第1章 平和利用と国際関係

(6)ロンドンガイドライン

 昭和49年のインドの核実験を契機に前述の輸出国個別の規制強化のみならず,より有効な輸出規制のための国際的な基準を必要とするとの認識が強まった。
 このため米国の呼掛けにより原子力資材及び技術の輸出政策に関し意見交換を行うために,昭和50年6月から主要原子力供給国がロンドンで事務レベルの協議を行うこととなった(いわゆるロンドン会議)。その際,我が国としては,平和利用確保のための国際協力の重要性を認識し,できる限りこれに協力する方針の下に同協議に臨んだ。
 ロンドン協議の結果我が国及びNPT非加盟のフランスを含む15ヶ国は,昭和53年1月,原子力資材,技術等の輸出について標準的輸出規制措置,いわゆるロンドンガイドラインに沿って行うと決定したことを公表した。ロンドンガイドラインは法的拘束力を有するものではなく,各国が自主的にこれに沿い行動するとの意志を共同で明らかにする,紳士協定の形式がとられた。ロンドンガイドラインは,非核兵器国へ輸出する核物質,原子力設備及び核拡散上機微な技術輸出に対し①核爆発の禁止,②核物質防護措置(脚注)の実施,③IAEA保障措置の実施,④第3国移転の規制等の条件を定めており,機微技術を規制の対象に加えたこと,核物質防護を必要条件とし,再移転に関する条件を定める等,NPTの規制よりも,厳しくかつ詳細なものとなっている。
 我が国から外国への原子力関係資材の輸出は,原子力産業の育成,発展の見地から重要と考えられるが,一方では核不拡散土の配慮も必要とされる。我が国は,すでに昭和37年4月原子力委員会において「我が国が外国の原子力利用に関係する場合にも原子力基本法の精神を貫くべきである」との決定を行っており,輸出に際しても,この方針で臨むこととしている。


(脚注)
核物質防護:非合法組織等による核物質の盗取,原子力施設又は核物質の輸送に対する妨害,破壊行為等に対する防護をいう。


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