第1章 原子力開発利用の動向と新長期計画
1 着実に進展する原子力発電

(1)原子力発電開発の状況

 我が国の原子力発電は,昭和57年3月四国電力(株)伊方発電所2号機が,同年4月には東京電力(株)福島第二原子力発電所1号機が,それぞれ新たに運転を開始したことにより,現在,運転中の商業用原子力発電設備は24基,総電気出力1,717万7千キロワットとなり,昭和57年6月末における総発電設備容量の12.5%を占めるに至った。
 電気事業者による発電実績では,昭和56年度における原子力発電による発電電力量は872億キロワット時で,総発電電力量の16.7%を占め,初めて水力発電による発電電力量を凌ぐものとなった。これは,原子力発電所の運転が順調に行われた結果であり,昭和56年度の設備利用率は前年度に引き続き60%を越え61.7%に達し,さらに,昭和57年度上半期には73.6%(前年度同期65.9%)という高い設備利用率を記録した。
 我が国の場合,原子力発電所の定期検査を平均3〜4ヶ月にわたって慎重に実施しているため,年平均の設備利用率は最大でも70%前後になることからみると,昭和55年度,昭和56年度は極めて良好な成績を示したといえる。
 その理由は,昭和40年代後半に発生した応力腐食割れ,蒸気発生器細管損傷などの初期故障に係る原因究明がなされ,所要の改善が大方終了し,このため補修工事を含む定期検査の期間が短縮されたこと,また,海外の事故・故障例などを教訓として予防対策が実施されてきておりその効果が発揮されたこと,さらに品質管理技術の向上の努力の効果が見られてきていることなどが考えられる。
 また,建設中のものは,昭和57年3月に日本原子力発電(株)敦賀発電所2号機,同年6月には中部電力(株)浜岡原子力発電所3号機の工事計画が認可されたことにより,合計11基,総電気出力1,070万4千キロワットとなっている。

 さらに,電源開発基本計画に組み込れまている建設準備中のものは,昭和56年11月に東北電力(株)巻原子力発電所1号機,昭和57年3月に北海道電力(株)泊発電所1号機・2号機,昭和57年9日には九州電力(株)玄海原子力発電所3号機・4号機の計画が加わったことにより,合計8基,総電気出力736万3千キロットとなっている。
 以上,運転中,建設中及び建設準備中のものの合計は,43基,総電気出力3,524万4千キロワットとなっている。
 なお,昭和56年4月以降の主要各国の原子力発電開発の状況としては,運転中の原子力発電設備容量で第1位の米国が,新たに4基(442万キロワット)運転開始し,昭和57年6月末現在,総計77基,6,090万キロワットとなり,第2位のフランスが新たに7基(670万キロワット)運転開始し,総計30基,2,302万キロワットとなった。第3位は日本で,前述したとおりの状況である。また,ユーゴスラビアが66万キロワットの原子力発電所を運転開始し,新たに原子力発電国の仲間入りをする等,原子力発電国は23ヶ国となり,その総発電設備容量は1億6,835万キロワットとなった。


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