エカフェにおける原子力発電問題

 本年3月7日からインドのバンガロールで開かれたエカフェ(ECAFE)の第8回電力小委員会においてはじめて原子力発電問題が議題として取り上げられ、わが国からも「日本の原子力利用体制」という資料を提出したことはすでに記したとおりであるが(第1号p.56〜60参照)、3月30日帰国したわが国代表団から次のような報告が行われた。

 原子力発電についてはまだエカフェ地域内では全然手がつけられていないけれどもこの問題に対しては予想以上にはげしい意見の開陳が行われた。そのなかでも最も積極的であったのはソ連であって、ソ連は従来の国際会議における同国の慣例をやぶり特に原子力問題には自国語を使わず英語を用いて地域内諸国に直接強い感銘を与えようと努力していた。その演説の要点は、なぜソ連は原子力発電に着手したか、その開発状況はどうか等についてのべ、さらに技術をいつでも提供する用意があり、この面でオープンであるということにあった。

 次にイギリスはエネルギー資源が不足するため原子力発電を推進していると述べ、地域内諸国へのこの面での援助はコロンボ・プランを通して行う意図であることを明らかにした。アメリカは単に自国の原子力発電の開発状況を記したパンフレットを配付し、それを読み上げるていどであった。

 地域内諸国側としては、まずパキスタンが同国の水力、石炭資源がともに貪弱であるためぜひとも原子力発電を推進したい意向であると述べた。インドはまだ在来エネルギー資源を豊富に有するため原子力発電はあくまでコマーシャルな問題としてのみ考えており、しかしいつかは必要とするものであるので今日からその研究を行う要があると強調した。フィリピンは原子力の背景を有しない国が原子力先進国の援助を受けると将来ともその国の影響を大きく蒙るおそれがあると述べ、米国がコロンボ・プランを通じて供与方を申し出ている「アジア原子力センター」に関してはほとんどふれるところがなかった。

 以上のごとき各国の演説が行われたのち、エカフェ電力小委員会としても今後引き続き原子力発電問題を研究することを決定したが、エカフェ事務局としては原子力関係の技術援助もエカフェの機構を通じて行われることを希望していた模様である。