第2章 原子力研究開発の新たな方向 ―創造的科学技術の育成
2.基礎研究及び基盤技術の開発

(1)基礎研究

 原子力の基礎研究は,原子力開発利用の基礎を形成するとともに,新しいニーズの探索において重要な役割を果たすものである。このため,原子力分野における基礎研究の充実を図っていくことが重要である。
 〔これまでの状況〕
 物理・化学分野では,炉物理・核物理に関する研究,放射線にょる化学反応に関する研究等が行われている。
 生物・医学分野では,放射線の生体影響に関する研究,トレーサーを利用した生体内の生理学的研究,放射線障害のメカニズムに関する研究,放射線を利用したがん治療に関する研究等が行われている。
 燃料・材料その他の工学的分野では,燃料・材料の照射試験,放射線による材料の構造解析研究,伝熱・流動に関する研究等が行われている。
 環境の分野では,放射性物質の大気中,水系中,地中の拡散・移行に関する研究及び生態系中の移行,蓄積,循環に関する研究等が行われている。
 これらの基礎研究は日本原子力研究所,大学等において進められている。このほか,医学・生物学,環境の分野では放射線医学総合研究所が,物理・化学分野では理化学研究所が,また,材料分野では金属材料技術研究所及び無機材質研究所が中心となって,研究を進めている。
 〔今後の計画〕
 基礎研究は,研究者の自由な発想を重視することにより,画期的な成果を期待し得るものである。新しい長期計画においては,このような基礎研究の原点に立つて,改めて,研究開発組織の独自性を重視しつつ,研究資金の充実や,研究の進捗状況に応じた適切な評価を踏まえた研究資金の弾力的運用を通じて,基礎研究の振興を図ることとしている。


目次へ          第2章 第2節(2)へ