第5章 核融合,原子力船及び高温工学試験研究
1.核融合

(2)国際協力

 現在,我が国が進めている国際協力としては,日米等の二国間協力と国際原子力機関(IAEA)及び経済協力開発機構国際エネルギー機関(OECD/IEA)における多国間協力がある。
 日米協力については,昭和54年5月に締結された日米エネルギー等研究開発協力協定において核融合が協力の重点分野のひとつとされ,ダブレット-III(非円形トカマク試験装置)を用いた共同研究,情報交換及び研究者の相互派遣等を行う交流計画,プラズマ物理の共同研究並びにダブレット-IIIに続く新しい共同研究を行う共同計画の4分野について協力が行われている。
 なお,ダブレット-III研究協力計画については,昭和54年8月に政府間で結ばれた協力取決めに引き続き,日本原子力研究所と米国エネルギー省の間で取り決めが行われているが,昭和58年7月に同取り決めの改定を行い,現在のダブレット-III装置の真空容器を改造し,大型非円形プラズマに関する共同研究を実施するため協定期間を4年間延長した。この間に前述のように平均ベータ値6%という世界記録をつくるなど大きな成果をあげた。この装置をさらに活用して,ビームによる電流駆動,電子サイクロトロン波(ECH)加熱の研究を行うため,63年5月に2回目の協定延長を行い,協力期間を67年8月までとした。

 また,日・EC間ではこれまでの実施研究機関間ベースで研究者の人員交流を進めてきたが,63年末には政府間レベルの日・EC核融合協力協定が署名される予定であり,原研―カダラッシュ研(仏)との加熱装置に関する共同実験等,本格的研究協力が開始される予定である。
 IAEAにおける協力については,プラズマ物理及び制御核融合研究国際会議,大型トカマク会合,原子分子データ情報交換に関する協力に積極的に参加している。
 なお,国際トカマク炉(INTOR)の共同検討(議長,森原研副理事長)は,約10年に恒る活動を昭和63年3月に終了した。
 また,新たに昭和60年の米ソ首脳会議において,提案された国際熱核融合実験炉(ITER)概念設計に関する共同活動が,IAEAの下で日米,EC,ソにより,昭和63年4月より開始された。
 本共同活動は,毎年約5ケ年間,各国より約10名ずつの設計者が西独のマックス・プランク・プラズマ物理研究所に結集し,ITER運営委員会(議長・苫米地原研特別研究員)による設計とりまとめとITER科学技術諮問委員会の科学技術的助言及びITER評議会の全体の統括により,昭和65年12月まで実施される予定である。なお,設計活動はそれぞれ自国における30名の設計チーム,及び1000万ドル規模/年の研究開発により支援される。
 昭和63年7月に必要な研究開発項目が決められ,63年11月までにITERの装置の基本仕様が決定され(定義段階),その後,設計作業が行われる(設計段階)予定である。
 さらに,OECD/IEAにおける協力については,三大トカマク装置協力,超電導磁石計画,プラズマ壁面相互作用計画及び核融合材料照射損傷研究開発計画の協力に積極的に参加している。


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