第3章 我が国における原子力開発利用の展開
3.科学技術の進展への貢献

(2)基礎研究の充実及び基盤技術の開発

 原子力の基礎研究は,原子力開発利用の基礎を形成するとともに,将来の新しい原子力技術の萌芽を生み出すものとして,重要な役割を果たすものである。
 我が国では,大学,国立試験研究機関等を中心に,炉物理・核物理に関する研究,放射線に関する生理学研究,燃料・材料の照射試験,放射性物質の環境中及び生態系中の移動等に関する研究等,広汎な分野について着実な研究が行われている。基礎研究は,研究者の自由な発想のもとに進められることにより,画期的な成果を期待し得るものであり,今後とも,より一層の充実を図っていくこととしている。
 一方,21世紀に必要とされる原子力技術体系の構築を目指し,創造的・革新的な技術を創出しようとする原子力基盤技術の開発が,1988年度から積極的に進められている。重点的に推進すべき基盤技術領域としては,当面,高性能化を狙った全く新しいタイプの材料創製技術等を開発する原子力用材料技術,原子力施設の自律化を目指す原子力用人工知能技術,レーザーの持つ特質を広く原子力分野へ活かす原子力用レーザー技術,ライフサイエンス分野の知見に基づき放射線のリスク評価技術等を開発する放射線リスク評価・低減化技術の四テーマが取り上げられている。
 これらの研究開発は,日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団,理化学研究所を始め,多くの国立試験研究機関で進められている。
 1989年度は,上記の研究開発を引き続き促進するとともに,個々の研究機関単独では十分な成果が望めない複雑多岐にわたる研究課題を各技術領域につき一課題ずつ取り上げ,同一の課題の下に多機関間の有機的連携によって総合的推進を図る「原子力基盤技術総合的研究」(原子力基盤クロスオーバー研究)の制度を発足させ,基盤技術開発をより一層効率的かつ積極的に推進している。


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