルマー反応、液体計数管の使用。
 よう素128の半減期の決定。
8.水酸化鉄における燐32の吸収。
9.塩化ナトリウムの照射によって製造された2次放射能坦体および牽制坦体を使用した燐32、硫黄35、塩素36の放射化学分析と確認。
10.放射性化学分析、いろいろな標本における鉄の算定。
11.ナトリウム、カリウム、および臭素の分析を指示する。
  オーソラジオグラフィ連結のペイパー・クロマトグラフィ、吸収曲線および半減期による確認法。
12.炭素14およびその他の低エネルギーのベータ放射体を測定する比例計数管の使用。
13.ガンマ放射体を測定するシンチレーション・カウンターの使用。
 個々の問題については職員と討論できる。

 コースの後期においては、ラジオアイソトープの特殊応用と関連して多少の予備実験も可能である。

 また数多くの課外実験もオーソグラフィ・ガンマ・ラジオグラフィ、ガス・カウンティング・ソグウイッド・シンチレーター、ガンマ・スペクトロムリイ等を応用しながら実施できる。

2.ハウエル原子炉学校

  ハウエル原子炉学校は大学卒業ていどの工学者ならびに物理学者に原子炉工学の全分野にわたってその指導を与えるのを目的として設立された。このコースは全分野にわたるバランスのとれた知識を教授するもので、この新分野における専門的技術の訓練を目的としている。

 おのおのコースの期間は3ヵ月で年に3回、9月、1月、5月にそれぞれ開始される。

 適当な資格ある応募者にはその門が開かれているが留学生の場合は自国の原子力機関またはその他の関連政府機関の支持を得なければならない。入学申込みに関してはすべて英国原子力執行機関の承認に従って行われ、この機関がその授業の開始2ヵ月前に入学の割当を決定する。

教 科 課 程

A 核物理学
 原子および核の構造、核安定度、放射能、および核分裂、アルファ線、ベータ線、ガンマ線および中性子と他の物質との相互反応。
 (このコースは核物理学の基礎知識を持たぬ者のために核エネルギーの入門として設けられている)
B 基礎原子炉工学
 流体流動、伝導ならびに強制と自然対流を含む基礎熱伝達、基礎熱力学。
 (このコースは工学について経験のない者のために置かれたもので、Aコースと並行して教授されるが、希望によっては両方に出席できる。)
C 原子炉理論
 (a)速中性子の減速と中性子拡散の基礎的取扱、裸の原子炉および反射材付原子炉の臨界寸法の計算、原子炉力学、ポイズニングおよび温度効果。
 (b) 制御棒理論、長期にわたる反応度変化等の特別論題を含む(a)の上級コース。
D 原子炉工学
 原子炉内の温度分布の計算に対する熱伝達理論の応用、熱応力の算定、冷却機の選択、水・ガス・液体金属による冷却法の問題、特殊ポンプ技術、放射線による損傷ならびにそれによってひき起される2次的放射能、工学上の原子炉の分類、可能なパゥワーサイクルおよび経済、測定および制御、原子炉シュミレーター、原子炉の安定度、安全度ならびに原子炉建屋。
E 原子炉物理学
 研究原子炉、指数炉実検、臨界集合実験およびゼロ・エネルギーの実験、カウンター類の操作、クロス・セクションの算定、燃料サイクル、遮蔽、放射線障害。
F 保健物理学
 放射線の最大許容水準、放射線測定器使用、原子炉の保全、廃棄物処理。
G 冶   金
 燃料要素の加工ならびに照射による変化、ウラン・トリウム、キャニング・マテリアルの特性、原子炉用合金、セラミックス・サーメット、腐しょくの問題。
H 化学ならびに化学工学
 原子炉材料の製造−−黒鉛、重水、ウラン、トリウム、ジルコン、ベリリウム。
 化学処理工場の運転。
I 実地作業
 天然ウラン黒鉛型の指数炉の実験、原子炉シミュレーターの操作、水中における中性子の減速距離の測定、遮蔽の実験、パイル、オシレータ一による測定法、B.E.P.O.の始動、液体金属の熱伝達システムに関する算定法、ガス熱伝達、沸騰水熱伝達、原子炉の燃料要素の燃焼、ウランの熱サイクル、放射線モニターの較正。

 実験コース中はハウエル原子力研究所の種々の設備、たとえば遠隔操作部、廃棄溜、ハウエルの原子炉工場等の見学が行われる。その他、コールダー・ホール原子力発電所の見学もある。

 休憩時間には討論会が開かれ問題点について討論できるようになっており、これには講師ならびにその関連分野の専門家たちが出席する。

授 業 料

 基本授業料は250ポンドで講義、実地研究および見学の費用はすべて含まれているが、宿泊料は含まれていない。

スイス

 スイスにおいては、グループ研究の形式を重んずるチューリッヒの理工科大学またはパーゼル大学で核物理学を研究することが可能である。その研究活動に参加し研究所へ通うためには、まず大学の研究をなさなければならない。通用語については、すべての研究所で話されているので英語で十分である。

