第1章 原子力開発利用の動向と新長期計画
1 着実に進展する原子力発電

(2)新たな原子力発電開発目標

 我が国の将来の原子力発電規模については,昭和57年4月23日の閣議において決定された「石油代替エネルギーの供給目標」の中で,昭和65年度において原油換算6,700万キロリットルを目標とすることが定められ,この目標を達成するための発電設備容量は4,600万キロワット(総発電設備容量の22.0%),年間発電電力量は2,550億キロワット時(総発電電力量の30.1%)としている。
 これは,エネルギー需要の見通しが以前とくらべ相当下方修正される事態の中にあっても,原子力発電が,自主的な核燃料サイクルの確立とあいまって供給安定性のある準国産エネルギーとして位置づけられるとともに,経済性・大量供給性等数多くの優れた特性を有しており,このため,電力供給の中核的役割を担うものとして,今後ともその開発を最大限に推進すべきものという考え方の下に,最近の立地状況及びリード・タイムを勘案しつつ,定められたものであり,前回の供給目標(昭和55年11月閣議決定)の原子力発電設備容量5,100万キロワット〜5,300万キロワットに比べ1割程低い数字となっているが,1次エネルギー供給に占める原子力の割合は,10.9%から11.3%へ増加した計画となっている。
 原子力開発には長期間のリード・タイムを要し,我が国の原子力開発利用を計画的に進めるには,より長期的な原子力発電規模の見通しが必要である。我が国の電力需要は,経済成長率の低下を反映して伸びが鈍化する傾向にあるものの,今後とも国民生活の向上等に伴って着実に増大する見込みであり,昭和75年(西暦2000年)には,国内エネルギー最終需要の約4割,1兆1千億キロワット時程度に達するものと想定されている。この電力需要想定の下に,長期にわたる電力供給の安定確保を図り,また一次エネルギー価格の実質的上昇による影響を緩和しうるような電力供給基盤を確立するために,原子力発電をその中核として着実に増加させることが期待されており,これにより,昭和75年度において,原子力発電は総発電設備容量の3割程度,約9,000万キロワットとなり,また,年間発電電力量は5,200億キロワット時(総発電電力量の約43%)と想定されている。
 主要国の原子力発電計画のうち,米国の第3次国家エネルギー計画(昭和56年7月),フランス国民議会決定(昭和56年10月),西独のエネルギー計画第3次改訂(昭和56年11月)などが,新たに示されたものであり,総じて,経済成長率の低下傾向の中でエネルギー需要の伸びの鈍化を反映したものとなっているが,原子力発電が石油代替エネルギーの中で重要な位置を占めることに変化はない。この中で,フランスは,エネルギー需要のうち電力の占める割合を極力増大させる政策をとり,その電力を経済性の高い原子力発電で賄う計画を推し進めており,昭和65年(1990年)において,電力の約7割を原子力発電により賄う計画である。昭和65年(1990年)における計画を比較すると総発電電力量に占める原子力発電の割合では,フランスに次ぐのは西独(32%),次いで日本(30%),英国(24%),米国(22%)となっており,他の先進諸国と異なり国内エネルギー資源に乏しい我が国の目標が,我が国と同様資源に恵まれずエネルギーの自立を目指すフランスのそれに比べてかなり低い数字となっている。


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