第4章 新型炉の開発
(参考)諸外国の動向

(3)多目的高温ガス炉

 現在,西ドイツ及び米国が高温ガス炉の開発に積極的に取り組んでいる。
 西ドイツは,実験炉「AVR」の経験を踏まえて,高温ガス炉による核熱のプロセス利用と発電を目標として,研究開発を進めている。核熱のプロセス利用については,西ドイツで大量に採掘される石炭と褐炭のガス化を図るため,原型炉「PNP-500」の建設を中心とするPNP計画を立てているが,国内事情から研究計画は遅れ気味である。また,発電については,蒸気タービン発電用原型炉「THTR-300」の建設が昭和59年頃の完成を目途に進められているが,建設資金の確保について問題が生じている。
 これらの計画を推進するための体制としては,原子炉系については,炉設計,計画,建設のためのコンソーシアムが,昭和53年に設立され,利用系については,ガスタービン発電と核熱利用のためのコンソーシアムが,それぞれ設立されている。これらに関する研究開発は,ユーリッヒ原子力研究所が中心となって進めてきたが,これにメーカーも加わった組織が設立されようとしている。
 また西ドイツは,国際協力も積極的に行い,研究技術省(BMFT)が米国エネルギー省(DOE)とガス冷却炉全般にわたる協力協定(通称Umbrella Agreement)を昭和52年2月に締結した。更に,我が国との協力についても,積極的な姿勢を示している。
 米国では,当初GA社が中心となり,蒸気タービン発電用高温ガス炉の開発を進め,実験炉「ピーチ・ボトム炉」,「フォートセントブレイン炉」の建設を行ってきたが,最近,米国の高温ガス炉開発戦略では,当面の目標を蒸気サイクル発電炉の実用化に絞り,そこで開発された技術を非電力利用にも生かしていく戦略をとっている。
 昭和53年2月には,電力会社,メーカーなどが参加して「ガス冷却炉協会(GCRA)」が設立され,また,昭和54年3月,USスチール等の製鉄会社,ガス会社等が中心となって,高温ガス炉の核熱利用系の開発に関する「ユーザーズ・グループ」が結成され,大型炉の建設計画の検討に着手した。


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