第1章 原子力発電の定着と今後の展開 ―基軸エネルギーとしての確立
5.プルトニウム利用への展開

(1)軽水炉によるプルトニウム利用及び新型転換炉

 〔軽水炉によるプルトニウム利用〕
 軽水炉によるプルトニウム利用(プルサーマル)は米国,西独,ベルギー,スイス等諸外国での実績もあり基本的には技術的見通しが得られている。我が国においては,原子力発電所におけるウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の少数体実証計画として,日本原子力発電(株)が敦賀1号機(BWR)に昭和61年5月から6月にかけてMOX燃料体2体を装荷したほか,関西電力(株)が,地元の理解を得て美浜1号機(P WR)にMOX燃料体4体を装荷することとしている。今後の計画としては,1990年代前半を目途とした実用規模実証計画(最終装荷規模1/4炉心程度)を2経て1990年代後半の本格利用(最終装荷規模1/3炉心程度)に移行することとしている。


(注) ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料:プルトニウムを利用する場合の燃料の一つの形態であって,二酸化ウランと二酸化プルトニウムを混合したもの。我が国では,プルサーマル,新型転換炉,高速増殖炉の燃料として,これを利用することとしている。

 〔新型転換炉〕
 新型転換炉(ATR)は,プルトニウム,回収ウラン及び劣化ウランの利用において優れた特質を有する重水炉であり,さらに全炉心MOX燃料の装荷が可能である等核燃料利用上の柔軟性が大きい。また,我が国独自の技術として確立していくための技術的基盤は整っていること等にかんがみ,実用化を目指して,経済性の向上を図りつつ,さらにその開発を進め,これを通じて重水炉技術の高度化を図ることとしている。
 これまで新型転換炉の開発は,動力炉・核燃料開発事業団において進められてきており,現在,原型炉「ふげん」(電気出力16万5千キロワット)が順調に運転されている。
 実証炉「大間原子力発電所」(電気出力60万6千キロワット)については,昭和61年8月のATR実証炉建設推進委員会(電源開発(株),動力炉・核燃料開発事業団,電気事業連合会,科学技術庁,通商産業省で構成)における実証炉建設計画の了承に基づき,建設・運転の実施主体である電源開発(株)は,1990年代半ば頃の運転開始を目指して建設準備を進めている。


目次へ          第1章 第5節(2)へ