第1章 原子力発電の定着と今後の展開 ―基軸エネルギーとしての確立
5.プルトニウム利用への展開

(2)高速増殖炉

 〔これまでの状況〕
 高速増殖炉については,これまで動力炉・核燃料開発事業団が中心となって実用化を目指した研究開発を行ってきている。
 昭和52年の初臨界以来,順調な運転を続けている実験炉「常陽」の経験及び蓄積された技術データを踏まえ,現在,原型炉「もんじゅ」(電気出力28万キロワット)の建設工事が民間の協力を得て1992年度の臨界を目指して順調に進められている。
 また,関連する研究開発については,動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターを中心として原型炉「もんじゅ」及び大型化等に関する研究開発が実施されている。一方,民間においても所要の研究開発が行われている。

 〔今後の計画〕
 「もんじゅ」後の実証炉の開発は官民の協力の下に進めることとなっており,同炉の設計・建設・運転には,電気事業者が主体的役割を果たし,1990年代後半に着工することを目標に計画を進めることになっている。これを受けて電気事業者は,実証炉1号の建設・運転主体を日本原子力発電(株)として,同社を中心に実証炉関係の研究開発,実証炉の基本仕様の選定等を行うこととしている。
 それに当たっては,高速増殖炉の実用化までの長期的な展望に立った我が国全体としての総合的な研究開発計画に沿って,電気事業者,動力炉・核燃料開発事業団,メーカー,その他関係する研究開発機関がそれぞれの役割に即し,整合性をとりつつ進めていくことが重要である。このため,昭和61年5月,それまでの高速増殖炉開発懇談会を発展的に解消して,原子力委員会に設置した高速増殖炉開発計画専門部会において,研究開発の推進方策,実証炉の基本仕様等の評価検討等について,現在調査審議を進めている。
 また,昭和61年7月,動力炉・核燃料開発事業団,日本原子力発電(株),日本原子力研究所及び(財)電力中央研究所の四者は協議・調整機関として高速増殖炉研究開発運営委員会を発足させ,実証炉以降の研究開発の効率的な分担方策等について話し合いを進めている。
 〔国際協力〕
 高速増殖炉の研究開発においては,動力炉・核燃料開発事業団を中心として米国及び欧州諸国等と協力が進められているほか,(財)電力中央研究所や日本原子力発電(株)も研究協力を行ってきている。
 高速増殖炉の開発には長期にわたって,リスクの高い投資が必要とされること,米国及び欧州諸国においても長年の研究開発の蓄積がなされている等から,国際的に協調して研究開発を進める意義も大きい。このため,今後とも国内における自主開発との整合性を図りつつ,国際協力を積極的に進めることとしている。


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