科学技術庁の設置およびその組織

1 科学技術庁の設置にいたるまでの経緯

 従来わが国において他の部門に比しやや等閑視された傾向にある科学技術を大いに振興するため、これに関する特別の行政機構を設置すべきであるという意向はすでに数年来政界、学界の一部及び官庁技術陣を中心として強まりつつあったが、これが政府の課題として公式にとり上げられたのは、昨年通常国会に議員提案の形で提出された科学技術庁法案に関連して政府においてもこの問題解決のため至急検討を進め、近い将来法案を政府から提出する旨を表明して以来のことである。その後行政機構改革に関する主務官庁たる行政管理庁は科学技術行政機構及びこれと密接な関連を有すると考えられた原子力行政機構について行政審議会に諮問を発するとともに関係各省庁のこの問題に対する態度をきき、その結果が昨年11月一応答申案としてまとめられたが、あたかもその時期に内閣改造が行われたこと、ともに検討を続けられていた原子力行政機構については内外情勢の急激な進展に即応するためその早急な整備が要望され臨時国会に原子力委員会及び総理府原子力局の設置に関する2法案を政府提出する旨の決定をみたこと等の理由により、科学技術庁設置に関する法律案は臨時国会への提出を見送られざるを得なくなった。科学技術行政機構それ自体に関しては、行政審議会の答申をどのように取り扱うかが未解決のまま審議会が全面的に改組され、他方昨年末与党科学技術特別委員会も独自の案を発表するという状況でその帰趨が注目されていたが、改組後の審議会が全般にわたる行政機構の改革という大問題に取り組んでその結論が相当遅れることをおもんばかり、とりあえず科学技術庁の設置を急ぎ将来全般的な機構改革ともにらみ合せて根本的な再検討を行うということで政府与党間の意見調整が行われ、おおむね昨年11月の審議会答申に近い内容を持った法案が2月上旬政府から国会に提出され、一部修正の上3月末通過成立し、3月31日法律第49号として公布を見た。

 なお科学技術庁の発足までには予算の移替、定員の振替,庁舎の敷備等にある程度の準備期間が必要なことを見越して、公布後2月以内に施行期日を政令で定めることとなっていたが、このたび漸く設置準備を終え5月19日法律及び附属政令が施行され開庁の運びとなった。

2 科学技術庁の組織及び所掌事務

 科学技術庁の組織及び所掌事務は資料の設置法、組織令および本項末尾の機構図を一読されれば明らかと考えられるので、ここではその特色を概説するに止める。法律立案の際から科学技術庁の性格、任務等をどのように考えるかは大いに議論のあったところであるが、結論として既存各省庁の科学技術に関する所掌事務を総合的な観点から調整し統一的な立場で方向づけるという総合調整・総合企画官庁としての性格が明らかに打ち出されたといえよう。その結果第1に官房を除く各局すなわち企画調整局、原子力局、資源局及び調査普及局はそれぞれ科学技術行政協議会事務局、総理府原子力局、資源調査会事務局並びに工業技術院及び特許庁の一部のごとき従来科学技術に関する総合調整機能を有していた部局または多数部門に関連を有し総合調整・総合企画官庁の一部となることが適当と考えられる部局の発展的な総合という形で組織されることなった。また第2に各省庁所属の試験研究機関については、将来中央地方を通じてその統合存廃を検討するという閣議決定の趣旨に沿い、とりあえず総合的な試験研究機関としての航空技術研究所及び新設の金属材料技術研究所のみを附属研究機関することとした。第3に上記のごとき総合調整・総合企画の機能を円滑に遂行できるよう科学技術審議会、資源調査会等の諮問的・調査的な審議会を附属機関としてここに学識経験者を集める体制を整え、かつ、特別な職として審議官及び調査官を置いて企画調整の機能遂行に遺憾なからしめることとしている。なお官房各局の内部組織及び原子力委員会との関係については、次図のとおりである。


科学技術及び原子力に関する行政機構図


科学技術庁原子力局の組織および事務分担