 講座と研究所に通うために支払うべき総額は半期ごとに250フランていどである。スイス当局がその義務を引き受けることはなく総て学生の責任である。

 またスイスで原子炉の研究を計画しているS.A.Reactureは米国から水泳プール型炉を購入したが、それは本年末ようやく運転されるはずである。その時にはスイスの技術者もこの炉の運転になれることとなる。他の建設中の原子炉は専門家の意見によれば3年以内に設備されることはできない。

 スイス白身本問題について十分な経験を得ていない間ではこの方面の研究実験をなす機会を外国人技術者に提供することが可能とは思われない、

 しかしながら原子力分野の特別研究活動に外人技術者を参加させる問題は事態が進展した時には新たに考慮されることとなろう。

 上記のとおり在スイス日本国大使館の萩原大使から原子力関係技術者のスイス留学について連絡があった。なお原子力関係技術者のスイス留学の可能性についてスイス外務省国際機械局ケーニッヒ次長は次のように述べている。

 スイス原子力研究はあまり発達していないので果して日本の研究員を受け入れることができるかどうか疑問であるが、チューリッヒおよびパーゼル2大学において各2名を受け入れ得る。留学の期間は最低1年は必要である。専門分野に関する Nuclear Engineering Reactor Technology については上記のとおりであり、Health Physics についてもそれのみを専門とする留学にはスイスは向かないであろう。

 他の3分野すなわちNeutron Physics,Radio Chemisty および Metallurgy and Solid Physics については可能である。

フランス

1.原子工学関係講座には目下のところ、定員の関係で日本人研究員を受け入れる余地はない。
2.ただし、グルノーブル・センターのEcoled’inge nieurs(学長 Noel 教授)第4学年の講座は、日本側希望の研究分野をカバーし、かつ大学卒業ごろの若手技術家向きで適当と考えられる。この授業料は年額12,000フランである。
3.日本側において右グルノーブル・センターに留学せしめたい希望を有する候補者がある場合には日本国大使館から原子力庁Bertrand Goldschmidt対外関係局長あて連絡方希望する。

イギリス(大学関係)

 当地各大学における原子力関係講座は次のとおりである。

1.ロンドン大学(Queen Mary College)Nuclear Engineering(定期講座)
2.マンチェスター大学 Nuclear Engineering(5、6週間、不定期)
3.バーミンガム大学Nuclear Engineering(1年)
4.グラスゴー大学Nuclear Engineering
5.アクトン工業大学(ロンドン)Nuclear Engineering(20週間)
6.チェルシー・ポリテクニーク(ロンドン)Nuclear Physics

 なお、別添の「英国各大学における科学研究」は大学院コースにおける各研究について詳細に説明しているから、これにより適当な大学の適当なコースを御選択の上御回報煩わしたい。

 (注)「英国各大学における科学研究」は外務省国際協力局第3課に保管

ノールウェー
(31.3.22)

1.The Norwegian Atomic Energy Instituteは1年を下らない期限で日本より研究員を2名受け入れる用意がある。
2・上記研究員の専門分野は次のとおりである。
 Metallurgy,Health Physics,Neutron PhysicsあるいはRadio Chemistry
3.研究員に対する財政的補助は残念ながら支給できない。研究員の生活費は本国政府または原子力委員会から支給されているのが通例である。

スウェーデン
(31.4.12)

1.スウェーデン科学研究機関は原則として事情の許す限り当該研究機関と研究分野を同じくする若い外国人研究員勤務者を受入れる用意があるが、具体的には研究又は勤務希望者が経歴、研究業績等必要な資料を添えて希望する研究機関に申請しなければならない。
2.財政的援助についてはスウェーデンにある外国人留学者は通例その本国から奨学金を得ているがスウェーデソにおいて俸給を得ている例もある。
3.スウェーデソの原子力関係研究機関は未だ数も少なく規模も小であり従って受入れ可能な留学生も限られているが、外務省あてに申請書が提出されればこれを適当な機関に取り次ぐ用意がある。

ドイツ
(31.4.26)

1.Neclear Engineering Reactor Technologyについては、現在のところ講座が設けられている大学はないがミュンヘンおよびカールスーエ工業大学において間もなく開始される見込である。
2.Metallurgy and Solid Physicsについてはドイツ各工業大学で講座が設けられている。
3.Radio Chemistry,Health Physicsについては、未だ専門分野として確定しおらず前者については工業大学において後者については大学医学部において講座が設けられ授業が開始されることとなるはずである。現在のところは準備期間中である。
4.留学生の数および留学期関については、何ら制限は存在しない。
5.生活費、研究費等は一般の文化科学の場合におけるのと相違し若干多額となるものと予想されるが大体月額350〜400マルクもあれば必要経費をカヴァーしうる見込み。

 現在行われているフンボルト交換留学生、ドイツ政府留学生等の制度は当然利用し得るも、その他に各大学または研究科等による招請、給費等の事例も若干ある模様であるが、これらはすべて条件が個々に相違しており従って個々のケースにつき話合によるものである。

 なお参考資料として「ドイツ大学のしおり」外務省あて送付されている。