第3章 主体的・能動的な国際対応の推進―国際社会への貢献
1.国際対応の新たな動向

(2)多国間対応

(i)近隣地域対応
 〔これまでの状況〕
 我が国と地理的・経済的に密接な関係にある近隣アジア地域との協力については,国際機関を通じたものとして,我が国は,IAEAの「原子力科学技術に関する研究,開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)」に昭和53年8月に加盟して以来,放射線・RI利用の分野で協力を行っている。なお,同協定は,本年6月,共同研究等の推進,調整をより効果的に行う枠組みを盛り込んだ新協定に切り換えられた。また,環太平洋地域の原子力交流の促進を目的として,米国原子力学会が提唱した環太平洋原子力会議が,昭和51年以降,ほぼ2年ごとに行われている。本年9月には,第6回会議が北京で開かれた。

 研究交流制度:国の主導の下に日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団及び国立試験研究機関が連携して昭和60年度より実施
1.招へい対象者:開発途上国の原子力研究機関等の上級研究者
2.招へい期間:3〜6カ月
3.派遣目的:開発途上国の研究体制の確立に対する指導,研究方法の指導,現地データの取得,研究推進に係るコンサルタント
4.派遣期間:1カ月

 〔今後の方針〕
 近隣アジア地域は,その科学技術水準の向上等に伴い,放射線利用,研究炉の利用,原子力発電の導入,安全確保対策等の面で多くの共通課題を有するようになってきた。
 今後は,我が国としては,地域としてのコンセンサスを得つつ,上記共通課題に関する地域協力を積極的に進めることにより,本地域全体の原子力技術レベルの向上を図り,本地域の経済・福祉の向上に資することを目指すものとする。
(ii)国際機関対応
 〔これまでの状況〕
 IAEAは,原子力平和利用の確保,開発途上国の原子力開発を促進することを中心に活動を行ってきているが,最近,安全分野での協力が求められてきている。我が国は,昭和32年にIAEAが発足して以来,積極的にIAEAの活動に参加してきた。
 特に事故時の協力については,昨年のチェルノブイル事故後,IAE Aが中心となって取りまとめた「原子力事故の早期通報に関する条約」並びに「原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する条約」がそれぞれ昭和61年10月及び昭和62年2月に発効した。我が国も本年7月,同2条約に参加している。
 分担金の面では,昭和62年においてIAEA分担金,任意拠出金に対する日本の分担率は約11%を占めており,アメリカの25%に次いで第2位を占めている。
 職員等の派遣の面では,昭和62年におけるIAEA専門職員の国別占有率を見ると,日本は約3.2%を占め,米国,ソ連,西独,フランス,英国,イタリアに次ぎ第7位を占めている。
 また,従来,RCA等に対して行っている特別拠出に加え,我が国は青森県六ケ所村における民間再処理工場の建設計画を円滑に促進するため,同工場に適用される保障措置の方法の検討のため,昭和61年度から,特別拠出を行っている。
 OECD/NEAは原子力先進諸国を中心として原子力開発を推進する上で解決すべき核燃料サイクルの確立,放射性廃棄物の処理処分,再処理施設の安全性等原子力先進国共通の問題に取り組んできている。我が国は,従来から専門家派遣,各種共同研究プロジェクトへの参加等を通じて積極的な協力を行ってきている。
 〔今後の方針〕
 我が国は,IAEA, OECD/NEA等の活動に対し,引き続き,積極的に参加する。その際,それぞれの特性が最大限に発揮されるよう努める。また,これらの国際機関の活動を通じて,我が国の原子力活動に対する国際的理解の増進に努める。
 このため,以下のことを行っていくこととする。
・国際会議への積極的参加
・国際機関職員の派遣
・我が国に関連の深い重要テーマに関する応分の拠出


目次へ          第3章 第1節(3)へ