平成7年版

原 子 力 白 書
     
平成7年10月

原子力委員会
 

平成7年版 原子力白書の公表に当たって

 戦後,我が国は一貫して,原子力エネルギーを,人類の英知をもって,豊かな平和国家の建設にふさわしい形で利用するとの強い決意の下,原子力開発利用を進めてきました。
 昭和31年に原子力委員会が初めて取りまとめた「原子力開発利用長期基本計画」では,原子力の開発利用を,単にエネルギー供給問題の解決策のみとしてとらえるのではなく,広く産業の進展,学術の進歩,国民福祉の増進に寄与する未来を築く政策として位置づけており,そこには,新たな国家建設に向けた,平和的な原子力開発利用への熱い期待を感じることが出来ます。
 以来,我が国の原子力平和利用は着実な進展を遂げ,現在,使用済燃料から回収されるプルトニウム等を燃料として活用する核燃料リサイクルの確立に向けた様々な活動が進展しています。
 一方,世界に目を転じると,戦後世界を規定していた東西の冷戦構造が崩壊し,私たちは改めて,世界における核不拡散体制の維持・強化という問題に直面しています。
 こうした状況にかんがみ,本白書では,まず,核不拡散をめぐる国際動向と核燃料リサイクルを中心とする我が国の動きについて取りまとめるとともに,核燃料リサイクルを確立するに当たって,避けて通ることのできない課題である高レベル放射性廃棄物の処理処分対策の動向を取りまとめることにいたしました。
 さらに本書では,この1年の内外の原子力開発利用の進捗状況についても,分かりやすく取りまとめています。
 本書が,広く国民の皆様にとって,現在及び次の世代の生活における原子力とのかかわり,役割をお考えいただくための一助となれば幸いに存じます。

平成7年10月24日

国 務 大 臣  
科学技術庁長官 浦野 烋興
原子力委員会委員長  
 

本書の構成と内容

 本書は,この1年の原子力全般に関する動向を取りまとめたものである。
 本書の構成としては,「本編」と「資料編」とした。
 まず,本編として,第1章においては,この1年の我が国の原子力開発利用に関する動きとして,核不拡散等をめぐる国際動向及び核燃料リサイクルを中心とした国内動向を取りまとめ,さらに核燃料リサイクル政策を進める上で避けて通れない重要課題である高レベル放射性廃棄物の処理処分への取組について示した。
 第2章においては,「核不拡散へ向けての国際的信頼の確立」,「原子力安全確保」,「情報公開と国民の理解の増進」,「原子力発電の現状と見通し」,「軽水炉体系による原子力発電」,核燃料リサイクルの技術開発」,「バックエンド対策」「原子力科学技術の多様な展開と基礎的な研究の強化」,「原子力分野の国際協力」,「原子力開発利用の推進基盤」及び,「原子力産業の展開」について,それぞれの最近の動向を中心に具体的に説明している。
 また,資料編では,原子力委員会の決定,原子力委員会委員長談話,原子力関係予算及び年表等をまとめた。
 なお,原子力開発利用については,安全の確保が,大前提であり,原子力安全委員会,安全規制当局,研究開発機関,電気事業者,メーカー等は国民の期待に応えてそれぞれの立場で安全の確保に努めている。
 それについては,別に「原子力安全白書」において取り扱われているので,本書においてはその詳細に立ち入ることは避け,原子力委員会に関する基本的事項にまとめることにした。

 

 
目   次

第I部 本  編
 
第1章 原子力開発利用の推進をめぐる諸課題
 
   1.核不拡散等をめぐる国際動向
   2.核燃料リサイクルを中心とした国内動向
   3.高レベル放射性廃棄物の処理処分の具体化に向けて
 
第2章 国内外の原子力開発利用の現状
 
1.核不拡散へ向けての国際的信頼の確立
   (1)我が国の核不拡散への取組
   (2)核燃料リサイクル計画の透明性の向上
2.原子力安全確保
   (1)原子炉施設等の安全確保
   (2)原子力の安全研究
   (3)原子力施設等の安全性実証試験
   (4)環境放射能調査
   (5)原子力安全確保に係る国際協力
3.情報公開と国民の理解の増進
   (1)原子力開発利用に対する最近の世論の状況
   (2)国民の理解の増進と情報の公開の基本的考え方
   (3)原子力に対する国民の理解の増進のための活動の状況
4.原子力発電の現状と見通し
   (1)我が国の原子力発電の状況
   (2)原子力発電の将来見通しと原子力施設の立地の促進
   (3)世界の原子力発電の状況
5.軽水炉体系による原子力発電
   (1)軽水炉技術の向上
   (2)ウラン資源の確保と利用
   (3)ウラン濃縮と核燃料成形加工・再転換
   (参考)世界のウラン濃縮の状況
6.核燃料リサイクルの技術開発
   (1)使用済燃料の再処理
   (2)MOX燃料利用
   (3)新型転換炉の開発
   (4)高速増殖炉の開発
   (5)先進的核燃料リサイクル
   (6)核燃料物質等の輸送
   (7)核燃料リサイクルをめぐる国際動向
   (参考)諸外国の動向
7.バックエンド対策
   (1)放射性廃棄物の処理処分対策
   (参考)諸外国における原子力バックエンド対策
   (2)原子力施設廃止措置対策
   (参考)諸外国における原子力施設廃止措置動向
8.原子力科学技術の多様な展開と基礎的な研究の強化
   (1)基礎研究・基盤技術開発
   (2)原子力利用分野の拡大に関する研究開発等の状況
   (3)放射線利用の現状と研究開発
   (4)核融合研究開発
9.原子力分野の国際協力
   (1)国際協力による研究開発の推進
   (2)近隣アジア諸国及び開発途上国との協力
   (3)旧ソ連諸国に対する核不拡散協力
10.原子力開発利用の推進基盤
   (1)人材の養成と確保
   (2)資金
   (3)研究開発推進体制と研究基盤の高度化
11.原子力産業の展開
   (1)原子力機器供給産業
   (2)核燃料サイクル事業
   (3)RI・放射線機器産業
   (4)今後の展開
 
第II部 資料編
 
1.原子力委員会,原子力安全委員会及び原子力関係行政組織
   (1)原子力委員会
   (2)原子力安全委員会
   (3)原子力関係行政組織
2.原子力委員会の決定等
   (1)原子力委員会決定等一覧
   (2)主な原子力委員会決定
   (3)主な原子力委員会委員長談話
   (4)原子炉等規制法に係る諮問・答申について
3.原子力関係予算
   (1)1995年度原子力関係予算総表
   (2)1995年度原子力関係予算重要事項別総表
4その他
   (1)我が国の原子力発電所の現状
   (2)我が国の原子力発電所の時間稼動率及び設備利用率(過去10年間)
   (3)各国のエネルギー計画
   (4)各国の原子力発電所の設備利用率(過去10年)
   (5)我が国における核燃料物質保有量一覧表
   (6)原子力開発利用年表
   (7)「地層処分における環境と倫理の基準(The Environmental and Ethical Basis of Geological Disposal)」についての集約意見の概要について