第2章 原子力研究開発の新たな方向 ―創造的科学技術の育成
1.原子力研究開発の今後の方向

(1)高度化するニーズへの対応

 原子力開発利用の進展に伴い,原子力技術に対するニーズが高度化しており,次の諸点が挙げられる。
①軽水炉主流時代が,従来考えられていたより長期化する見通しに対応して,軽水炉の安全性・信頼性・経済性の一層の向上を図ることが必要である。また,軽水炉技術と調和のとれた核燃料サイクル技術を確立し,軽水炉利用を体系的に整備していくことが必要である。
②高速増殖炉を実用化するためには,安全性,経済性を含め,軽水炉よりも優れた技術を確立することが要件であり,そのためには,技術的ブレークスルーを追求していくことが重要である。
③核融合の研究開発については,臨界プラズマ試験装置(JT-60)により臨界プラズマ条件に関する目標領域に到達した。今後は,プラズマの自己点火及び長時間燃焼など次段階の目標を目指していく段階である。
④放射線利用については,近年,材料,ライフサイエンス等の先端技術の進展と放射線利用分野における加速器技術等の進歩が相まつて新しいビーム発生,利用技術やトレーサー技術に対する期待が高まってきている。
 今後は,このようなニーズの高度化に対応して,原子力研究開発を進めていくことが求められている。


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