第2章 新長期計画策定の背景としての内外の原子力開発利用の現状
9.原子力分野の国際協力

(1)国際協力による研究開発の推進

 原子力分野においては,各国に共通する技術課題の解決が必要な分野や,多額の資金,研究者,技術者の結集が必要な分野が存在するため,国際協力で研究開発を進めることにより,国際的なコンセンサスを形成するとともに,経済面等において効率化を図ることが重要である。また,核燃料リサイクルについては,先進諸国の開発成果の有効利用の観点,社会的な理解促進の観点等から,この分野において長年にわたり研究開発を進め相当な技術蓄積を有する先進諸国と協調して進めることが重要である。
 具体的には,核融合研究開発については,1985年の米ソ首脳会議における共同声明を契機として,現在,国際熱核融合実験炉(ITER)の工学設計活動が日本,米国,EU及びロシアの4極により進められている。この活動に当たって,日本(茨城県那珂町),米国(サンディエゴ)及びEU(ガルヒンク)に設計のための共同中央チームのサイトが設置されている。
 また,核種分離・消滅処理技術に関しては,情報交換を行う国際協力計画が我が国の提案によりOECD/NEAにおいて実施されている。
 現在,同計画の第2フェーズとして,同技術に関するシステムスタディの実施について検討を進めている。
 このほか,二国間協力としては,核物質の管理に関する日本原子力研究所と米国エネルギー省(DOE)との協力,原子力発電安全情報交換に関する資源エネルギー庁とドイツ研究技術者との協力,高速増殖炉に関する動力炉・核燃料開発事業団と英国原子力公社やDOEとの協力,放射性廃棄物に関する日本原子力研究所とフランス原子力庁,カナダ原子力公社との協力等,積極的な国際協力を実施している。なお,高速増殖炉に関する動力炉・核燃料開発事業団とDOEとの協力については,米国側の共同研究を実施する施設である高速増殖実験炉(EBR-II)が米国議会の決定により運転停止となること等から段階的に停止していく一方,米国としては可能な限り日本との既存のコミットメントを果たす旨表明している。

 また,多国間協力としては,IAEAを通じて,ポーランドに対し,電子線利用による石炭火力発電所排ガス浄化に対する協力等を行っている。


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