第1章 新しい長期計画の策定
3.新長期計画に基づく当面の原子力政策の展開

(核燃料リサイクルの展開)

 核燃料リサイクルを展開していく上で当面する重要課題は,新長期計画において示された,青森県六ケ所村の再処理工場建設の円滑な推進,軽水炉でのMOX燃料利用計画や新型転換炉実証炉計画の進展,高速増殖炉開発においては1994年4月に臨界を達成した高速増殖原型炉「もんじゅ」の本格運転開始への取組,実証炉1号炉の2000年代初頭の着工に向けての所要の研究開発や準備,さらに核不拡散や放射性廃棄物による環境への負荷の軽減の観点から重要な意義を有するアクチニド・リサイクルの研究開発の具体化などである。
 これらの中でも軽水炉でのMOX燃料利用計画は今後の核燃料リサイクルの具体的な展開のうえでの端緒となる緊要なものである。これはまず海外で加工したMOX燃料を利用することから始まるが,軽水炉等の現在行われている原子力発電においても,原子炉の運転によって生成されたプルトニウムが核分裂することにより原子力発電から得られるエネルギーの約3分の1が担われていること,さらに新燃料の段階からプルトニウムが入った燃料の軽水炉における利用については,フランス等欧州諸国において1980年代から利用が本格化し,既に1,000体を越える実績があること等から技術的には特段の問題はないものと考えられ,政府,事業者ともそれぞれの役割に応じて,これが新長期計画に示された方向に沿って確実に展開されるよう最大限の努力を払っていかなければならない。
 さらにこれらの核燃料リサイクル計画を進める上では,透明性の向上の観点が特に重要であり,前述のとおり本書においてプルトニウムの管理状況を示しているが,今後とも引き続き定期的にこのような情報を明らかにし,余剰のプルトニウムを持たないという原則の厳守を内外に示すとともに,現在関係国間において精力的に進められているプルトニウム利用の透明性の向上のための国際枠組みの構築に積極的に取り組んでいくことが重要である。


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