第2章 原子力開発利用の進展状況
6 核融合の研究開発

 核融合は,その主体となる燃料を海水から取得することができ,これが実用化された暁には豊富なエネルギー供給を可能とするものである。このため,21世紀前半における実用化をめざし,我が国の他,米国,EC,ソ連等が研究開発を積極的に推進している。
 我が国の研究開発は,昭和30年代のプラズマ物理の基礎研究から出発し,日本原子力研究所,大学及び国立試験研究機関における20余年の研究開発の歴史を経て,今日世界的水準に達している。
 日本原子力研究所においては,昭和50年7月に原子力委員会が策定した「第二段階核融合研究開発基本計画」に沿って,臨界プラズマ条件の達成を目指した研究開発が進められている。この研究開発の中核的装置としてトカマク型臨界プラズマ試験装置(JT-60)が昭和59年度の完成を目途に現在建設が進められており,JT-60による研究開発の成功によって核融合が科学的探究の段階から工学的進展を図る段階に移行するものと強く期待されている。

 また,電子技術総合研究所及び理化学研究所においては高ベータ装置に関する研究及び計測・真空技術に関する研究が進められている。
 大学関係では,名古屋大学プラズマ研究所において核反応プラズマ生成のための準備研究を開始しており,京都大学,大阪大学,筑波大学等において各種方式によりプラズマの閉じ込め及び加熱に関する研究並びに関連分野の研究を幅広く行っている。
 最近,我が国のJFT-2(日本原子力研究所),米国のPLT(プリンストン大学プラズマ物理研究所),ダブレット-III(ジェネラル・アトミック社)などの既存の装置を用いた実験によって,炉心技術に関する成果が相次いで得られており,これらの成果からみて,JT-60において臨界プラズマ条件が達成されることは確実視されるようになっている。
 このような核融合の研究開発の進展を踏まえ,原子力委員会に設置された核融合会議は臨界プラズマ条件達成後の研究開発の進め方について審議検討を行い,昭和56年9月原子力委員会に報告書を提出した。同報告書において,同会議は,JT-60の次の段階の目標は,核融合が炉として実現し得ることを示す自己点火条件の実現であり,そのために必要な炉心技術及び炉工学技術の開発を推進すべきであるとしている。
 核融合は,人類の未来を担う有力なエネルギー源として,その実現が強く期待されているものであるが,その研究開発には多額の資金,多くの人材及び長年月を要するものであり,今後とも政府関係機関のみならず大学,産業界をも含めた緊密な協力体制の下に,さらに国際的な協力をも推進しつつ,自主技術の確立を目指して,総合的かつ効果的に研究開発を進めていかなければならない。


目次へ          第2章 第7節へ