第3章 安全の確保,安全の実証及び環境保全
1.ソ連チェルノブイル原子力発電所事故と我が国の対応

(2)我が国の対応

 事故発生後,我が国においては,放射能対策本部(昭和36年に閣議決定により内閣に設置,本部長科学技術庁長官)の下で,環境放射能調査等の万全な放射能対策が講じられた。具体的には4月30日放射能対策本部幹事会において,32都道府県及び気象庁における空間線量率,雨水,浮遊じんの測定,防衛庁による高空浮遊じんの測定など,放射能監視体制を強化した。5月3日夕方頃まで,事故に関連すると思われる影響は認められなかったが,夕方以降,東京都,神奈川及び千葉県で,その日採取した地表浮遊じん,雨水から今回の事故に由来すると見られる放射性物質(ヨウ素131)が初めて検出されたため,5月4日,放射能対策本部を開催し,核種分析の強化など放射能監視体制を一層強化するとともに,雨水を直接摂取する場合はろ過して使用することが望ましいこと,葉菜類についても念のため洗浄することが望ましいことなどの「注意事項」を決定し,発表した。
 その後,事故に由来すると思われる放射性物質は全国的に検出されたが,国民の健康上問題となるものではなかったこと,放射能レベルは5月半ば以降全般的に漸減傾向を示し,その後十分低い状態になったこと等を踏まえ,放射能対策本部は,6月6日,前述の「注意事項」を解除するとともに,放射能監視体制を平常時の体制に移行することを決定した。
 一方,原子力安全委員会は,4月30日,「チェルノブイル原子力発電所の炉型は,ソ連独自で開発した黒鉛減速軽水冷却型炉で,我が国に設置されている原子炉とは構造などが異なるが,関連情報の入手に努め,原子力開発利用に関する安全の確保,我が国の原子力安全規制に反映すべき事項の有無などについて検討を進めるため,事故調査特別委員会を設置する。」などを内容とする委員長談話を発表した。5月13日に「ソ連原子力発電所事故調査特別委員会」が設置され,調査検討の後,9月9日にはソ連原子力発電所事故調査報告書(第1次)が取りまとめられた。


目次へ          第3章 第2節(1)へ