第II部 各論
第3章 核燃料サイクル

(参考)諸外国の動向

(1)ウラン濃縮
① 米国
 米国のウラン濃縮工場は,米国エネルギー省(DOE)が所管し,現在,ガス拡散法による2工場がポーツマス,パデューカにおいて運転されている。米国2工場の濃縮規模は合計で19,300トンSWU/年となっている。
 なお,DOEは1985年6月に将来の濃縮技術の開発を原子レーザー法(AVLIS)一本に絞り,これにより早期の実用化を目指すとともに,当面は,ガス拡散工場の運用の合理化等で対処する旨の新政策を発表した。
 このAVLISの研究開発については,DOEのローレンス・リバモア国立研究所が中心となり実施してきたが,1992年12月8日,DOEは,AVLISによる濃縮の実証が成功裏に完了したことを発表した。
 また,1992年10月,米国のエネルギー政策の変更とその将来の方向を示す包括エネルギー法案が議会を通過し,1993年7月に濃縮公社が設立された。今後は,AVLISの開発,ガス拡散工場の運営にはこの公社が当たることになっている。
② フランス
 フランスではユーロディフ計画(フランス,イタリア,スペイン,ベルギー,イランの共同濃縮事業)に基づき,ガス拡散法による工場がトリカスタンにおいて運転されており,その濃縮規模は10,800トンSWU/年となっている。また,将来の濃縮技術として,原子レーザー法を中心とする研究開発が積極的に進められている。
③ 英国
 英国のウラン濃縮工場は,遠心分離法による工場がウレンコ計画(英国,ドイツ,オランダの共同濃縮事業)に基づき運転されており,1992年までに約1,000トンSWU/年に拡張された。
④ ドイツ
 ドイツは,現在,ウレンコ計画に基づき,グロナウにおいて遠心分離法による濃縮工場を1985年8月に運転開始し,1992年には約530トンSWU/年の濃縮規模となっている。
⑤ オランダ
 オランダは,ウレンコ計画に基づき,アルメロに遠心分離法による濃縮工場の建設・運転を行っており,1992年には濃縮規模は約1,050トンSWU/年となっている。

(2)再処理
① フランス
 フランスの再処理工場は,コジェマ社が所管し,マルクールとラ・アーグの2か所にある。マルクールでは,1958年以来UPlが運転中であり,1988年までに累計約3,500トンの使用済燃料を処理している。
 ラ・アーグでは,1966年から天然ウラン燃料(ガス炉燃料)800トンU/年の処理能力を有するUP2の運転が開始された。1976年には,これに処理能力400トンU/年の濃縮ウラン燃料(軽水炉燃料)用前処理施設HAOが付加され,以降,ガス炉燃料及び軽水炉燃料の両方の再処理が行われた。1987年にUP2の天然ウラン燃料用前処理施設が閉鎖され(累計再処理量5,300トン),それ以来,軽水炉燃料専用の再処理工場(UP2-400)として稼動し,現在に至っている。

 さらに,軽水炉燃料の処理能力を800トンU/年に増大させるため,1994年の運転開始を目指し,前処理施設等の建設が行われている。
(完成すれば,UP2-800として稼動。)また,外国からの委託再処理を行うためラ・アーグに建設中のUP3(処理能力:軽水炉燃料800トンU/年)は,1989年11月に前処理工程を除いた部分の運転を開始し,1990年8月に全面運転開始した。
 UP2-400及びUP3の工場の処理実績は,1991年12月末で,累計で約4,090トン(軽水炉燃料)である。
② 英国
 英国の再処理工場は,BNFLが所有し,セラフィールドに天然ウラン燃料を再処理するため処理規模1,500トンU/年の工場が運転中である。また,セラフィールドにおいて外国から委託再処理のため1993年の運転開始を目指し,THORP(処理能力:軽水炉燃料1,200トンU/年)の建設を進めている。(THORPの状況については56ページ参照)
③ 米国
 米国の再処理工場については,モーリスの工場が1974年に,ウェストバレーの工場が1976年に運転を断念し,またバーンウェルの工場が1983年に建設計画を断念した。
④ ドイツ
 ドイツでは,原子力発電所から発生する使用済燃料の再処理を実施するため,主要電力会社12社によりドイツ核燃料再処理会社(DWK)が設立された。
 DWKは,カールスルーエにおいて1971年以来運転していた再処理用実験プラントWAK(処理能力:軽水炉燃料35トンU/年)の運転経験を基に,バイエルン州バッカースドルフにおいて,商業用再処理工場WAW(処理能力:軽水炉燃料350~500トンU/年)の建設を進めていたが,再処理はフランス等との協力で行う方針の下,1989年6月,WAWの建設計画の放棄を決めた。
 なお,WAKについては,WAW建設計画の放棄に伴い,1990年12月に運転を終了した。

(3)高速炉燃料再処理
 高速炉燃料再処理の開発については,おおむね高速炉の開発と並行して進められているが,フランス,英国ではパイロット規模の施設が,ドイツ,日本では実験室規模の施設が既に運転中である。
① フランス
 ラ・アーグのATlプラントが1969年から1979年まで運転された。
 マルクールでは,APM(TOP)(10~20キログラム/日)が1974年から1983年まで運転され,その後APM(TOR)(50キログラム/日〔5トン/年〕)への改造・増設が行われ,1988年1月から運転が開始された。その後の施設としてMAR600(50~60トン/年)と呼ばれる新施設が計画されでいる。
② 英国
 ドーンレイにおいて既に30キログラム/日(7トン/年)のPFRプラントが1980年より運転中で,60~80トン/年の実証再処理施設EDRPが計画中である。
③ ドイツ
 カールスルーエにおいて,1キログラム/日の実験施設MILLIが1971年より運転中である。


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