第2章 国内外の原子力開発利用の現状
7.バックエンド対策

(参考)諸外国における原子力施設廃止措置動向

①米国
1992年までに米国で永久停止された原子炉は,研究炉も含めれば既に100基に達している。原子炉の廃止措置の方法について,米国原子力規制委員会(NRC)によって,即時除染解体,密閉管理または安全保管後の解体,遮へい隔離後の解体の3つの方法が提案されているが,発電炉以外については,長期保管による放射能減衰が少ないこと等から,NRCは即時除染解体を提案している。
1994年末現在,16基の商用炉が運転停止され,この内一部は密閉管理または安全保管後解体されており,パスフィンダー発電所(BWR,6.2万キロワット)では原子炉部分が解体,撤去され,火力発電所への改造が行われている。フォート・セント・ブレイン発電所(高温ガス冷却炉,34.2万キロワット)は原子炉部分の解体が1992年より進められており,既に最終段階にある。今後,火力発電所に改造される計画である。このほか,1960年代には,4基の実験用あるいは実証用発電炉が既に廃止され,また,シッピングポート発電所(PWR,5.2万キロワット)は1989年までに完全に解体撤去されている。
 DOEの管理する施設については,年間予算が約65億ドル(1995年)に達する環境回復・廃棄物管理計画の下,多くの軍事用,・非軍事用施設の廃止措置が行われている。非軍事施設としては,アルゴンヌ研究所のEBWR*(BWR,熱出力10万キロワット)の原子炉解体,ウェストバレーの旧再処理プラントの除染,廃液処理,ガラス固化処理施設の建設が進められている。さらに,オークリッジガス拡散濃縮工場,ファーナルドサイトのウラン加工施設等の除染解体が進められている。
 また,軍事用施設としては,ハンフォードにある既に運転停止した8基のプルトニウム生産炉の廃止措置計画が進められている。

②フランス
 CEAは,所有している使命を終えた原子力施設について,原則として早期に施設の廃止措置を行う方針で,実験施設を中心に広範な廃止措置計画が行われている。
 これまでに,旧式化したガス冷却炉を含む10基の発電炉が運転停止し(1基は遮へい隔離済),安全保管に向けての関連設備の一部撤去等を行っている。また,ベルギーと共有のショーズ―1発電炉(PWR,32万キロワット)も停止され,遮へい隔離の準備に入っている。
 EDFは炉運転停止後数年程度の遮へい隔離の後,PWRについては40~50年間,内蔵放射能の減衰を待って解体撤去することとしている。


*EBWR : Experimental Boiling Water Reactor

③ドイツ
 商用炉の開発段階で建設された種々の炉型の原型炉,実証炉計9基が運転停止され,現在,廃止措置の対象となっている。また,旧東独地域のソ連型PWR(VVER*)は,安全上の理由からすべて停止され,そのうち,グライフスバルト発電所の5基(各44万キロワット)等については,廃止措置が進められている。原子炉以外では,カールスルーエにある再処理施設(WAK*)が1990年に閉鎖され,廃止措置が計画されている。

④英国
 英国では,原子力発電の主力であるガス炉のうち,老朽化したプラントの廃止措置を開始している。最初の廃止措置は,1989年に運転を停止したバークレイ発電所(コールダーホール型,16万キロワット×2)で,1992年3月までに燃料取出しを終え,安全保管のための措置が行われている。その後,100年程度の密閉管理または安全保管期間が提案されている。一方,UKAEA*はウィンズケールの改良型ガス冷却炉原型炉(AGR*,3.6万キロワット)の解体撤去,ウィンフリスの重水減速軽水冷却炉(SGHWR*炉,10.2万キロワット)の安全保管,多くの研究施設の廃止措置を行っている。また,BNFL*により,セラフィールドにある初期の再処理設備の解体が行われている。
 カーペンハーストにあるガス拡散濃縮プラントの解体撤去は完了した。


*VVER : Vode-Vodjanoj Energetichesky Reacor
*WAK : Wiederaufarbeitungsanlage Karlsruhe
*UKAEA : United Kingdom Atomic Energy Authority
*AGR : Advaced Gas-cooled Reactor
*SGHWR : Steam Generating Heavy Water Reactor
*BNFL : British Nuclear Fuel Plc

⑤ベルギー
 ベルギーのBR-3炉(PWR,1.1万キロワット)の解体撤去作業では,現在炉内構造物の解体が進められている。また,旧ユーロケミック再処理プラントの除染・解体が進められている。

⑥ロシア
 ベロヤルスク発電所(RBMK*l0.8及び19.4万キロワット),ノボボロネジ発電所(VVER,27.8及び36.5万キロワット)及び,シベリア発電所(RBMR,10万キロワット×6基)の計10基の発電炉が運転停止され,廃止措置の準備がなされている。

⑦スペイン
 火災事故を起こして停止したバンデロス-1号炉(GCR*,50万キロワット)では遮へい隔離による廃止措置が進められている。

⑧カナダ
 ターニーズパスチャRI取扱い施設は,汚染機器の撤去,建屋除染も終わり,1993年8月に解体プロジェクトは完了した。建屋は再利用される。ジェントリー1(CANDU-B*,26万キロワット)は,タービン等付属設備の解体が終了し,密封管理中である。また,ダグラスポイント(CANDU*,21.8万キロワット)及びロルフトンNPD(CANDU,2.5万キロワット)も同様に密閉管理中である。

⑨イタリア
 ガリリアーノ発電所(BWR,16.4万キロワット)は,格納容器を密封隔離し,付属施設の解体と放射性廃棄物の処理施設の建設が進められている。

⑩スロバキア
 ボフニチェA1炉(HWGCR*,14.4万キロワット)は破損燃料撤去,除染,廃液処理等を行い,70年間密封管理した後,同炉を解体する計画である。


*RBMK : Reactor Bolshoj Moshchnosti Kanalny
*GCR : Gas Cooled Reactor
*CANDU-B : CANDU-Boiling Light Water Cooled Heavy Water Reactor
*CANDU : Canada Deuterium Uranium Pressurized Heavy Water Reactor
*HWGCR : Heavy Water Gas Cooled Reactor


目次へ          第2章 第8節(1)へ