第6章 核融合及び原子力船の研究開発
1 核融合

(1)研究開発

i 炉心技術
 近年,核融合プラズマの閉込め,制御等に係る炉心技術のうち,トカマク型核融合の炉心技術に関する研究の進展には著しいものがあり,日本原子力研究所のJFT-2及びJFT-2aトカマク装置によるダイバータ効果の実証,中性粒子入射加熱による高ベータプラズマの実現,低安定係数放電の実現,高周波によるプラズマ電流の励起維持の実証などの成果,さらに,日米協力により,米国のダブレット―III装置を用いた4.6%の高ベータ値の達成等好結果が得られている。
 トカマク方式の核融合の当面の主目標は,臨界プラズマ条件の達成であり,現在,日本原子力研究所において,臨界プラズマ条件の達成を主目標とするJT-60の建設が昭和59年度の完成を目途に進められている。JT-60は,プラズマ比例則の確認の他,不純物制御,長時間パルス運転の実現等を目標としている。
 一方,トカマク方式以外の磁場閉込め方式についても,トーラス系及びオープン系の核融合装置により新しい展開が見られている。例えば,京都大学のヘリオトロンE装置による無電流プラズマの安定な閉込めや筑波大学のタンデムミラーによる静電ポテンシャルの形成,電子技術総合研究所のピンチ装置による高ベータプラズマの実現等は,今までの研究推進において特記される成果である。
 さらに,慣性核融合については,1KJレーザーを用いた基礎実験を終了し,次段階の爆縮実験を目指して10KJクラスのレーザーの建設が進められている。また,荷電粒子ビームを用いた慣性核融合についても,基礎的研究が進められている。

ii 炉工学技術
 超電導磁石に関しては,トロイダルコイルの試験に用いるクラスター試験装置による試験と並行して,国際協力による大型コイル試験用のコイルを他国に先がけて完成するなど,世界に伍して開発を進めている。プラズマ加熱技術については,世界的水準にあり,JT-60用の10秒間という長時間パルスの中性粒子入射加熱技術を確立し,高周波加熱技術についても著しい成果を挙げている。炉構造材料については,材料の開発研究は世界的水準にあるものの,照射下における研究は立遅れている。トリチウムについては,我が国には技術蓄積が少ないので,組織的な研究を進めているところである。炉設計技術については,我が国の水準は高く,国際原子力機関(IAEA)で行われた国際トカマク炉(INTOR)の共同設計に当たってワークショップの主導的役割を果たしている。その他,大型構造物の製作技術,電源技術,計測制御技術などについては,従来の核分裂炉技術,重電技術の蓄積に加え,JT-60の建設に当たっての開発研究の成果が付加されつつあるが,なお遠隔保守技術,ブランケット総合技術など今後開発すべき課題も多い。


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